ジャンル 世界を知る

早稲田校

英国紅茶芸術考 イギリスにおける「茶」のシンボリズム

  • 春講座

齊藤 貴子(早稲田大学・上智大学大学院講師)

曜日 火曜日
時間 15:05~16:35
日程 全9回 ・04月08日 ~ 06月17日
(日程詳細)
04/08, 04/15, 04/22, 05/13, 05/20, 05/27, 06/03, 06/10, 06/17
コード 110303
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 26,730
ビジター価格 受講料 ¥ 30,739

目標

・イギリスの歴史文化を広く深く学ぶ。
・文学や絵画などイギリスの芸術はもちろん、政治および経済の分野においても看過できない「茶」の重要性を知る。
・喫茶という日常的かつ普遍的な営み、一杯の紅茶という身近な飲み物を通じて、イギリスの美の日常性を理解する。

講義概要

イギリスといえば「紅茶の国」。コーヒーとほぼ同時期の17世紀にイギリスにもたらされた「茶」が、やがてコーヒーを凌駕し国民的飲料となっていった理由の1つには「美」との不可分性があげられます。それこそはコーヒーの流行発信地であった「コーヒーハウス」に決定的に欠けていたものであり、イギリスが紅茶の国となっていった経緯は、茶を飲む人びとの尽きせぬ美への憧れ、様々なレベルにおける美の追求の歴史そのものです。本講座では文学・絵画等の芸術や種々の資料を通じてイギリス歴史文化における茶の存在意義を多角的に再認識するとともに、21世紀現在の紅茶文化を伝統の延長線上に存在する「日常の芸術」として再考していきます。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 04/08 イントロダクション:お茶の歴史の「落とし穴」 イギリスに初めて紅茶がもたらされたのは17世紀。したがって、それ以前の16世紀の芸術には紅茶はいっさい登場しません。当然といえば当然のこの事実が、イギリスの芸術、とくに長い歴史と伝統を誇るイギリス文学においていかに「不都合な真実」であるかを具体的に検証し、そこから得られる諸々の意外な発見を楽しみたいと思います。
2 04/15 海と船と茶のある風景① 東洋貿易の最重要品目であった「茶」と切っても切り離せないのが「海」と「船」。東洋貿易の主たる担い手であった東インド会社をはじめとして、密輸や難破等の事件事故など、まずは海路での輸入に頼らざるを得なかった茶にまつわる諸々の歴史的事実を詳しくご紹介します。
3 04/22 海と船と茶のある風景② イギリスの海と船と茶の関係を語るうえで欠かせないのが、優美なティー・クリッパー船。主として19世紀後半、お茶の輸送に大活躍した快速帆船です。その代表格である1869年建造の3本マスト帆船「カティー・サーク」号に注目し、お茶専用輸送船という今はなき特殊な船舶の実用性と象徴性について、様々な文学や絵画に目配りしながら考えてみたいと思います。
4 05/13 コーヒーと紅茶をわかつもの 紅茶より一歩先んじてイギリスに登場したコーヒーは、17・18世紀のロンドンのシティに集中して存在していたコーヒーハウスで男性を中心に飲まれていたため、彼らが従事していた新聞・雑誌・日記等のジャーナリズム上で頻繁に言及されており、文字資料に事欠くことがありません。しかしながら、絵画等の視覚資料となると、紅茶にくらべて極端に数が少なく、また資料的価値はあっても芸術的価値があるとはいいがたいものも……。さまざまな視覚資料をつうじて、コーヒーと紅茶のあいだに介在する問題を明らかにし、結果的に二者をわかつことになった喫茶空間における「美」のありようについて思いを巡らせます。
5 05/20 紅茶をいろどる「美」のかたち① 実のところ、紅茶は初めロンドンのコーヒーハウスで売り出され、つまりは市井で飲まれ始めましたが、その高価さゆえにもっぱら王侯貴族等の上流階級によって愛飲されていたのも事実。したがって英国紅茶の歴史の初期にあたる17・18世紀の諸々の「茶道具」には贅を尽くしたものが数多く、それ自体に美術品としての優れた価値があります。ロンドンの有名美術館・博物館の所蔵品の中から知る人ぞ知るアイテムをいくつかピックアップし、詳しく解説いたします。
6 05/27 紅茶をいろどる「美」のかたち② 様々な分野で一般の市民が力をもちはじめたイギリスの18世紀は、貴賤貧富を問わず広く紅茶が普及し、紅茶の大衆化がはじまった時代でもあります。それをもっともわかりやすく証明し、今に伝えているのは、18世紀イギリスの国民的画家であったウィリアム・ホガースの絵画ないし版画でしょう。ロンドンの一市民として生まれ育ったホガースの「絵の中の紅茶」が放つ強烈なメッセージを読み解きます。
7 06/03 紅茶をいろどる「美」のかたち③ 紅茶の世界をいろどる美しいものといったら、筆頭格はやはり「器」です。実際、ウェッジウッドにスポード、ミントン、エインズレイにロイヤル・ウースターと、「紅茶の国」イギリスの名陶を数え上げればそれこそ切りがありません。しかしながら、これら陶磁器メーカーが登場して、コーヒーや紅茶用の器をつくりはじめたのは18世紀のことであり、今では当たり前の白くなめらかな茶器の歴史は、少なくともヨーロッパでは17世紀にはじまる茶への強い憧憬によって切り拓かれた面があります。英国紅茶「前史」としての西洋白磁の歴史を、まずはウェッジウッド社史にそって概観します。
8 06/10 紅茶をめぐる物語① 紅茶を飲む習慣が広く世間一般に広まり、お茶を飲むことがイギリス人にとって欠かせない日常のひとコマとなった近代以降、イギリスの文学や絵画は「紅茶をめぐる物語」で溢れかえるようになりました。事実、イギリス文学史にその名を刻んだ詩人や作家で、紅茶にまったく見向きもせず、その作品世界でいっさい触れもせずにいた人物のほうが珍しいくらいです。近代イギリスに登場した「紅茶をめぐる物語」の具体的な一例として、今やイギリス文学の古典となった女性作家ジェーン・オースティンの小説を取り上げたいと思います。
9 06/17 紅茶をめぐる物語② 今やイギリス文学の古典となった女性作家といえば、オースティンもさることながら、ブロンテ姉妹を欠かすことはできません。彼女たちの代表作にも、もれなく紅茶を飲むシーンが登場し、そのシーンをつぶさに観察することで紅茶の飲み方に反映される「ある特徴」があることに気づきます。
イギリスの文芸における「紅茶を飲む風景」から見えてくるもの――それをしっかりとお伝えします。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆3/7(金) 13:30より本講座の無料体験講座を早稲田校で実施します。
◆無料体験講座お申し込みはこちらから。
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/65480/

講師紹介

齊藤 貴子
早稲田大学・上智大学大学院講師
早稲田大学教育学部英語英文学科卒、同大学院教育学研究科博士課程修了後、助手を経て現職。専門は近代イギリス文学・文化。主として詩と美術の相関を研究。『ラファエル前派の世界』(東京書籍)、『英国ロマン派女性詩選』(国文社)、『肖像画で読み解くイギリス史』(PHP研究所)、『イギリス恋愛詞華集―この瞬間を永遠に―』(研究社)など著訳書多数。
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