ジャンル 日本の歴史と文化
早稲田校
【対面+オンラインのハイブリッド】邪馬台国と記紀神話
水林 彪(早稲田大学・東京都立大学名誉教授)

曜日 | 水曜日 |
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時間 | 15:05~16:35 |
日程 |
全7回
・04月02日 ~
06月11日 (日程詳細) 04/02, 04/09, 04/16, 05/14, 05/21, 06/04, 06/11 |
コード | 110213 |
定員 | 70名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 20,790 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 23,908 |
目標
・邪馬台国およびこれと関連の深い狗奴国の所在地について、文献・考古の両面から考える
・邪馬台国・狗奴国戦争を3世紀東アジア史の中に位置付けて理解する
・いわゆる記紀神話(神武〜景行・ヤマトタケルを含む)の基礎には史実があり、記紀神話はそのデフォルメされた表現であることを理解する
講義概要
(1)前半は邪馬台国論、(2)後半は記紀神話論とする。(1)前半では、①まず、議論の多い邪馬台国の所在地問題に、狗奴国のそれも視野におさめて、文献・考古の両面から迫る。文献史料批判の徹底、考古資料の歴史学的解釈の探究をめざす。②以上をふまえて、魏志倭人伝が記す列島3世紀は、公孫氏・魏の支配下にある九州北部・瀬戸内・畿内の邪馬台国連合と山陰・北陸の狗奴国連合の内乱の世紀であったことをのべる。(2)後半では、①記紀における神武東征・四道将軍・景行=ヤマトタケル遠征物語は、3世紀史のデフォルメされた表現であったこと、②出雲神話もまた、3世紀史の神話化された物語であったことを論じる。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 04/02 | 邪馬台国と狗奴国の所在地:列島3世紀史論の前提問題 | ①『魏志』倭人伝および『後漢書』倭伝の史料批判を行うことを通じて、文献史料から、邪馬台国と狗奴国の所在地を絞り込む。②以上の推論と考古資料を突き合わせ、両者を総合的に考察して、邪馬台国の所在地は奈良県纏向を中心とする地域であり、狗奴国のそれは出雲平野であったことを述べる。 |
2 | 04/09 | 漢帝国衰退・諸地域割拠時代の列島社会(2世紀後半) | 2世紀後半に入り、300年の歴史をほこるさしもの漢帝国も衰退過程にはいり、このことに連動して、漢帝国の支配下にあった筑紫政権(漢帝国の出先機関たる伊都国の支配下にあった九州北部政権)も衰退して、列島は諸地域割拠の時代となった。九州北部首長層の勢力範囲は縮減し、山陰・北陸、瀬戸内、近畿の3地域がそれぞれの仕方で発展した。この中でも、ひときわ力をつけてきたのが、四隅突出型墳丘墓をシンボルとする、出雲(狗奴国)および山陰・北陸の首長たちが形成する政治社会(狗奴国連合)であった。 |
3 | 04/16 | 公孫氏・曹魏の列島支配と邪馬台国連合vs狗奴国連合戦争(3世紀) | 漢帝国の衰退によって遼西・遼東地域に独立王国を築くこととなった公孫氏は東夷支配に乗り出し、列島はふたたび、中華帝国の支配をうけることとなった。九州北部勢力、瀬戸内勢力がその軍門に下る。しかし、出雲を中心とする狗奴国連合は、帝国の支配を潔しとせず、列島3世紀史は、中華帝国およびその支配下にある九州北部・瀬戸内首長連合と、独立自尊の狗奴国首長連合との内乱の歴史となった。この過程において、対狗奴国連合戦争勝利という軍事的合目的性の観点から、筑紫政権の東遷・東征が行われた(邪馬台倭国の成立)。2世紀末に開始された内乱は約100年つづき、最終的には、邪馬台倭国の勝利に帰結した。 |
4 | 05/14 | 邪馬台国(前方後円墳国家)の構造:正当秩序と権力秩序 | 一個の支配秩序は、必ず、支配の正当化根拠を必要とする。軍事をはじめとする物理的強制力だけにたよる支配は強盗の所業と変わるところがない。支配はなんらかの権威に正当化されてはじめて、長期持続が可能な正当的支配となる。3世紀の列島国家の場合は、前方後円墳に象徴される何らかのカミ観念が正当性の根源に位置していた。卑弥呼の「鬼神の道」はまさにこのことにかかわっていたと推定される。 |
5 | 05/21 | 記紀神話論(1):神武・崇神・景行(ヤマトタケル)物語論 | 記紀がそれぞれの仕方で描いた神武・崇神・景行(ヤマトタケル)の物語は、列島3世紀内乱史のデフォルメされた表現であった。神武東征は、筑紫政権が、吉備勢力をまきこみつつ、畿内に本拠を移す東遷史・畿内制圧戦争史を下敷きとしている。崇神四道将軍物語は、邪馬台国連合の対狗奴国連合(山陰・北陸勢力)戦争の神話的表現であり、景行=ヤマトタケルの中部南部九州・関東東北地方遠征物語は、同地域に蟠踞する縄文人に対する制圧戦争の物語的表現であった。 |
6 | 06/04 | 記紀神話論(2):出雲神話論 | 記紀の出雲神話もまた、3世紀内乱史の独特の神話的表現であった。記紀において、出雲神話は全く相対立する理念によって描かれているが、それは、記紀が成立した8世紀初頭時代の国家構想の対立を示すとともに(天智系と天武系の対立)、それと不可分の形で存在する、列島3世紀内乱史に対する8世紀中央支配層による評価(歴史意識)の対立でもあった。 |
7 | 06/11 | 補遺とまとめ | 本講義の最終回では、全6回の講義をまとめつつ、論じ残したことや、聴講者の質問への応答などを行う。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆幾年度にもわたり行った講師の倭国の起源史(2世紀までの列島史)の続編として学べる内容です。「邪馬台国と記紀神話」(3世紀史)講義にとって不可欠の2世紀史までの重要問題は随時、講義で言及しますので、初めての方でも安心してご受講ください。
◆本講座は対面でもオンラインでも受講できるハイブリッド形式の講座です。対面・オンラインのご都合のよい形式でご受講いただけます。
◆講師は早稲田校教室で講義し、オンラインで同時配信いたします。
◆対面で受講するときは、「受講証兼教室案内」に記載された教室へお越しください。「受講証兼教室案内」は開講が確定してから送付されます。
◆オンラインで受講するときは、マイページからご受講ください。
◆オンラインでの受講を予定している方は、お申込みの前に必ず「オンラインでのご受講にあたって」をご確認ください。
◆本講座の動画は、当該講座実施の翌々日(休業日を除く)17:30までに公開します。インターネット上で1週間のご視聴が可能です。視聴方法は、以下をご確認ください。
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講師紹介
- 水林 彪
- 早稲田大学・東京都立大学名誉教授
- 山形県生まれ。博士(法学、一橋大学)。専門は日本法制史、比較法社会史。東京都立大学、一橋大学、早稲田大学などで、日本法制史、比較法社会史を担当してきた。主要著作は、『封建制の再編と日本的社会の確立』(山川出版社)、『記紀神話と王権の祭り』(岩波書店)、『天皇制史論』(岩波書店)。