ジャンル 世界を知る

早稲田校

トリスタン・イズー物語の世界 ケルト神話からワーグナーの楽劇まで

  • 春講座

倉嶋 雅人(翻訳家)

曜日 金曜日
時間 13:10~14:40
日程 全8回 ・04月10日 ~ 06月05日
(日程詳細)
04/10, 04/17, 04/24, 05/08, 05/15, 05/22, 05/29, 06/05
コード 110324
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 23,760
ビジター価格 受講料 ¥ 27,324

目標

・「世界初の恋愛小説」の全貌を把握し、中世文学の魅力を知る
・世界未公開論文をもとに、物語の「事件現場」を推理する
・コーンウォールとブルターニュの地理・風土を理解する

講義概要

本講座では、"the first true love story"として名高い中世の傑作悲劇を、ストーリー構成、テーマ、キャラクターなどから多角的に解説します。まずJ・ベディエによる近代の集大成版で物語の全体像をご理解いただいたうえで、12世紀の原典(ベルールとトマ)を紹介して近代版との違いを比較し、近代版が整理・削除した「原典の真の魅力」を解き明かします。さらにスイスの研究者A・モンダッシュの本邦初紹介の論文をもとに、多くの写真・地図等を添えて、英国のコーンウォールとフランスのブルターニュにおける物語の現場を探る旅へといざないます。岩波文庫版が触れてこなかった新情報満載の中世文学講座です。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 04/10 世界初の恋愛小説……コーンウォールとブルターニュという舞台 『トリスタン・イズー物語』(ワーグナーの楽劇では『トリスタンとイゾルデ』)はフランス中世文学の傑作であり、英国コーンウォールとフランス・ブルターニュを主な舞台としています。初回は、「世界初の恋愛小説」とも評されるこの作品のストーリーを丹念に紹介します。「悲しみの子」トリスタンの出生と試練、主君の妻「金髪のイズー」との不倫愛、火刑場からの逃亡、神明裁判の奇跡、「白い手のイズー」との結婚、恋人たちの死への旅路まで、波乱万丈の展開と「愛と死」をテーマとする文学世界の味わいを解説します。
2 04/17 王と王妃と騎士……物語の構成要素の分析 トリスタン物語の「原作」は、ベルールらの「流布本系」とトマらの「宮廷本系」の2系統に分かれています。トリスタン物語は、やがてアーサー王物語に吸収され、主人公トリスタンはアーサー王の円卓の騎士の一人となりますが、二つの物語は「王と王妃と騎士」の三角関係をテーマとする点で共通しています。第2回講義では、トリスタンの名前の由来、故国リオネスはいずこ? 謎の「トリスタンの墓石」、「王様の耳はロバの耳」、コーンウォール王の居城は2つあった? など、物語の重要な構成要素を詳しく分析します。
3 04/24 決闘と媚薬、イズーの嫁入り……物語の現場を探る・前編 最初に、ベディエの集大成版=「奇跡のパッチワーク」を解説します。ついで、トリスタンの決闘地・聖サムソン島は意外な場所、赤い帆と白い帆のシンボリズム、金髪のイズーの住む南アイルランドの宮廷、自我を持つヒロインはケルトの伝統、媚薬という強力アイテムとワーグナーの新解釈ほか、物語序盤の見どころを取り上げ、モンダッシュによる物語の現場推理を紹介します。ドイツ・ヴィーンハウゼン修道院所蔵の「トリスタン・カーペット」の名シーンなど、写真・図版満載で臨場感豊かに物語を語ります。
4 05/08 不倫の発覚と逃亡、イズーの帰還……物語の現場を探る・中編 ラブサインに鈍感なヒーロー、侍女ブランジャンの災難、大芝居で難を逃れる恋人たち、アーサー王物語と共通する「不倫の発覚」シーン、トリスタンの大ジャンプの現場はどこか、モロアの森での逃亡生活、ケルト神話に由来する「抜身の剣のシーン」とマルク王の恩情、媚薬の期限切れ? 隠者オグランとは何者か、イズーの宮廷への帰還、イズーの晴れ着購入におもむいた「お山」は英国版モン・サン=ミシェルだった……。この中編では証言・写真などを多用して、モンダッシュの冴えわたる現場推理を紹介します。
5 05/15 神の裁き、もう一人のイズー、そして死……物語の現場を探る・後編 神明裁判が行われた「難所の渡し場」はここだ、近代人ベディエと中世人ベルールによる「神の裁き」の徹底比較、コーンウォールからブルターニュへ、白い手のイズーとの不幸な新婚生活、トリスタンの死を招いた「黒い帆の嘘」、恋人たちの終焉の場パンマール岬に立つ……ほか、終盤の名シーンを語り、物語に深く関わる実在三聖者の活動録、悪逆非道のコノモル王はマルク王のモデル? などを紹介します。最後に、モンダッシュによる、トリスタン石の謎の墓碑銘の驚くべき新解釈から物語全体を見直します。
6 05/22 トリスタン物語はいかに形成されたか……「ブルターニュもの」の三段階の進化 前半で、吟遊詩人の活躍、騎士道物語の三大テーマ、「ブルターニュもの」とは何か、女流詩人マリ・ド・フランスほか、中世の文学状況を語ります。後半では、物語の進化の三段階を解説します。「第一形態」の意外すぎる結末、騎士を誘惑する王妃、西洋版道行(みちゆき)の由来となったケルト神話(「ディルムッドとグラーニャ」、「ノイシュとディアドラ」)、「第二形態」最大の発明は媚薬、全体像を整えた「第三形態」の新機軸、トリスタンの正体の神話的解釈など、物語の根底にあるケルト神話の世界観を読み解きます。
7 05/29 トリスタン物語とアーサー王物語が共存する地……コーンウォールの地理と歴史 古代ローマ時代に「輝く土地」と呼ばれた英国最西端の岬、英仏の「聖ミカエルの山」(セント・マイケルズ・マウントとモン・サン=ミシェル)、巨石遺跡と民間信仰、トリスタン物語とアーサー王物語に共通する王の居城ティンタジェル、物語が生み出した本物のティンタジェル城、「マルク王の宮廷のモデル」カースル・ドアー遺跡、アーサー王の決闘の地、名剣を投げ入れた湖ほか、英国南西部のコーンウォール半島の歴史・考古学・伝説、ぜひ訪れたい名所などを数多くの写真・図版を添えて、幅広い視野から解説します。
8 06/05 沈める都市とアーサー王物語の森……ブルターニュの地理と歴史 「一夜にして海の底に消えた都市」とドビュッシーのピアノ曲「沈める寺」、人魚に生まれ変わった王女、パリと対抗する地方都市の悲しい矜持、ブルターニュ版「遠野物語」、死神アンクウのいる教会、キリスト教の聖人にまつわる諸都市とその伝説などを解説します。後半では、モン・サン=ミシェルでの巨人との戦い、ケルトの森ブロセリアンド、騎士ランスロットが育った湖、魔法使いマーリンの墓、嵐を起こす泉、帰らずの谷、フランスのアヴァロン島など、ブルターニュに伝わるさまざまなアーサー王伝説を紹介します。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合の補講日は6月12日(金)を予定しています。

講師紹介

倉嶋 雅人
翻訳家
1955年長野県生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。主な訳書にヘイウッド『ケルト歴史地図』 、ギフォード『ケルトの木の知恵』、オルドハウス=グリーン『ケルト神話』、ハースト『超約ヨーロッパの歴史』、ジャイヴィン『超約中国の歴史』、ペスケ『手の中の地球 国際宇宙ステーションから見た私たちの星』、共訳書にスミソニアン協会編『地球博物学大図鑑』、コルナバス『地政学世界地図』など。
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