ジャンル 芸術の世界

オンデマンド

【オンデマンド】8人のエドワード 王たちの最後の華やぎ

  • 春講座

齊藤 貴子(早稲田大学・上智大学大学院講師)

コード 910404
定員 −名
単位数
会員価格 受講料 ¥ 11,880
ビジター価格 受講料 ¥ 11,880

目標

・歴代の「エドワード王」たちの治世をつうじてイギリスの歴史を知る。
・20世紀イギリス社会を芸術的観点からも考察する。
・イギリスを例に君主制の歴史的意義と将来的展望についても可能なかぎり理解と考察を深める。

講義概要

中世から20世紀に至るまで、イギリスにはこれまで全部で8人の「エドワード」と名の付く王が登場しています。そして代々のエドワード王をめぐっては、夭折や逆縁に非業の死、四面楚歌の果ての廃位など、ひどく哀しい出来事や国を揺るがすような一大事が起こってきました。本講座では、8人のエドワードたちがいた時代をそれぞれ同時代の年代記や美術工芸、後世の肖像画や建築等の芸術をつうじて、かつてない視点と角度から学んでいきます。(今回は20世紀に登場したエドワード7世とエドワード8世を取り上げ、彼らふたりがイギリス現代史にそれぞれ残した足跡と影響について考えたいと思います)。

各回の講義予定

講座内容
1 長い19世紀の終焉:ヴィクトリアンからエドワーディアンへ 19世紀のイギリスに63年あまり君臨したヴィクトリア女王が崩御したのは1901年。この20世紀の始まりとともに訪れたのがエドワード7世の時代であり、イギリスに「エドワード」という名の王が登場したのは16世紀テューダー王朝の幼君エドワード6世以来、実に約350年ぶりのこと。そしてエドワード7世は、すでに59歳になっていました。もはや「老王」と呼ばれてもおかしくない新国王の登場以前に長々と続いた「ヴィクトリアン」と呼ばれる19世紀の女王の時代を振り返り、新時代たる20世紀「エドワーディアン」の始まりからすでに漂っていたある種不吉で不穏なムードを検証したいと思います。
2 エドワード7世① 老境にさしかかってから即位したエドワード7世の在位期間は当然ながらさほど長くはなく、1901年から1910年までの約十年間。しかし、エドワーディアンと呼ばれるこの十年ないし第一次世界大戦勃発(1914)までの十数年間は、イギリス芸術文化の真の絶頂期にして爛熟期として知られています。服飾や宝飾の世界でも「エドワーディアン・スタイル」として今日なお根強い人気と知名度を誇るイギリス歴史文化最後の華やぎ、エドワード7世の時代の類いまれなる「洗練」をご紹介します。
3 エドワード7世② エドワード7世の短くも華やかな治世は、大陸方面からみれば正しく「ベル・エポック」に相当します。実のところ政治体制の不安定と表裏一体だったベル・エポック同様、20世紀エドワーディアンもまた政治外交面では大きな転換期にさしかかっていた時代であり、そのひとつの象徴ともいえるのが日英同盟(1902)の締結です。ヨーロッパが未曾有の混迷期へと向かう時代にめぐり合わせたエドワード7世の治世を、イギリスと日本のただならぬ縁――主として20世紀の日英関係から振り返ります。
4 エドワード8世① エドワーディアンと呼ばれるエドワード7世の時代が終わった後に始まるのが、「戦争の世紀」としての20世紀であり第一次世界大戦(1914〜18)と続く第二次世界大戦(1939〜45)です。そして、この二つの大戦の戦間期にあたる1936年に即位し、わずか一年足らずで退位したのが8人目のエドワード、後に「ウィンザー公」として知られることになるエドワード8世にほかなりません。戦間期という剣呑な時代にあって、まずは既定路線としての8人目のエドワードが王になるまでの経緯を、プリンス・オブ・ウェールズとして来日(1922)したエピソードも踏まえながら辿ります。
5 エドワード8世② エドワード8世が自身の結婚問題解決のために在位期間わずか一年足らずで退位した出来事は、俗に「王冠を懸けた恋」として知られています。が、世界中がため息をつくようなロマンティックなエピソードとは裏腹に、彼じしんの国王としての資質を問う声が前々からあったのも事実です。実際、全てをなげうち退位してウィンザー公爵となった後のエドワード8世は、王室とも事実上の絶縁状態となり、国外生活を強いられ、次第にロマンティックな幸福とはかけ離れた暗い翳りを見せ始めます。やがてヨーロッパ現代史の暗部ともつながり物議をかもすことになった「王冠を懸けた恋」の顛末をご紹介します。
6 20世紀の王たちの最後の華やぎ イギリス芸術文化の爛熟期「エドワーディアン」として知られるエドワード7世の時代、そして戦争の世紀のはざまで輪をかけるように要らぬ騒動を巻き起こしたエドワード8世。「8人のエドワード」の最後を飾る20世紀前半に登場したふたりのエドワード王の時代は、良くも悪くもイギリスにおける国王の時代の最後の華やぎを示していたような気がしてなりません。後に続く20世紀後半は再びの女王の時代、言わずと知れたエリザベス2世の治世となり、70年という史上最長在位期間を誇るカリスマだった女王の崩御後、今日のイギリス王室は、どこか前世紀を彷彿とさせる様相を呈しています。20世紀の王たちの最後の華やぎと比較しつつ、恐らくここしばらくの間は憂い多きその行く末に思いを巡らします。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆視聴期間は一般申込開始(2024/03/05)から学期終了翌月末(2024/07/31)までになります。一般申込開始(2024/03/05)以降はお申し込みいただけましたら視聴可能になります。
◆この講座は
 2023年度 秋期 「8人のエドワード」 (09/27〜11/01 水曜日、全6回)
 で開講した講座のアーカイブ講座になります。
◆途中映像音声の乱れるところがありますがご了承ください。
◆オンデマンド講座のため講義内容に関する質疑は受付けいたしかねます。あらかじめご了承お願いいたします。

講師紹介

齊藤 貴子
早稲田大学・上智大学大学院講師
早稲田大学教育学部英語英文学科卒、同大学院教育学研究科博士課程修了後、助手を経て現職。専門は近代イギリス文学・文化。主として詩と美術の相関を研究。『ラファエル前派の世界』(東京書籍)、『英国ロマン派女性詩選』(国文社)、『肖像画で読み解くイギリス史』(PHP研究所)、『イギリス恋愛詞華集―この瞬間を永遠に―』(研究社)など著訳書多数。
  • 外国語 コースレベル選択の目安
  • 広報誌「早稲田の杜」
  • オープンカレッジ友の店