ジャンル 現代社会と科学
中野校
習近平と「100年に一度の大変局」 中国を正しく「知る」という大難
富坂 聰(拓殖大学教授)
曜日 | 木曜日 |
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時間 | 15:05~16:35 |
日程 |
全6回
・10月23日 ~
12月04日 (日程詳細) 10/23, 11/06, 11/13, 11/20, 11/27, 12/04 |
コード | 330707 |
定員 | 36名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 17,820 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 20,493 |
目標
・現在まで自分が持っていた中国理解が正しいか否かを判断する
・新しい目でこの10年の中国の変化と発展と課題を理解する
・米国との激しい対立の根源を理解し中国の目指す世界戦略を理解する
・日本にとって最大の外交的課題である中国との付き合い方に示唆を与える
講義概要
中国は世界情勢の変化をどうとらえてきたのか。その答えが最も端的に凝縮されているのが「100年に一度の大変局」という言葉だ。新型コロナウイルス感染症の広がりのなかで頻繁に使われるようになったのだが、当初は少々大げさな言葉として耳に響いた中国の時代認識は、トランプ2.0の始まった現在、違和感なく受け止められるようになってきた。つまり中国の先見性が反映されているということだが、本講座では、習近平政権がなぜ早い段階からこのような認識をして、またどのように対処しようとしているのかを詳らかにし、中国の対外政策の根本にある考え方を理解することを目的としている。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 10/23 | 国家副主席時代の習近平と北京オリンピック | 中国が暗黒時代と位置付ける近代史に別れを告げるオリンピック。そこで過去の世界への貢献をアピールし、中国の台頭を認めさせようとした試みは概ね成功する。とくにオリンピック閉幕直後に起きたリーマンショックと世界金融危機での混乱の中で中国が果たした役割は、中国が経済大国としておおきな影響力をもっていることを強く印象付けることとなった。西側先進国からは、中国がバンドン会議から保ってきた「被侵略国」としての位置づけを少し修正したようにも見られた。中国の微妙な立ち位置を解説する。 |
2 | 11/06 | 米中蜜月期と二つの核問題 | 2001年に起きた「9・11」により、テロとの戦いを宣言したアメリカは中国との距離を縮め、対テロ戦争での協力を取り付けた。この米中の協力は、世界の様々な問題の解決にも拡大されてゆく。一つは北朝鮮が核兵器開発を思いとどまるよう説得することであり、もう一つはイランの核開発を制御することである。いずれも6ヵ国での話し合いという枠組みが生まれ、中国はどちらにもかかわることになる。この時代の中国は、アメリカの意向を受けて北朝鮮に圧力をかけるという従来にはないスタンスを取った。 |
3 | 11/13 | 蜜月の崩壊と南シナ海 | オバマ政権下での中国との良好な関係は、後半に入ると一気に陰りを見せる。その主な原因は、一般には「中国への失望」とされているが、実態はそうではない。むしろアメリカが産油国となり、中東への関与に興味を失ったこと。また、次の経済発展が見込める有望な地域としてアジアを重視し始め、そのことでにわかに中国の存在が邪魔になった点が無視できないからだ。一方の中国は、このころからにわかにアメリカに対し「共存」を呼び掛けるようになる。 |
4 | 11/20 | 新型コロナウイルス感染症が変えた米中関係 | 2019年の年末、武漢を中心に広がった新型コロナウイルス感染症。感染爆発が武漢市で起こったことから中国の責任を問う声が広がった。また蝙蝠由来と考えられるコロナウイルスは当初は武漢の市場から、後には武漢にあるウイルス研究所から流出したものとして、中国批判に拍車がかかった。こうした問題がなぜ科学的な根拠も示されないまま拡散したのか。それを明らかにしながら、情報が独り歩きしながら定着する過程を明らかにする。 |
5 | 11/27 | ロシアによるウクライナ侵攻と「自由主義VS専制主義」 | 「力による現状変更に反対する」という言葉は、ロシアによるウクライナ侵攻以降、中国を批判するために頻繁に使われるようになった言葉だ。同時に、「自由主義VS専制主義」という構図で、西側先進国VS中国・ロシアという陣営対立を強調する傾向も世界に広がっていった。ロシアとウクライナの問題をアジアに当てはめ、「台湾有事」を声高に叫ぶ動きも活発化する。これらは欧米の視点を翻訳しただけの日本の解釈だが、その視点ははたして正しいのか。掘り下げて解説する。 |
6 | 12/04 | トランプ関税と新秩序 | 第一次トランプ政権からバイデン政権を経て、再びトランプ氏が大統領選挙に勝利するなかで、米中対立は深刻さを増していった。バイデン政権下で進められた中国包囲網、サプライチェーンからの中国排除に続き、トランプ2.0では、既存の国際秩序を正面から破壊する動きもみられた。こうした世界に中国はBRICS、上海協力機構をフル活用して対応しているが、その新たな秩序の骨格として機能しはじめているのが「人類運命共同体」という考え方だ。 |
講師紹介
- 富坂 聰
- 拓殖大学教授
- 愛知県生まれ。16歳で単身台湾に渡った後、大陸へ。北京大学在学中に共同通信社でアルバイトとして学生デモの報道に携わる。中退して帰国後は週刊誌記者として様々な社会問題にかかわる。2003年に独立。2014年から現職。著書は1994年の『龍の伝人たち』から現在まで30冊を超える。