ジャンル 現代社会と科学

早稲田校

言語学入門―言語は世界を映す鏡か?

  • 夏講座

酒井 智宏(早稲田大学教授)

曜日 水曜日
時間 19:00~20:30
日程 全8回 ・07月02日 ~ 08月27日
(日程詳細)
07/02, 07/09, 07/16, 07/23, 07/30, 08/06, 08/20, 08/27
コード 120721
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 23,760
ビジター価格 受講料 ¥ 27,324

目標

・「言語が異なれば思考も異なる」とはどういうことである/ないかを具体的に説明できるようになる。
・言っていないことが伝わる仕組みおよび「言われたこと vs. 言外の意味として伝えられること」の区別についてどのような考え方が提案されているかを説明できるようになる。
・「同じ物事について同じことを述べる = 同じことを考える」という図式の問題点を説明できるようになる。

講義概要

言語が世界を映す鏡なら、どの言語も互いにそっくりで、翻訳に苦労することはないはずです。そして、たとえばある出来事を表す日本語の文は一つに定まるはずです。実際には、同じ出来事を報告するはずの文が、文化によって、文脈によって、人によって異なり、ときに誤解の原因となります。その一方で、われわれは文化を超えて、文脈を超えて、個人差を超えて、お互いの言うことを理解し合うことができます。文化・文脈・個人間の違いに縛られつつも時空を超えて共有することができるもの、それこそが意味にほかなりません。本講座では、言語学の中でも特に認知言語学と語用論に焦点を当て、意味の二面性について考えてみたいと思います。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 07/02 言語(学)とは 言語(学)とは何であって何でないかを見た後に、音韻論を例にとりつつ言語学的な考え方を体験してみます。
2 07/09 語の意味と文の意味 「ジョンはキャベツを食べた」という発話P1から「ジョンは野菜を食べた」という情報Q1を読み取ることができるのはなぜでしょうか。「文/発話の意味 = 真理条件(的内容)」という図式に基づいてこの問いに答えます。
3 07/16 言語が違えば思考も異なる?(1) 「言語ごとの世界の切り取り方がその言語を使用する人たちの世界観を決定する」とする言語相対論の妥当性を検討し、これを手放しで受け入れることができないことを学びます。
4 07/23 言語が違えば思考も異なる?(2) 言語相対論を「ある言語Lを獲得する = Lの枠組でしか思考することができなくなる」という主張として解釈するのではなく、「Lを獲得する = Lを使う限り注意を向けざるをえない世界の諸側面に注意を向けるように訓練される」と解釈することで、言語相対論が復権する可能性があることを学びます。
5 07/30 言っていないことが伝わるしくみ (1) 「いまちょっと忙しくて」という発話P2から「欠席します」という情報Q2を読み取ることができます。P2とQ2の関係は、第2回に見たP1とQ1の関係と同じなのでしょうか。発話が真理条件的内容だけでなく非真理条件的内容をも伝達するしくみを考えることでこの問いに答えます。
6 08/06 言っていないことが伝わるしくみ(2) 「ジョンはケーキを切った」という発話P3から「ジョンはナイフを使った」という情報Q3を読み取ることができます。この情報は第5回にみたP2とQ2の関係と同じなのでしょうか。あるいは第2回に見たP1とQ1の関係と同じなのでしょうか。言語学者および哲学者が真理条件的内容と非真理条件的内容の境界線をめぐって激論を戦わせている様子をみることで、「言う」とは何をすることなのかを考えます。
7 08/20 同じことを言う/思考するとは?(1) 「明けの明星は太陽系の第二惑星だ」という発話P4から「宵の明星は太陽系の第二惑星だ」という情報Q4を読み取ることができ、逆に発話Q4から情報P4を読み取ることもできます。ではP4とQ4は同じことを言っているのでしょうか。この問いを通じて言語が世界を映す鏡でないことを学びます。
8 08/27 同じことを言う/思考するとは?(2) 第7回のP4とQ4は「同じことを別の言い方で言っている」「同じことを言いつつ頭の中に浮かぶイメージが異なっている」感じがするかもしれません。では言い方とイメージを揃えれば同じことを言ったことになるでしょうか。双子の片方が言った「ジョンは毎日水を2リットル飲む」P5と双子のもう片方が言った「ジョンは毎日水を2リットル飲む」Q5は必ず同じことを言っているでしょうか。この問いを通じて言語表現が思考を映す鏡でないこと、二人の人間の脳状態が同じでも思考が異なりうることを学びます。

講師紹介

酒井 智宏
早稲田大学教授
慶應義塾大学文学部文学科英米文学専攻卒業。東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士後期課程修了、博士 (学術)。パリ第8大学言語学専攻博士課程修了、Docteur en Sciences du Langage (フランス政府給費留学)。日本学術振興会特別研究員PD、跡見学園女子大学文学部人文学科助教等を経て2019年より現職。主要著書: Semantic Externalism and Cognitive Linguistics (単著、早稲田大学出版部、2024)
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