ジャンル 世界を知る

中野校

アメリカ映画を読む ハリウッドの小さな物語

  • 春講座

寺地 五一(元東京経済大学教員)
米本 学仁(俳優)

曜日 木曜日
時間 10:40~12:10
日程 全6回 ・05月09日 ~ 06月13日
(日程詳細)
05/09, 05/16, 05/23, 05/30, 06/06, 06/13
コード 310301
定員 36名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 18,838
ビジター価格 受講料 ¥ 21,511

目標

・アメリカ映画を素材に、映像・作品の意味を主体的に読み取り、作品と能動的にかかわる楽しみを味わう。
・アメリカ映画を通して、欧米の社会・文化・歴史の一端に触れる。

講義概要

ハリウッド映画というと巨額な製作費を投じた大作を思い浮かべますが、小品ながら、いや小品だからこそ、心に染み入る優れた作品もたくさんあります。今回はそうした作品を取り上げます。取り上げるのは、スタンリー・キューブリック監督、カーク・ダグラス主演『突撃』(1956年)、ハル・アシュビー監督、ピーター・セラーズ主演『チャンス』(1979年)、ブルース・ベレスフォード監督、ロバート・デュヴァル主演『テンダー・マーシー』(1983年)、ケリー・ライカート監督、ミシェル・ウィリアムズ主演『ウェンディ&ルーシー』(2008年)、ジム・ジャームッシュ監督、アダム・ドライバー主演『パターソン』(2016年)。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 05/09 キューブリック監督、カーク・ダグラス主演『突撃』(Paths of Glory, 1956年) キューブリック長編第二作。第一次世界大戦でドイツ軍と戦うフランス軍の物語。前半は、ウクライナがいま戦っている塹壕戦を彷彿とさせる最前線の過酷な戦闘、後半は一転して舞台が軍法会議に移り、命令不服従の罪で三人の兵士を処刑することの是非が議論される。戦争の悲惨さもさることながら、軍隊組織の非情さ、理不尽さを描くことに焦点があてられており、戦争・軍隊を超えて、巨大な組織に抗う人間の無力さという普遍的なテーマを描いているとも読める。やや唐突なエンディングがもたらす情感はのちのキューブリックには見られないものとして興味深い。
2 05/16 ゲストスピーカー・米本学仁(よねもとたかと)さんによる「ハリウッド映画事情」 ハリウッドで10年以上の活動を経て、現在日本を拠点に俳優として活躍されている米本学仁(よねもとたかと)さんをお迎えして、ご自身の経験に基づいてハリウッド映画の現状、日本映画界との比較などについてお話しいただく。対話も交えた授業となる。出演作は、ハリウッドデビューとなった『47RONIN』、『全裸監督』、『愛なき森で叫べ』、ドラマ「Love」などのNetflix作品、『鎌倉殿の13人』、『どうする家康』などのNHK大河ドラマ、メキシコ映画Cuando Los Hijos Regresan(英題 The Kids Are Back)、その他多数。
3 05/23 ハル・アシュビー監督、ピーター・セラーズ主演『チャンス』(Being There, 1979年) 70年代のハリウッド映画には欠かせない存在ながら、日本では(アメリカでも)あまり話題にならないハル・アシュビーが、ポーランド出身で謎の多い作家ジャージー・コジンスキーの小説Being There(邦題『預言者』)を映画化したもの。知的障害を持ち、大富豪の邸宅から初めて外界に出てきた庭師を巡る周囲の思い違いを通してアメリカ社会を浮かび上がらせる寓話的作品。アメリカン・ニューシネマ的社会性に加えて、不思議な宇宙感覚ともいうべき感性を持つアシュビーの資質がよく生かされている。名優ピーター・セラーズの遺作。
4 05/30 ブルース・ベレスフォード監督、ロバート・デュヴァル主演『テンダー・マーシー』(Tender Mercies, 1983年) 日本劇場未公開 360度見渡す限り何もないテキサスの片田舎の平原にポツンと建つモーテルを舞台に、悲しみを背負った元カントリー歌手が歌と愛に再び生きる意味を見出だしていく--落ち目の歌手の再起というとありふれた物語に聞こえるが、ロバート・デュヴァルの演技と『アラバマ物語』でアカデミー脚色賞を受賞したホートン・フートの脚本が作品に深みを与えている。宗教による救済というサブプロットも見え隠れする。似たような物語の『センチメンタル・アドベンチャー』(クリント・イーストウッド監督、1983年)にも触れてみたい。デュヴァルはこの作品でアカデミー主演男優賞を受賞。
5 06/06 ケリー・ライカート(ライヒャルト)監督、ミシェル・ウィリアムズ主演『ウェンディ&ルーシー』(Wendy & Lucy, 2008年) 日本劇場未公開 「米国のインディ系の映画作家のなかで最も重要な一人」と言われるケリー・ライカート(ライヒャルト)は静かに人生を見つめる人である。主人公は寡黙で、映像表現は抑制的である。時間はゆっくりと流れ、大きなドラマが起こることはまずない。それでいて、緊迫した物語が私たちをとらえる。『ウェンディ&ルーシー』もまさにそうした作品である。貧困の故か、社会からドロップアウトした女性が、とある町で愛犬を失ったうえ、自動車が故障し、かつてのホーボー(仕事を求めて渡り歩いた貧しい労働者)のように貨物列車に無賃乗車してアラスカに向かう。ただそれだけの物語なのに、どうして私たちの心を打つのだろうか。
6 06/13 ジム・ジャームッシュ監督、アダム・ドライバー主演『パターソン』(Patterson, 2016年) ジャームッシュは、「詩(を書くこと)はひとつの生き方である」というウィリアム・カーロス・ウィリアムズの言葉を一編の映画に仕立て上げた。日常の中で心に浮かぶ詩をノートに書きためているバス運転手の、判で押したように決まりきった日々の暮らしをカメラは追う。月曜日から始まり、日曜日で終わる7日間の物語。穏やかな時間が流れ、穏やかな人と人の関係が描かれ、映し出される町の風景の上に彼の詩が白い文字で書き込まれていく。詩を書くことが人生である主人公に小さな悲劇が訪れるが、その悲劇を乗り越える小さな出来事があり、また次の一週間が新たに始まり、新しい詩が生まれる予感で終わる。ウィリアム・カーロス・ウィリアムズはパターソンという町で医者をしながら『パターソン』というアメリカ詩を代表する長い詩を書き、ジャームッシュはその詩にインスパイアされて、この映画を作った。だから、バスの運転手の名前も彼が暮らす町の名前もパターソン。映画を見終わって、詩が書けない自分でも、こんな町でこんな人たちの間で暮らしてみたいと思う--そんな小さな珠玉のような映画だ。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆もし可能であればとりあげる映画を事前に見ておいていただけると、講義をより理解できると思います。
◆各回講義内容・ゲストスピーカー及びゲストスピーカーの講義日は変更となる場合がございます。
◆3/9(土)11:30より本講座の無料体験会を早稲田校で実施します。
◆無料体験会お申し込みはこちらから。
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/63049/

講師紹介

寺地 五一
元東京経済大学教員
1943年生まれ。東京外国語大学卒業後、同大学院修士課程修了。著書に『アメリカ一日一言』、訳書に『ノーム』、『去年を待ちながら』、『ウッドストック―1969年・夏の真実』、『マーシャン・インカ』、『ジョン・F・ケネディはなぜ死んだのか―語り得ないものとの闘い』、雑誌連載「私たちはなぜ先住民族について考えなければいけないか」など。長年国際交流ボランティアを続ける。
米本 学仁
俳優
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