ジャンル 世界を知る
中野校
イスラム教と世界の邂逅―地域からみる歴史的展開と影響
守川 知子(東京大学大学院准教授)

曜日 | 月曜日 |
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時間 | 15:05~16:35 |
日程 |
全8回
・04月07日 ~
06月16日 (日程詳細) 04/07, 04/14, 04/21, 05/12, 05/19, 05/26, 06/09, 06/16 |
コード | 310329 |
定員 | 24名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 23,760 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 27,324 |
目標
・イスラム教が世界各地でどのような影響を与えたのかについて、その歴史を通して学ぶ。
・地域ごとに、いつ、どのように、「外来の宗教」であるイスラム教との邂逅・相克・受容(もしくは反発)があったのかを学ぶ。
・拡大しつづけるイスラム教の歴史を知ることで、現代国際社会の根底にあるものについて理解する。
講義概要
今や世界の20億人ほどにまで達したイスラム教。アラビア半島の片隅から生まれたイスラム教の拡大の歴史と、各地へのインパクトとはどのようなものだったのか。「外来の宗教」であるイスラム教は、瞬く間に西アジア世界を席巻し、西はイベリア半島から東は中央アジアや北インドにまで伝来する。ただし、その後の定着には数世紀を要したことを忘れてはならない。その間、実際には、イスラム教もまた、各地の慣習・伝統や文化の影響を受けて多様な形態をとる。本講義では、各地でのイスラム教伝来の影響やその後の展開を、とりわけ地域の側に焦点を当てつつ、双方向の視点から検討する。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 04/07 | 20億人の巨大宗教イスラム教:その歴史的展開と世界各地への影響 | 7世紀にアラビア半島の紅海側にある町メッカで誕生したイスラム教は、21世紀の現在、世界中に信徒をもつ巨大宗教となった。その1400年の歴史を概観する。 |
2 | 04/14 | イスラム教はどのような宗教か? | ユダヤ教やキリスト教といった一神教の影響のみならず、ゾロアスター教や多神教の影響も考慮しつつ、前近代のイスラム教(いわゆる歴史的イスラム教)について学ぶ。 |
3 | 04/21 | 西アジアに到来したイスラム教とサーサーン朝の滅亡 | 7世紀の西アジア世界には、シリアやエジプトなどの東地中海を領有していた東ローマ(ビザンツ)帝国と、イラク・イラン・コーカサスを領有していたサーサーン朝があったが、アラブ軍の到来により、サーサーン朝が滅亡する。このことにより、西アジア社会に生じた影響について検討する。 |
4 | 05/12 | 北アフリカ・イベリア半島に進出したイスラム教とヨーロッパ世界 | 8世紀にイベリア半島に進出したイスラム教は、この地でヨーロッパ世界と対峙する。アルハンブラ宮殿やメスキータなどの異文化融合の建造物が生まれた一方、キリスト教徒側からのレコンキスタ(国土回復運動)も興った。イスラム教への反発が最も大きかったイベリア半島を中心にその歴史的影響について検討する。 |
5 | 05/19 | イスラム教の新たな潮流:シーア派、スンナ派、スーフィズム、聖者崇敬 | 西アジアをはじめ世界各地に伝来したイスラム教は、さまざまな思想的影響を受ける。この過程で、シーア派やスンナ派、そしてイスラム神秘主義ともいわれるスーフィズムが生まれていく。とりわけスーフィズムや聖者崇敬は、その後のイスラム教の展開にかかわる重要な要素となる。歴史的に多様なイスラム教のあり方について学ぶ。 |
6 | 05/26 | 中央アジア・中国に拡がるイスラム教 | 8世紀中葉に中央アジアのタラス河畔で中国の唐の軍隊と対峙したイスラム教は、その後、トルコ系の人々を中心に拡大する。現在、中央アジアの5か国はいずれも、イスラム教徒がマジョリティを占める。多様性を備えたイスラム教が中央アジアや中国に拡がる過程を検討する。 |
7 | 06/09 | インドに到来したイスラム教:ヒンドゥー文化のただなかで | 現在、インドには人口の約8割のヒンドゥー教徒に対して、1.4割(1億8000万人)ほどのイスラム教徒がいる。イスラム教がインドに定着する背景には、11世紀から断続的につづいた北インドやデカン高原への中央アジアのイスラム政権の侵攻や西アジアとの経済的な交流があった。インドのほぼ全域を支配したムガル朝(1526-1858)時代を経験したにもかかわらず、マジョリティにはならなかったインドのイスラム教の歴史を検討する。 |
8 | 06/16 | 東南アジア・インド洋海域世界・アフリカに拡がるイスラム教 | 世界最大のイスラム教徒人口を擁するインドネシアのように、最もイスラム教が拡がった東南アジアの島嶼部や、インド洋海域世界やアフリカでのその歴史的背景と影響について、14・15世紀に隆盛したスーフィズムや聖者崇敬とあわせて検討する。 |
講師紹介
- 守川 知子
- 東京大学大学院准教授
- 京都市生まれ。博士(文学、京都大学)。北海道大学准教授を経て、現職。専門は、西アジア史。特に、社会史や文化史を専門とし、イラクのシーア派諸聖地への巡礼や、海や陸のシルクロードを通じた文化交流、アルメニア人などの宗教マイノリティを主たる研究対象としている。主著に、『シーア派聖地参詣の研究』(京都大学学術出版会、2007年)、編著に、『移動と交流の近世アジア史』(北海道大学出版会、2016年)、『都市からひもとく西アジア:歴史・社会・文化』(勉誠出版、2021年)などがある。