ジャンル 日本の歴史と文化

中野校

続日本紀―巻十三・巻十四を読む

  • 夏講座

松尾 光(元早稲田大学講師、奈良県立万葉文化館名誉研究員)

曜日 金曜日
時間 13:10~14:40
日程 全7回 ・07月04日 ~ 08月29日
(日程詳細)
07/04, 07/11, 07/18, 07/25, 08/01, 08/22, 08/29
コード 320201
定員 24名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 20,790
ビジター価格 受講料 ¥ 23,908

目標

・日本の奈良時代史を叙述する上で、基礎的で根本的な歴史文献である『続日本紀』を扱います。
・日本の古代史料そのものをじかに読み、文字・記事の理解の仕方と多様な解釈を学びます。
・史料の解読を通じて、古代社会では何が関心事とされていて、人々の姿がどのように描かれていたかを学び取ります。
・史料解釈の多様さとそれに起因する解読の難しさを、また記載内容の限界やその理由などを考えていきます。

講義概要

『続日本紀』には漢文・書き下し・現代語訳本がありますが、そのうちの漢文を基本教材とします。その理由は書き下しも現代語訳も、書き手の解釈が入ってしまい、そう読めるのかどうかわからないからです。(ただし記事内容の概容を摑むため、現代語訳本も適宜使います)古代史を叙述するもとである記事がどう書かれていたのか、その確実な史料に触れることからスタートしたいと思います。とはいえ、長編である『続日本紀』の全文を読んでいくのでは膨大な時間がかかりますので、講師が各巻から適宜数ケ条の記事を取り上げる抜き読みで進めます。今回は『続日本紀』40巻のうち、国分寺の詔発布や恭仁京遷都、藤原広嗣の乱などのある部分です。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 07/04 『続日本紀』巻十三を読む①天平十年条まで 阿倍内親王が立太子したが、女性の皇太子は初めてであり、立太子の意図についてはさまざまに臆測されている。新羅使が来朝し、日本と新羅との外交関係が大きく変更されようとしているが、ともに解決策が見出せない。かつての長屋王事件の密告者がした発言がもとで殺傷事件が起きて、そのコメントとして、長屋王の大逆罪は誣告であったと記された。
2 07/11 『続日本紀』巻十三を読む②天平十一年条まで 諸国の郡司の定員を減らし、正税出挙の利子を免除し、さらに兵士の徴発も停止し、天然痘からの社会全体の立ち直りに努めている。そんななか、久米若売の姦通事件がおこり、貴族社会の不祥事が明るみに出る。一方で、遣唐使の乗った船が難破し、帰国まで艱難辛苦の思いをした話が掲載されている。
3 07/18 『続日本紀』巻十三を読む③天平十二年九月条まで 天然痘の流行に為政者としての責任を感じた聖武天皇は、諸国に七重塔の建立を指示し、仏教による国家鎮護の施策に傾いていく。しかしおりもおり、聖武天皇の外戚として執政を助けてくれるはずの藤原氏から批判ののろしがあがり、大宰府に左遷した広嗣が聖武天皇を非難して軍乱を起こした。
4 07/25 『続日本紀』巻十三を読む④天平十二年十二月条まで 藤原広嗣の乱に対応し、政府は大野東人を派遣して討伐に当たらせた。その戦いの一部始終が語られ、広嗣の滅亡のさまが描かれている。反乱を鎮めるために全力を尽くしているのに、聖武天皇は平城京から脱出し、「五年間の彷徨」といわれる東国への旅に出立する。
5 08/01 『続日本紀』巻十四を読む①天平十三年六月条まで 都は平城京から恭仁京に移転したが、建築は思うように運ばず、朝賀の式もまともに行えなかった。広嗣の乱を藤原氏として謝罪し、光明皇后は父・不比等からの封戸五千戸を分割し、国分寺建設の費用に拠出することとした。聖武天皇は天然痘の流行・広嗣の乱などをうけて、従来の施策を纏めて「国分寺建立の詔」を発布した。
6 08/22 『続日本紀』巻十四を読む②天平十三年十二月条まで 恭仁京の建設工事が本格化し、畿内諸国から役夫5500人が徴発されることとなり、人々にとってはあたらしい困難が生じたのか、それともこれが利益を与えているものか。どう評価するか、議論が分かれる。ともあれ、こうして恭仁京が新しい都と宣言された。
7 08/29 『続日本紀』巻十四を読む③天平十四年条まで 大宰府に来た新羅使を放還すると、遣新羅使も受け容れられず、日羅の外交関係は事実上途絶する。国内では聖武天皇が金光明最勝王経を筆写して国分寺に納入する作業が始まった。しかしさらに天皇は近江紫香楽に離宮を造営しはじめ、そこへの道も開くこととなった。また天然痘の影響か、従来動かさなかった班田を全面的にやり直すことの指示がなされた。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆教材となる漢文のテキストには新訂増補国史大系本を用い、そのコピーを配付します。訳している時間がとれない場合は、現代語訳されている資料も併用します。その他の参考書籍は、初回の講座でご紹介します。書き下しなどのある書籍を必要と思われる方は、適宜ご携行下さい。

講師紹介

松尾 光
元早稲田大学講師、奈良県立万葉文化館名誉研究員
1948年東京都生まれ。学習院大学大学院博士課程単位修了。博士(史学)。高岡市万葉歴史館主任研究員・姫路文学館学芸課長・万葉古代学研究所副所長など歴任。兼任で鶴見大学・中央大学・早稲田大学非常勤講師を務めた。日本古代史専攻。単著18冊。最近作は『飛鳥奈良時代史の研究』『古代政治史の死角』(花鳥社)。
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