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記憶と脳 記憶は脳でどのように作られ、失われるのか?

  • 春講座

櫻井 芳雄(京都大学名誉教授)

曜日 金曜日
時間 13:00~14:30
日程 全6回 ・05月09日 ~ 06月13日
(日程詳細)
05/09, 05/16, 05/23, 05/30, 06/06, 06/13
コード 710535
定員 50名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 17,820
ビジター価格 受講料 ¥ 20,493

目標

・記憶の特性と脳内メカニズムについて科学的知見に基づき理解する
・記憶と脳に影響する生活習慣について理解し様々な迷信を正す
・記憶を失う病気(特に認知症)について最新の成果と共に理解する

講義概要

本講義は、毎日の生活に必須である「記憶」について、最新の脳科学的・心理学的知見に基づき、多くの映像も示しながら、わかりやすく解説します。まず、記憶がコピーではなく「脳によって作られる」ものであることを示す様々な事実を紹介します。また、記憶が脳のどこでどのように作られ、どのような実体として存在しているのかについても、最新の研究成果を踏まえ説明します。さらに、記憶の個性と脳の個性の関係や、記憶に影響する生活習慣、および記憶にまつわる迷信も取り上げます。最後に、記憶を失う病気について、特にアルツハイマー病における記憶の崩壊に焦点を当て、その原因と治療法の現状、そして今後の研究の展望などを解説します。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 05/09 記憶の不思議な性質 記憶とは、見たもの聴いたものをそのまま脳にコピーする働きではありません。記憶は必ず変換され分散した情報として脳に残り、思い出す時は脳がそれらの情報から記憶を作り出します。このことから、記憶は必ず変容し、無かったことを思い出すこともあり、思い出すたびに変わっていくことがわかっています。第1回では、これら記憶の性質と、忘却とは何か、脳の記憶とAI(人工知能)の記憶はどう違うのか、などについて解説します。
2 05/16 記憶は脳のどこで作られるのか? 何かを覚えようとする時、脳のどこが働いているのでしょうか? その答えは、脳の一部が損傷したため記憶を作れなくなった患者さん達が教えてくれます。第2回では、そのような記憶障害の患者さんの例と、それに基づく脳科学的研究を紹介し、記憶を作る脳の部位について解説します。また、そのような脳部位が記憶の種類で異なること、習慣を作る脳部位があること、記憶には脳全体が関わっている可能性もあること、などを解説します。
3 05/23 記憶の実体は何か? 何かを覚えた時、その記憶はどのような状態で脳に残るのでしょうか? これは記憶研究における最大の謎ですが、現在の脳科学は次第にその実体に迫りつつあります。第3回では、これまでの研究で注目されてきた記憶の実体として、記憶物質の生成、神経細胞(ニューロン)の活動、ニューロン集団の形成、ニューロンをつなぐシナプスの変化、ニューロン新生などを取り上げ、それらの可能性を代表的な研究例と共に解説します。
4 05/30 記憶の個性と脳の個性 記憶は不安定で必ず変容しますが、一度だけ見たり聴いたりしたものをそのままずっと記憶し続ける人達が稀にいます。また、そのような「超記憶」を持つ人達の中には、重い学習障害や自閉症を併せ持つサヴァン症候群と呼ばれる人達もいます。さらに、脳の萎縮が記憶力に影響しない人達もいます。第4回では、超記憶の特性とメリット/デメリット、超記憶を可能にする脳の特徴、脳の変化と記憶力の関係、などについて解説します。
5 06/06 日常生活に関わる記憶と脳の変化 記憶については、特に日常生活と関係するテーマに関し、様々な説が広まっており、その一部には迷信も含まれています。第5回では、日頃興味を持たれている話題として、記憶と年齢の関係、記憶と睡眠の関係、効果的な勉強法、スマホなどデジタル機器が記憶に与える影響、心理的トラウマとしての記憶、催眠による記憶の引き出し、胎児期や乳幼児期の記憶、記憶術の活用などを取り上げ、最新の脳科学的研究に基づき解説します。
6 06/13 記憶を失う病 記憶にはふつう忘却が伴いますが、正常な忘却ではなく、特定の病気により記憶が大きく失われたり、記憶の形成が極めて困難になることがあります。第6回では、そのような病気として、脳震盪、アルコール依存症、および認知症を取り上げ解説します。特に認知症の代表であるアルツハイマー病については、脳の変化とそれを引き起こす原因、予防法と治療薬の現状、新たな研究戦略、症状の個人差、などに焦点を当て解説します。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆3/14(金)13:30より本講座の無料体験講座を実施します。
◆無料体験講座お申込みはこちらから。https://www1.ex-waseda.jp/online/ 「無料体験講座」をクリックし、「絞り込み」をクリックしてください。

◆脳科学や心理学に関する予備知識がなくても受講可能です。文系・理系も関係ありません。
◆講義全体に関係する参考図書として『まちがえる脳』(櫻井芳雄著 岩波新書 2023年刊 ISBN:978-4004319726)を薦めます(必須ではありません)。
◆休講が発生した場合の補講日は6月20日(金)・27日(金)を予定しています。
◆Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。
◆お申込みいただいた有料講座の動画は、当該講座実施の翌々日(休業日を除く)17:30 までに公開します。インターネット上で 1 週間のご視聴が可能です。視聴方法は、以下をご確認ください。
【会員】授業動画の視聴方法(会員向け)
【ビジター・法人会員】授業動画の視聴方法(ビジター・法人会員向け)

講師紹介

櫻井 芳雄
京都大学名誉教授
京都大学大学院文学研究科博士課程中退。広島大学総合科学部助手、富山大学医学部助教授、Johns Hopkins大学客員助教授(兼任)、生理学研究所客員助教授(併任)、京都大学文学研究科教授、同志社大学脳科学研究科教授などを歴任。専門は行動神経科学。医学博士。主な著書に『脳と機械をつないでみたら』(岩波書店)などがある。2023年出版の『まちがえる脳』(岩波新書)で第77回毎日出版文化賞を受賞。
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