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オンデマンド

【オンデマンド】世阿弥を読む―現代能と世阿弥時代の能 世阿弥の芸談『申楽談儀』

  • 春講座

竹本 幹夫(早稲田大学演劇博物館顧問、早稲田大学名誉教授)

コード 910406
定員 −名
単位数
会員価格 受講料 ¥ 19,800
ビジター価格 受講料 ¥ 19,800

目標

・能楽を深く理解するために、能の大成者・世阿弥(1363〜?)の芸談『世子六十以後申楽談儀』(略称『申楽談儀』)を通読します。
・世阿弥時代の能を理解することを通じて、現代の能楽をさらに深く知ることを目指します。
・『申楽談儀』の記事と関連する世阿弥のその他の能楽論を幅広く読む作業を通じて、同時代の言葉の面白さに接することも狙いの一つです。

講義概要

『申楽談儀』は、能の大成者であった世阿弥の息男・七郎元能による、世阿弥の芸談の筆録です。隠居の身ながら後進の指導に余念のなかった世阿弥が説いた能芸の真髄です。世阿弥に直接会って聞くかのような迫真力と豊かな具体性を備えた、我が国古典文学を代表する、魅力的な一篇です。本講座は、世阿弥の能作論を振り返ることから、本書の最後までを読み通します。勧進能と〈翁〉の故実、能の役々、名人と田舎芸の実例、能面の名品、世阿弥家をはじめとする能役者家系、能の故実と奇瑞等の雑説、結崎座規則、奥書というのが、その中心的内容です。

各回の講義予定

講座内容
1 導入:『申楽談儀』の能作論 2023年度春学期で通読した『申楽談儀』第14条〜第16条までの内、省説した部分を中心に振り返ります。合わせて能についての基礎的な知識も紹介します。
2 第十七条:勧進の桟敷数・〈翁〉故実 第十七条は勧進能故実と〈翁〉故実に二大別される内容で、きわめて難解ながら重要な一条ですので、とくに丁寧に読んでいきます。今回は前半のみを読み進めます。勧進能と呼ばれる大規模興行の実際、当時の晴れの舞台の舞台構造と約束事を知る事が出来る好資料です。また〈翁〉は多くの説が口伝の形で伝承されてきたこともあり、文献資料が余り残っておらず、現代の能の中でも難解なテーマの一つです。本書の〈翁〉故実は、〈翁〉に関する最古のまとまった資料として、多くの知見に溢れた一条です。その一つ一つを分析し、読み解いていきます。
3 第十八条:能の役々 能の扮装の色々とその他の心得に関する一条です。小さな心得の数々が列記されますが、その一つ一つが現代の能と大きく異なっており、各記事を見ながら世阿弥時代の能と現代能との共通点と相違点とを確認します。
4 第十九条・二十条・二十一条:面の額の長きこと・上手の役者・下手の役者 長短取り混ぜた記事が連続します。第十九条はサイズに合わず長すぎる面の額部分を切ること、第二十条は上手・名人の役者の心意気、第二十一条は金春権守・金剛権守という観阿弥時代の古人を中心にした下手な役者の心性の様々を説く内容です。それぞれで個性的で面白い章段で、具体性に富んでいるため、能の歴史資料としても第一級の資料性を持つ内容です。
5 第二十二条:面のこと 観世座に伝わる名物面の数々を紹介する一条です。世阿弥時代の古い能面のことを知りうる唯一で最古の資料です。能面に関する知識の出発点として、きわめて重要な内容です。
6 第二十三条:猿楽諸座の歴史 大和猿楽四座の由緒に始まり、近江猿楽や丹波猿楽の由緒、名人の芸名にまつわる名誉の数々に至る、これも猿楽座の歴史をたどる上での第一級資料です。世阿弥の家系を知ることも出来ます。
7 第二十四条・二十五条・二十六条・二十七条・二十八条:世阿弥に関わる霊夢の数々と田楽・松囃子・薪能についての故実の様々 世阿弥に関わる奇瑞をまとめた第二十四条と、その他の芸能の起源にまつわるエピソードなどを連ねた条々です。短いながらも同時代の歴史史料との関連性をたどることが出来る興味深い記事が続きます。
8 第二十九条・三十条・三十一条:申楽常住の歩き・名人に跡なきこと・神事をなおざりにせぬこと 第二十九条からは原本が焼失して現存しない活字本に基づく本文となります。翻刻の誤植等も想定しながら正しい読みを導き出す作業を伴い、短いながらも中々読み応えのある内容となります。猿楽者の日常生活上の心得、能の教育に段階を踏むべきこと、神事猿楽に参勤する者の心得の三ヶ条は、いずれも当時の能役者の実態を教えてくれる内容です。『申楽談儀』の本論はここまでとなります。
9 付録:結崎座規 二月の興福寺薪猿楽、十月の多武峰妙楽寺(現談山神社)八講猿楽、十一月の春日若宮御祭の大和三大神事猿楽の参勤規定で、結崎座とは観世座と共にこの三大神事に参勤して、〈翁〉を上演する特殊な座のことです。これと同様の職務を専らとした座に、円満井座(金春座と一体)、外山座(宝生座と一体であったか)、坂戸座(金剛座と一体であったか)があり、これらは大和猿楽四座(よざ)と呼ばれる由緒ある座でした。本条の他には、円満井座の座規にやはり後代の転写本ながら、金春禅竹時代の『円満井壁書』と呼ばれる文書が残っているだけで、外山座・坂戸座の座規は散佚して残っていません。結崎座座規は当時の神事参勤の実際を示す、きわめて重要な資料です。
10 奥書・元能追記二ヶ条・後人追記二ヶ条・別本聞書 まとめとして、本書の奥書以下の補足的条々を読みます。『別本聞書』とは『申楽談儀』に採録されなかった聞書のメモで、『申楽談儀』の本論とも関わる、興味深い内容です。その他の条々も、重要な歴史的意味を持つ具体的な記事ばかりです。これらを読むことでまとめに代えます。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆視聴期間は一般申込開始(2024/03/05)から学期終了翌月末(2024/07/31)までになります。一般申込開始(2024/03/05)以降はお申し込みいただけましたら視聴可能になります。
◆この講座は
 2023年度 秋期 「世阿弥を読む―現代能と世阿弥時代の能」 (09/29〜12/08 金曜日、全10回)
 で開講した講座のアーカイブ講座になります。
◆途中映像音声の乱れるところがありますがご了承ください。
◆オンデマンド講座のため講義内容に関する質疑は受付けいたしかねます。あらかじめご了承お願いいたします。

講師紹介

竹本 幹夫
早稲田大学演劇博物館顧問、早稲田大学名誉教授
博士(文学)。専門は日本中世文学、とくに能。1980年より実践女子大学文学部専任講師、のち助教授。1987年より早稲田大学文学部助教授のち教授(〜2019)。2004年、同大演劇博物館館長(〜2012)。2019年より早稲田大学名誉教授。主著に『観阿弥・世阿弥時代の能楽』(明治書院1999)、『風姿花伝・三道』(角川書店2009)他。
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