ジャンル 日本の歴史と文化

早稲田校

江戸時代の経世済民論―道徳・利得・国益

  • 冬講座

川口 浩(早稲田大学名誉教授、元早稲田大学野球部部長)

曜日 金曜日
時間 10:40~12:10
日程 全6回 ・01月10日 ~ 02月14日
(日程詳細)
01/10, 01/17, 01/24, 01/31, 02/07, 02/14
コード 140257
定員 26名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 17,820
ビジター価格 受講料 ¥ 20,493

目標

・17〜19世紀における経世済民論を歴史的にたどる。
・各時期の経世家が問題視した事象とそれに対する解決策を追う。

講義概要

「経世済民」とは世を治め民を救うという意味であり、その具体的な政治・政策(politics and policy)的提言が経世済民論である。江戸時代における「経済」という語は経世済民の略語であり、その語義は経世済民と同じである。しかし、現代語の経済は economy であり、そこでは政治・政策という意味合いは稀薄である。つまり、江戸時代のある時期以降において、ケイザイという語に変化が起こり、新たな意味が付け加わり、それに伴って元々の意味は後景に退いていったと思われる。江戸時代における経世済民論の歴史的展開過程をたどると、その得られたものと失われたものを確認できるかも知れない。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 01/10 外来儒学と石高制 第2回以降の前提して、①江戸時代の思想界に影響を及ぼした儒学(儒教)、②江戸時代の政治経済システムの基軸である石高制について、その概略を説明します。
2 01/17 熊沢蕃山(1619-91) 蕃山は陽明学・朱子学を信奉した儒者であり、かつ、岡山藩で10年間藩政の中枢にいた政策者でもあった。彼は社会全体の困窮を解決し、儒学の理想である道徳的社会を実現すべく、独自の経世済民論(経世論)を構築した。
3 01/24 荻生徂徠(1666-1728) 徂徠は朱子学を批判し、古学派儒学を確立し、江戸時代思想界に大きな影響を及ぼした。彼の経世の書『政談』は、第8代将軍徳川吉宗(1684-1751)に献呈されたものと言われている。
4 01/31 太宰春台(1680-1747)、海保青陵(1755-1817) 春台は徂徠の高弟であり、みずから師の正統な後継者を自認していた。しかし、彼の経世論は師説から逸脱していた。彼は言わば経世論の歴史的曲がり角に位置していたように見える。その曲がり角を完全に通り越してしまったのが、徂徠の孫弟子世代の青陵であり、彼は利得を当然の目標とした。この頃「国益」という新語が登場した。
5 02/07 本居宣長(1730-1801)、本多利明(1743-1821) 国学を大成した宣長は、外来思想である儒学・仏教を排撃し、日本の独自性・優越性を高唱した。また、こうした日本観の浸透と並行して、華夷秩序という国際観の説得性が減退していった。利明は、かかる日本像=世界像の変様の中で、海外雄飛を含む経世論を展開した。
6 02/14 佐藤信淵(1769-1850)、横井小楠(1809-69) 「鎖国」という19世紀の新語は、西洋諸国との外交・貿易をめぐる議論の高まりを象徴するものであった。信淵は海外進出を主張するとともに、徳川体制に代わる新国家をも構想した。また、小楠は朱子学の道徳理念を拠り所として欧米との交際を説いた。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合の補講日は2月21日(金)を予定しています。

講師紹介

川口 浩
早稲田大学名誉教授、元早稲田大学野球部部長
1951年生まれ。専攻は日本経済思想史。早稲田大学政治経済学部で日本経済思想史、日本経済史を担当。早稲田大学野球部長、早稲田中学校・高等学校校長、社会経済史学会常任理事などを務めた。著書は『江戸時代の経済思想-「経済主体」の生成-』(単著、勁草書房、1992年)、『日本の経済思想世界-「十九世紀」の企業者・政策者・知識人-』(編著、日本経済評論社、2004年)、『日本経済思想史 江戸から昭和』(共著、勁草書房、2015年)、A History of Economic Thought in Japan : 1600-1945 (共著、London: Bloomsbury、2022年)、『熊沢蕃山 まづしくはあれども康寧の福』(単著、ミネルヴァ書房、2023年)など。
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