ジャンル 文学の心

オンデマンド

【オンデマンド】ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』を読む(第13〜15挿話)

  • 春講座

小林 広直(明治大学准教授)

コード 910102
定員 20名
単位数
会員価格 受講料 ¥ 11,880
ビジター価格 受講料 ¥ 11,880

目標

・ジェイムズ・ジョイスおよび『ユリシーズ』(1922)の第13〜第15挿話の読みどころを概観する
・難解と名高い『ユリシーズ』ではあるが、21世紀を生きる私たちの「生」に連なり、重なり合っていることを確認する
・翻訳を用いても海外文学を「味読」することができることを体験する(もちろん英語原文で読める方も大歓迎です)

講義概要

20世紀で最も優れた小説(の1つ)と称される、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』は、2022年2月2日に出版100周年を迎えました。独力ではなかかな読み通すことの難しい本作品を、ぜひ一度紐解いてみましょう。英語で書かれたこの小説がなぜ「アイルランド文学」を代表する作品と言えるのか、そして、超絶的に(?)難解であると名高いこの作品を今読むことの意義は何か――以上2点の問いを念頭に置きながら、本講座では『ユリシーズ』第13〜第15挿話を6回にわたり(適宜原文を参照しながら)その読みどころを解説いたします。
※講義では基本的に日本語訳を用いますので、英語が苦手な方でもご参加いただけます。

各回の講義予定

講座内容
1 第1〜12挿話の復習&第13挿話 ナウシカア(前半) 講座の冒頭で、第1〜12挿話がどのような話だったかを簡単に振り返ります。第13挿話は、サンディマウント海岸の午後8時、「夏の夕暮れ」の神秘的な描写から始まります。この挿話の前半部は、この海岸に友人たちとやって来た少女(乙女)、ガーティ・マクダウェルの意識を反映したハーレクイン・ロマンス的な文体が採用されます。聖母マリアに擬えられる彼女の、幾分ロマンティックすぎる空想にジョイスが込めた意義とは何か? 広告と商業主義、そして「女らしさ(womanhood)」との関係を念頭に置いて第13挿話前半を読み解きます。
2 第13挿話 ナウシカア(後半) 第13挿話の後半は、その語りが突如としてガーティから、『ユリシーズ』全体の主人公、レオポルド・ブルームの「意識の流れ」に基づいた「初期のスタイル(initial style)」へと切り替わります。午後4時に起きた(と推定される)妻モリーの不義を想起し、その心の痛みを避けるために彼がおこなった行為の意味、そして、打ちあがる花火の光と轟音を背景に、交錯するブルームとガーティの視線の意味は? 雑誌連載時に発禁処分を受けた本挿話において、「検閲」という問題を念頭に置いて第13挿話後半を読み解きます。
3 第14挿話 太陽神の牛(前半) 第14挿話は、作者ジョイス自身が「最も難解」と呼んだ挿話で、約900年に及ぶ英語散文史がパロディ化されます。本挿話の解説第1回のこの回では「文体(style)」に着目し、ジョイスが参照したとされるG・セインツべリー『英国の散文の韻律』(1912)やW・ピーコック『マンデヴィルからラスキンに到る英国の散文』(1903)を適宜参照しながら、原文と翻訳を読み比べることで、ジョイス文学の革新性を改めて検討します。その際、哲学における最重要概念の一つでもあるrepresentation(代理/表象/再現前)についても解説いたします。
4 第14挿話 太陽神の牛(後半) 第14挿話の解説後半では「内容」面に着目します。ミセス・ピュアフォイの3日の難産とその出産(及び、産院での宴会)を描いた本挿話は、芸術家スティーヴン・デダラスの「誕生」を描いたとされていますが、冒頭で男児誕生を祝う祝詞が3度繰り返され、さらにはイエスの死後3日目の「復活」、そして三位一体と、3にまつわる諸問題が提示されます。「聖なる母」と「地上の母」の二項対立的主題が、egoistのスティーヴンとaltruistのブルームの対比、そしてブルームのstranger性の意義へと重なり合うことを(再)検討します。
5 第15挿話 キルケ(前半) 表現主義的な戯曲形式で書かれた、第15挿話「キルケ」は、しばしば夢幻劇(dream play)と称されます。売春街である「夜の街(nighttown)」において、ブルームとスティーヴンが見る数々の幻覚が、まるでそれが現実に起こったことであるかのように描かれるだけでなく、その場にいないはずの人物までもが続々と登場し、人や動物だけでなく石鹸や扇や帽子が雄弁に語り出します――まさに何でもありのこのキルケ挿話において、ブルームは死んだ家族の亡霊たちに出会いますが、本挿話の解説第1回のこの回ではブルームの父、ルドルフの表象を、ユダヤ人やユダヤ性という観点から読み解きます。
6 第15挿話 キルケ(後半) 第15挿話の解説後半では、1984年のガブラー版が「復活」させた言葉、loveを鍵語に、第1挿話から前景化されていたスティーヴンの母の亡霊とカトリシズムの問題が、第12挿話でブルームが説く〈愛のナショナリズム〉を経て、本挿話末尾にルーディ(約11年前に生後11日で夭逝したブルームの息子)の亡霊が登場することで、〈和解〉へと至る過程を再考したいと思います。それは22歳のスティーヴン/ジョイスが苦しんだLove's bitter mysteryが、愛する者の寝顔を見つめるLove's sweet mysteryへと転じる地点を確認する作業にもなりましょう。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆視聴期間は一般申込開始(2026/03/04)から学期終了翌月末(2026/07/31)までになります。一般申込開始(2026/03/04)以降はお申し込みいただけましたら視聴可能になります。
◆この講座は
2025年度 秋期 「ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』を読む(第13〜15挿話)」 (10/11〜11/29 土曜日、全6回)
で開講した講座のアーカイブ講座になります。
◆途中映像音声の乱れるところがありますがご了承ください。
◆オンデマンド講座のため講義内容に関する質疑は受付けいたしかねます。あらかじめご了承お願いいたします。

講師紹介

小林 広直
明治大学准教授
1983年埼玉県生まれ。早稲田大学文学研究科博士課程修了(博士)。早稲田大学文学学術院英文学コース助手、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て現職。専門分野は、ジェイムズ・ジョイスを中心としたアイルランド文学。著書に『ジョイスの罠』(共著、言叢社、2022)、『ジョイスへの扉』(共著、英宝社、2019)、『ジョイスの迷宮』(共著、言叢社、2016)、『ジョイスの罠』(共著、言叢社、2016)などがある。現在、『ダブリナーズ』全15篇を3年かけて読破するオンライン読書会Deep Dubliners(https://www.stephens-workshop.com/deep-dubliners/)を主催している。
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