ジャンル 現代社会と科学

早稲田校

貨幣はどこから来てどこに行くのか

  • 春講座

岩村 充(早稲田大学名誉教授)

曜日 月曜日
時間 19:00~20:30
日程 全4回 ・05月13日 ~ 06月03日
(日程詳細)
05/13, 05/20, 05/27, 06/03
コード 110725
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 11,880
ビジター価格 受講料 ¥ 13,662

目標

・金銀銅貨などの実物貨幣制から金本位制そして管理通貨制に至る貨幣制度の歴史を概観し、私たちが常識と思っている中央銀行通貨制度が19世紀に始まる経済成長の産物であることを明らかにする。
・中央銀行通貨の価値源泉に関する考え方として勢いを得つつあるFTPL(物価水準の財政理論)と呼ばれる理論モデルを紹介し、その理論を応用することで現代の金融政策の手詰まりの原因を考える。
・限界が明らかになりつつある中央集権型通貨管理モデルに対するアンチテーゼとしての仮想通貨や地域通貨などの分散型通貨モデルの意義を考え、あわせて通貨にプラスまたはマイナスの金利を付することの意義と実現可能性を検討する。

講義概要

日本そして世界の金融政策が行き詰まっている。背景には、人々の期待さえ動かせば物価つまり貨幣価値を上げることも下げることもでき、つれて景気も自由に操れるはずという政策当局者の思い上がりがある。この講座では、通貨制度が金属貨幣から金本位制そして現代の管理通貨制へと「進化」してきた歴史を踏まえて、そうした思い上がりの欠陥を明らかにしつつ、貨幣にはなぜ価値があるのかという根源的な問いへの答えを探る。そして、仮想通貨に代表される分散コンピューティングの技術が作り出す新しい変化として、中央銀行による通貨発行独占の空洞化を展望し、あのハイエクが提唱した競争的通貨発行モデルの現代化を試みる。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 05/13 貨幣はどこから来たのか〜金属貨幣の時代から現代まで 貨幣とは何か、それはどこから来たのだろうか。この回は、貨幣の起源を説き起こすことから始めて、19世紀において中央銀行制度が成立する過程を振り返ったうえで、金本位制から固定為替相場制そして現代の変動相場制へと変遷してきた法定通貨の歴史を概観する。
2 05/20 行き詰まる金融政策〜成長の屈折と異次元緩和の教訓 現代の中央銀行制度は19世紀に始まる世界的な経済成長の時代のなかで普及した経緯がある。しかし、それは世界経済の成長ポテンシャルが屈折するとともに、その限界を迎えることを意味する。この回では、世界的な成長屈折現象が最も早く現れた日本で試みられた異次元緩和とも自称された量的緩和政策の結果を評価する。
3 05/27 貨幣価値はバブルかリアルか〜FTPLで解く現代の問題 異次元緩和政策が成果を上げられなかったのは、金融政策で物価つまり貨幣価値を自由自在に操れるという思い上がりがある。この回では、FTPL(物価水準の財政理論)と呼ばれる考え方の枠組みを用いて、なぜ異次元緩和が成果を得られなかったのかを明らかにし、あわせて貨幣に金利を付すことの意義に及ぶ。
4 06/03 貨幣はどこに行くのか〜競争的通貨発行の時代を展望する ビットコインを嚆矢とする分散管理型の仮想通貨の登場は、かつてフリードリヒ・A・ハイエクが提唱した競争的通貨発行の時代の到来を予感させる。この回は、相対化する中央銀行による通貨発行独占の行方を展望し、あわせてCBDCと称される中央銀行デジタル通貨の将来をも考える。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合の補講は6月10日(月)を予定しています。

講師紹介

岩村 充
早稲田大学名誉教授
東京都生まれ。1974年、東京大学卒業。日本銀行を経て1998年から2021年まで早稲田大学教授。2002年、早稲田大学博士。2021年、早稲田大学名誉教授。『国家・企業・通貨』(2020年、新潮選書)、『ポストコロナの資本主義』(2020年、日本経済新聞出版)など著書多数。

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