ジャンル 芸術の世界

中野校

絵画のヒストリア フェルメール、フランチェスカ、ダ・ヴィンチ、ブリューゲル、レーニ、レンブラント

  • 冬講座

柴崎 信三(ジャーナリスト、元日本経済新聞論説委員)

曜日 水曜日
時間 13:10~14:40
日程 全6回 ・01月21日 ~ 03月04日
(日程詳細)
01/21, 01/28, 02/04, 02/18, 02/25, 03/04
コード 340421
定員 24名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 17,820
ビジター価格 受講料 ¥ 20,493

目標

・今日〈名画〉と呼ばれる古今東西の絵画作品の成り立ちをたどり、その時代と歴史の文脈を考察します。
・「絵画」、そして「名画」を成り立たせるものは何なのか。画家の技量や観者の眼差しを超えたものは何なのか。
・作品の成り立ちとその後にたどる運命は、「絵画」を取り巻く社会と政治や経済など、広く「歴史」の波風にさらされます。
・時代背景や人物とのかかわりにまなざしを広げて、「絵画」をより広い視座からとらえ直すことを、この講座は目ざします。

講義概要

ルネサンス盛期から近代へ向かう歴史のなかから西洋近代絵画の下地が作られますが、その担い手の多くの画家たちの素性はカトリック教会や王侯貴族たちのお抱え画家でした。それがやがて市民社会の職業画家として身分的にも独立して自由な画題と表現手法を確立してゆきます。こうしたなかで描かれてきた作品は、画家の意図を超えた歴史の文脈のもとで思いもよらぬ物語をはらんで今日にいたります。21世紀の観客が過去に描かれたこうした作品と向き合い、画家の表現と手法に分け入ってゆくとき、作品の主題や表現の技量の評価を超えて画家と作品をとりまく時代背景を見つめ、そこから立ち上がる物語を読み解いてゆくことをこの講座はめざします。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 01/21 一枚の絵から① フェルメール「真珠の耳飾りの少女」 フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」という絵を知らない人は、いまやいないかもしれない。それほど広く知られたこの絵のモデルが誰かというと、これは作者のフェルメール以上に謎に包まれている。過去の映画では画家の家に奉公に来ていた召使のグリエットという少女という設定だったし、画家自身の娘とする説もあるがわからない。ここではこの絵と同時代のイタリアで「父親殺し」の犯人として処刑された、ベアトリーチェ・チェンチという貴族の娘の肖像との尚似性に光を当てて、17世紀半ばの欧州社会に広がっていた情報と文化の流動性について考えてみたい。
2 01/28 一枚の絵から②ピエロ・ディ・フランチェスカ「ウルビーノ公の肖像」 15世紀末葉のフィレンツェにルネサンス美術の花々が咲き誇った。そのなかで、ピエロ・ディ・フランチェスカが描いた「フェデリーコの肖像」は特異な存在感と強いインパクトを見る者にもたらす。薬種商から金融にまで手を広げ、広い支配力を誇ったフィレンツェのメディチ家の3代目当主、ロレンツォ兄弟が大聖堂のミサのさなかにテロに遭い、弟のジュリアーノが落命した事件を仕組んだのは、傭兵隊長としてなじみの深いウルビーノ公国のフェデリーコ・デ・モンテフェルトロだった。ボッティチェッリの「プリマヴェーラ」にみるルネサンスの輝きの陰に潜む陰謀と策略の一断面である。
3 02/04 一枚の絵から③レオナルド・ダ・ヴィンチ「白貂を抱いた貴婦人」 「モナリザ」や「最後の晩餐」などダ・ヴィンチの代表作に代えて、今回はこの「白貂を抱いた貴婦人」をとり上げる。美術から建築、数学、天文学‥‥と森羅万象にわたる知識をまとった「万能の天才」はしかし、そのアイデアをメディチ家の庇護のもとで現実化しようとして、ことごとく挫折する。送り込まれた新天地、ミラノ公爵のスフォルッツァ家のもとで、ようやくしばらくの安寧と充足を得た。そこで描いたのが今回の作品である。夥しい知識と才能を現実に折り合わせようとしたとき、天才にとって人生の時間はあまりにも短い。この作品はそのことをひそかに伝える。
4 02/18 一枚の絵から⓸ブリューゲル「死の勝利」 「雪中の狩人」や「農民の婚宴」など、中世農村の庶民の平和な暮らしをリアルに描いたピーテル・ブリューゲルの作品を考えると、この「死の勝利」はおそろしく苦痛と教訓にみちている。これは中世の西欧社会を襲ったペストの脅威によって、人間の生と社会が大きく瓦解し、その脅威への不安から生まれた〈メメント・モリ〉、「死を思え」の思想を映している。パンデミックにおびえる現代社会にも通じるこの作品から、中世社会に広がった「闇」と人間の姿を考える。
5 02/25 一枚の絵から⑤グイド・レーニ「聖セバスチァンの殉教」 作家の三島由紀夫が若いころから愛着し、出世作「仮面の告白」の重要なモチーフとなった作品である。古代ローマで異教のキリスト教徒として迫害を受けながら生きのびた殉教者として、西欧社会では十字軍兵士や同性愛者の守護神として信仰の対象となってきた。ほかにも多くの画家たちの作品に描かれてきたこの聖人像が日本人作家の三島の作品にとり込まれた背景とともに、西欧社会でこれほどまでに持続的な絵画表象となっていった背景を考える。
6 03/04 一枚の絵から⑥レンブラント「夜警」 あまりにもよく知られたこの名画は、カトリックと王権の支配から脱して、新しい産業と技術を基盤にした「市民」が主役となる17世紀半ばのアムステルダムが舞台である。「夜警」はこうした社会の〈自治〉の象徴にほかならないが、人と金と植民地からの物資が集まるこの都市では同じころ、珍重されたチューリップへの投機熱が高まり、いわゆる〈チューリップ・バブル〉の時代と重なる。レンブラントの目は市民たちを導く夜警隊長の左手の先に、何を見ていたのだろうか。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆各回資料配付の予定です。
◆参考書籍は、各回、教室で個別に紹介します。

講師紹介

柴崎 信三
ジャーナリスト、元日本経済新聞論説委員
1946年東京生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業、日本経済新聞社へ入社。文化部長、論説委員などを務めた。獨協大、白百合女子大で表象文化論、日本文化論などを講じる。著書に『魯迅の日本 漱石のイギリス』(日本経済新聞出版社)『絵筆のナショナリズム』『絵画の運命』(ともに幻戯書房)『パトリ 〈祖国〉の方へ』(ウエッジ)『〈日本的なもの〉とは何か』(筑摩書房)『三島由紀夫という迷宮』(草思社)などがある。

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