ジャンル 人間の探求
早稲田校
最も重要な仏典を読む 中世神道論から近世仏教篇
正木 晃(宗教学者)

曜日 | 水曜日 |
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時間 | 13:10~14:40 |
日程 |
全10回
・04月02日 ~
06月11日 (日程詳細) 04/02, 04/09, 04/16, 04/23, 05/07, 05/14, 05/21, 05/28, 06/04, 06/11 |
コード | 110513 |
定員 | 36名 |
単位数 | 2 |
会員価格 | 受講料 ¥ 29,700 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 34,155 |
目標
・中世から近世への過渡期に、日本人の精神世界に何が起こったのか、学びます。
・信頼できる文献を引用し、正確な知識を提供します。
講義概要
宗教の時代と言われる中世から戦国時代をへて、世俗化が進み始めた近世初頭に、日本人の精神世界に何が起こったのかを学びます。この時期は仏と神の関係に変化が見られます。それまで仏に圧倒されがちだった日本の神々が自己主張し始めたのです。そこでまず、中世に書かれた神道書に目を通します。興味深いのは神道書の制作に仏教僧が関与していた事実です。次いで近世初頭の仏教界を代表する書物をひもときます。この時期になると禅宗、それも中世の五山のような権力と結びついた権威主義的な禅宗ではなく、庶民に寄り添う禅宗が台頭してきます。また新来のキリスト教(キリシタン)に対する日本の宗教界の動向にも注目します。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 04/02 | 天地麗気記 | 天地開闢、つまり天地の創造と神々の出現を、空海を祖とする真言密教の理論を用いて解説しています。胎蔵と金剛界から構成される両部の理論から、神と神の関係、神と仏の関係を位置付ける「両部神道」の著作です。 |
2 | 04/09 | 類聚神祇本源 | 天皇家の祖先神(天照・豊受)を祀る伊勢神宮で発達した「伊勢神道」の教説を集大成しています。伊勢神宮の神官を歴代にわたりつとめてきた度会家の伝承、すなわち「度会神道」を代表する著作です。神道書のみならず、仏教書や儒教書まで引用して、主に「清浄」の観念を論じています。 |
3 | 04/16 | 諸神本懐集 | 浄土真宗の祖となった親鸞の五代目の孫にあたる存覚が、鎌倉仏教の立場から神道を解説した著作です。門徒(浄土真宗の信者)が持っていた伝統的な神信仰と、浄土真宗の教義を接続しようとしています。 |
4 | 04/23 | 唯一神道名法要集 | 中世神道の到達点を語る著作です。京都で生まれた「吉田神道」を大成した吉田兼倶によって書かれ、混乱していた神道界の統一をもくろんでいます。内容は複雑怪奇ですが、後世への影響は絶大です。 |
5 | 05/07 | 鉄炮記+ルイス・フロイス『日本史』 | 鉄炮記は日本に初めて鉄砲が渡来したいきさつを記した書物です。読むと、真言宗や日蓮宗(法華宗)が関与していた事実が明らかになります。ルイス・フロイス『日本史』はキリスト教を布教するために来日した宣教師の報告書です。読むと、かなり強引なことも、また暴力的なことも行われていた布教の実態がよくわかります。 |
6 | 05/14 | どちりなきりしたん | カトリック教会が戦国時代の日本にキリスト教を布教するにあたり、翻訳して出版した教理問答集で、キリシタンの信仰を理解するうえで、最も重要な文献です。わかりやすい俗文体で、しかも平仮名でつづられています。 |
7 | 05/21 | はびあん『妙貞問答』 | はびあん(実名は不明)は禅僧からイエズス会の修道士となり、一時期、キリスト教の布教に熱心だった人物です。この書物は上流階級の女性を対象に、仏教を批判しつつ、キリスト教の教理をわかりやすく説いています。 |
8 | 05/28 | はびあん『破提宇子』 | はびあんは禅僧からイエズス会の修道士となりましたが、やがて棄教し、一転してキリスト教弾圧に協力しました。この著作は棄教後にキリスト教を批判した書物です。 |
9 | 06/04 | 鈴木正三『商人日用』『農人日用』『職人日用』 | 鈴木正三は四〇歳で徳川家の親衛隊をやめ、曹洞宗の僧侶になった人物です。庶民のために仏法をやさしく説き、労働こそ悟りへの道と教えて、日本人の労働観・宗教観に多大の影響を残しました。 |
10 | 06/11 | 鈴木正三『驢鞍橋』 | 庶民への仏法布教につとめた鈴木正三の主著です。曹洞宗の僧侶でありながら、坐禅しているだけでは深い悟りは得られず、労働こそ悟りへの道と説いています。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆できるかぎり丁寧にわかりやすく、解説します。
講師紹介
- 正木 晃
- 宗教学者
- 1953年、神奈川県小田原市生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。専門は宗教学(日本仏教・チベット仏教)。文献研究に留まらず、現地調査を実施しチベット・ヒマラヤ地域の調査は20回に及ぶ。高度でありながら誰でも理解できる仏教学を志向。著作は『「ほとけ」論』『現代日本語訳 法華経』など多数。