ジャンル 日本の歴史と文化
中野校
人物回覧―戦後対比列伝
柴崎 信三(ジャーナリスト、元日本経済新聞論説委員)
曜日 | 金曜日 |
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時間 | 13:10~14:40 |
日程 |
全4回
・07月11日 ~
08月01日 (日程詳細) 07/11, 07/18, 07/25, 08/01 |
コード | 320227 |
定員 | 24名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 11,880 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 13,662 |
目標
・〈人物回覧〉の締めくくりとして、戦後日本の各界で「巨匠」とされた人物を各界のライバル形式で取り上げます。
・同じ表現領域で、二人が発表した作品と社会的な行動がもたらしたものを、戦後社会がどのように受け止め、「国のかたち」をつくっていったかを考えます。
・かれらの歩み「戦後昭和」の歴史とどのような関係を取り結んだのかを考えます。
・かれらの行動や作品を通して、その今日から見た意味を掘り起こします。
講義概要
戦後の日本文化に大きな足跡を残した作家たちを、対比列伝というかたちでたどります。文芸評論家の小林秀雄と政治学者の丸山眞男、映画監督の黒澤明とアニメーション作家の宮崎駿、建築家の丹下健三と画家の岡本太郎、詩人・思想家の吉本隆明と詩人の金子光晴。それぞれの領域で戦後昭和をけん引した4組8人のカリスマたちです。彼らは言語や造形などの表象作品を通して、社会に大きな影響をもたらし、戦後という時代のシンボルを形成する一方、ライバルとの対立や乖離も広げました。敗戦ののちの民主主義と経済成長を通して豊かな時代へ向かうかたわらで、伝統を見失ってグローバリゼーションの渦に翻弄される「この国のかたち」を考えます。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 07/11 | 小林秀雄(文芸評論家)vs丸山眞男(政治学者) | 文芸評論という領域から、小林秀雄は西洋美術の批評、人生論、さらに日本の伝統思想にさかのぼり、戦後社会が失ったものをを日本人に問いかけました。一方、丸山眞男は学究として日本政治思想史に取り組みましたが、戦争で兵卒として徴用され、軍隊組織の過酷な現実を経験して日本人の思考様式の特異性にたどりつきます。そこから戦後民主主義への共感を言論活動の中で探りった丸山に対し。伝統に回帰した小林の晩年は「本居宣長」の執筆に向かいます。伝統と革新という対極を生きた二人の言論人の歩みをたどります。 |
2 | 07/18 | 黒澤明(映画監督)vs 宮崎駿(アニメーション作家) | 「七人の侍」や「羅生門」で注目されて「世界のクロサワ」になった巨匠に対し、宮崎駿はアニメーションという新しい映像表現で喝采を浴びて一躍世界的な映像作家となりました。「サムライ」や戦後の混乱期を背景にした黒澤の映像はリアリズムの映像美学が、世界的な評価をにつながりましたが、宮崎のアニメーションは時間も登場人物のキャラクター、ストーリーもすべて仮構の産物です。アニメーションという新たな表現手段は。想像力と映像技術が生み出した新たな映像表現として「日本映画」のイメージを更新したのです。 |
3 | 07/25 | 丹下健三(建築家)vs 岡本太郎(画家) | 1964年の東京五輪の年に丹下健三は優美な曲線を描いた屋根を持つ々木体育館を作りました。日本の近代建築の傑作と内外の評価の高い、記念碑的作品です。その6年後、今度は大阪万博の会場となった千里丘陵に丹下は「お祭り広場」というメインアリーナをつくります。鋼鉄製の屋根で覆ったこの建物が完成する直前に、画家の岡本太郎が天井をぶち抜いて「太陽の塔」を作ります。これも今日では1970年大阪万博のシンボルとしてゆるぎない存在感を示しています。両雄の対決をたどります。 |
4 | 08/01 | 吉本隆明(思想家・詩人) vs 金子光晴(詩人) | 吉本隆明は思想家としてのイメージが強いのですが、「小さな群れへのあいさつ」や「共同幻想論」などの代表的な作品を通してその戦後への足取りを探ります。これとは対照的に、金子光晴はボヘミアン詩人として東南アジアやパリを放浪するなかで、外から「日本」を見つめて詩や絵画を描きます。戦争になだれこんだ日本が敗戦を迎えると、吉本は愛国青年から転じて戦後は反体制運動にかかわるのと対照的に、金子は「鮫」や「落下傘」などの反戦詩を通して「無国籍者」としての生き方を戦後も貫きました。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆休講が発生した場合の補講日は8月22日(金)を予定しています。
◆各回資料配付の予定です。
◆参考書籍は、各回、教室で個別に紹介します。
講師紹介
- 柴崎 信三
- ジャーナリスト、元日本経済新聞論説委員
- 1946年東京生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業、日本経済新聞社へ入社。文化部長、論説委員などを務めた。獨協大、白百合女子大で表象文化論、日本文化論などを講じる。著書に『魯迅の日本 漱石のイギリス』(日本経済新聞社)『絵筆のナショナリズム』『絵画の運命』(ともに幻戯書房)『パトリの方へ』(ウエッジ)『〈日本的なもの〉とは何か』(筑摩書房)などがある。