ジャンル 現代社会と科学
中野校
21世紀はいかなる時代か―リアルエコノミーvsシンボルエコノミー
水野 和夫(元法政大学教授、芸術文化観光専門職大学客員教授)
曜日 | 金曜日 |
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時間 | 13:10~14:40 |
日程 |
全6回
・05月10日 ~
06月14日 (日程詳細) 05/10, 05/17, 05/24, 05/31, 06/07, 06/14 |
コード | 310703 |
定員 | 24名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 17,820 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 20,493 |
目標
・シンボルエコノミーを象徴する株価や為替などを決定する要因を理解することができる
・リアルエコノミーがなぜ停滞しているかを理解することができる
・21世紀は16世紀から始まる近代とは異なる時代に入ったことを理解する
講義概要
1970年代に入って想定外の事象が相次いで起きている。たとえば、ニクソンショック、3年に一度生じては崩壊するバブル、ソビエト連邦解体、EU創設、9.11、ウクライナ・ロシア戦争、イスラエル・ハマス戦争などである。近代の最も大きな功績は中産階級の創出であるが、上位1%への所得と富の集中が19世紀末から20世紀初頭の水準にまで高まり、中産階級が危機に瀕している。ドル変動相場制移行後、シンボルエコノミ―が雇用と密接に結びついているリアルエコノミーを圧倒するようになった。リアルエコノミーを象徴するのが金利であって、21世紀になって利潤率と金利の乖離が顕著となった。21世紀は過去4世紀とは全く異なる時代となった。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 05/10 | なぜ想定外の事態が多発するのか | ニクソン大統領が金とリンクしていた不動のドルを浮動させたことは476年の西ローマ皇帝の廃位、そして1453年のコペルニクス革命に匹敵する。古代・中世・近代いずれも中心概念が動くと社会秩序が維持できなくなり、想定外の事象が起きる。こうした事態は少なくも1世紀単位で続き、ブルクハルトは「歴史の危機」と名付けている。 |
2 | 05/17 | 「不愉快な問題」とは何か | 20世紀は「大きな政府」で福祉国家を目指し、中産階級を創出した。米国は「大砲もバターも」政策とレーガノミクスで貿易赤字と財政赤字が巨額となり、政治的に赤字是正は困難となった。シンボルエコノミーへの移行が始まった。 |
3 | 05/24 | リアルエコノミーvs.シンボルエコノミー | リアルエコノミーとシンボルエコノミーは資本が有する二つの機能と結びついている。リアルエコノミーの資本は唯物論者の資本であり、GDPを生み出す機能がある。一方、シンボルエコノミーの資本は資金主義者の資本で、いつでも換金でき社会の新陳代謝を生み出す機能を有している。20世紀までは二つの資本はパラレルに動いていたが、21世紀に入って乖離が目立っている。 |
4 | 05/31 | なぜ成長戦略や異次元金融緩和政策が失敗したのか | 日本でリアルエコノミーの資本が増加しないのは、リアルエコノミーがミルら古典派経済学者がいう「定常状態」となったからである。21世紀になって日本のみならずG’7をはじめとして先進国が「定常状態」に入るであろうことを、英国中央銀行(BOE)が報告している。 |
5 | 06/07 | 自由と所有とは | 自由は所有の関数である。元来、所有の背後に隠されているものとは、死を遅らせることだった。所有物の代表は個人では個人金融資産であり、法人企業では内部留保金だ。21世紀になって資本家であるビリオネアは膨大な金融資産を保有するようになり、とくにトップ10人は一日1万ドルを消費にあてても全財産を使い切るまでに414年かかるまでに蓄積している。所有の範囲を逸脱しており、一部の人には自由が過剰となっている一方で、コロナパンデミックで多くの人びとは寿命を縮めて自由を失っている。 |
6 | 06/14 | 陸と海のたたかい | 近代秩序の崩壊によってヨーロッパと中東で「長い16世紀」と同様に陸の国と海の国のたたかいが始まっている。専制国家と民主国家のたたかいでもある。市場を通じて世界を経済的に統一するグローバル化がピークとなった途端に、地球分割の方向に向かい始めた。 |
講師紹介
- 水野 和夫
- 元法政大学教授、芸術文化観光専門職大学客員教授
- 愛知県生まれ。博士(経済学)。専門分野はマクロ経済学。三菱UFJモルガン・スタンレー証券(1980八千代証券入社-2010)、内閣府大臣官房審議官(2010)、内閣官房内閣審議(2011)、日本大学教授(2012-15)、法政大学教授(2016-現在)。著書に『100年デフレ』(2003)、『終わりなき危機』(2011)、『資本主義の終焉と歴史の危機』(2014)、『次なる100年』(2022)などがある。