ジャンル 世界を知る

早稲田校

アーサー王物語の世界

  • 春講座

倉嶋 雅人(翻訳家)

曜日 金曜日
時間 13:10~14:40
日程 全8回 ・04月19日 ~ 06月14日
(日程詳細)
04/19, 04/26, 05/10, 05/17, 05/24, 05/31, 06/07, 06/14
コード 110308
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 23,760
ビジター価格 受講料 ¥ 27,324

目標

・物語の誕生と発展、作家とテーマなど基礎的な知識を得る
・歴史や社会、実在の人物など幅広い視野から物語の背景を探る
・「神話」として後世の歴史に及ぼした影響を理解する

講義概要

アーサー王物語は、6世紀頃の伝説中の英雄が12世紀に物語化され、以後15世紀後半の完成版に至るまで多くの作家によって構築されていった壮大なストーリーです。本講義では、物語誕生からメインストーリーの定着までの流れを総合的に解説します。ウェールズ人の英雄、最初の物語の著者ジェフリー・オブ・モンマス、フランス語版と英語版、アヴァロンという名の楽園、騎士道物語・恋愛物語への方向転換、王妃グウィネヴィアのモデル、二大テーマ=「騎士ランスロットと聖杯」、魔法使いマーリンとガウェインら古参の騎士のルーツなど、さまざまなテーマをエピソード豊富に平易に語ります。ファンにも初心者にも十分楽しめる内容です。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 04/19 物語の原点……アーサー王物語の誕生 6世紀頃の英国である戦いが起こり、この時の勝利将軍がのちにアーサー王という名前を得て、伝説として語り継がれます。ラテン語でこれを最初に物語にまとめたのが、ジェフリー・オブ・モンマスという作家です。初回講義では、伝説が物語として形成される過程を6世紀から12世紀までの諸文献に沿ってたどります。さらにジェフリー作品『ブリタニア列王史』のストーリーとそのポイントを解説し、以後の歴代王朝のアーサー王利用の歴史(円卓の作成、ガーター騎士団の創設など)と、英国民の敬愛の情を語ります。
2 04/26 中世英仏史と物語の交錯……最初の物語の著者ジェフリー 1066年のウィリアム征服王によるノルマン・コンクエスト、さらに1154年のヘンリー2世(フランス人)のプランタジネット朝創設により、英国の支配者層はフランス人になりました。ヘンリー2世はジェフリーの物語の政治利用をはかり、ワースという作家にそのフランス語訳を命じます。これがフランスでのアーサー王物語の大流行につながります。この回は、目まぐるしく支配者が入れ替わる11〜12世紀の英仏史を丹念にたどりながら、その乱世を巧みに立ち回った作者ジェフリーの姿をドラマ風に紹介します。
3 05/10 最初のフランス語版と最初の英語版……『ブリュ物語』と『ブルート』 ジェフリーの『ブリタニア列王史』をフランス語に翻訳したワースの『ブリュ物語』と、英語に翻訳したラヤモンの『ブルート』を比較・考察します。ワースは原典を翻訳しただけでなく、大きな変更(円卓の導入、平和な時代の驚異事の出現)も行っています。その60年以上後のラヤモンの作品は、傷を負ったアーサー王は「アヴァロンへ運ばれ、幸福に暮らしている」と、王の復活の可能性を示唆しました。異なる出自(ノルマン・フレンチ人とサクソン系)の作家による新たな趣向が後世に受け継がれていくのです。
4 05/17 アーサー王の墓……アヴァロンとグラストンベリー ラヤモン以降、アーサー王の復活を望む「ブリトン人の希望」から楽園アヴァロンの信仰が広がります。英国各地の「眠れるアーサー王伝説」や、ヨーロッパのリンゴ観、リンゴと楽園との関係(アヴァロンはリンゴの島とされる)を概観しながら、英国南西部の聖地グラストンベリーに焦点をあてます。1191年、グラストンベリー大修道院で「アーサー王の墓の発見」という大事件が起こりますが、その詳細や事件の裏側を推理しつつ、アヴァロンはグラストンベリーであると決定づけられていく経緯を多方面から解説します。
5 05/24 宮廷風恋愛とは何か……恋する騎士ランスロット アーサー王物語は12〜13世紀のフランスで宮廷風恋愛の文学として大発展します。当時の吟遊詩人の実態とその役割や、「恋愛は12世紀の発明(発見)」というテーゼについて考察し、「精美の愛」「愛の法廷」などのテーマやシャプランの『恋愛論』を解説します。後半は、フランスのアーサー王物語の発展の基礎を築いた作家クレティアン・ド・トロワの諸作品を紹介し、彼の『荷車の騎士』から生まれた不滅のヒーロー・騎士ランスロットの人物像と、メインテーマの「王妃と騎士の不倫愛」を多方面から考察します。
6 05/31 実在した宮廷物語のヒロイン……王妃アリエノールの生涯 英国王ヘンリー2世の妃アリエノール・ダキテーヌは王妃グウィネヴィアのモデルといわれます。彼女は国王ルイ7世との結婚でフランスの王妃となり、15年後に国王を捨て、家臣の若者アンリと再婚しますが、このアンリが海を渡って英国王ヘンリー2世となります。彼女の南仏の宮廷文化は娘のマリ・ド・シャンパーニュに引き継がれ、そのお抱え詩人のクレティアン・ド・トロワが複数のアーサー王物語を紡ぎ出していきます。天与の美貌と才覚に恵まれた女性の波乱の生涯と、アーサー王物語への多大なる影響を探ります。
7 06/07 聖杯を求めて……見果てぬ夢を追う騎士たち 前半では、物語に初めて聖杯を登場させたクレティアンの『ペルスヴァル』を詳しく紹介します。主人公が騎士修行の旅路で目撃した不思議な器「グラアル」は、以後「聖杯」と呼ばれますが、ここではキリスト教の要素はまったくありません。杯=カップと聖性の関係を、「豊饒の角」など神話や民俗学の視点から考察しつつ、後半では、聖杯のキリスト教色を強め、聖杯とアヴァロンを結び付けたロベール・ド・ボロンの作品を解説し、最後に聖杯を求めて苦難の旅に出て、見果てぬ夢を追う騎士たちの運命を語ります。
8 06/14 魔法使いマーリンと古参の騎士たち……変貌するキャラクター 本講義では、約300年に及ぶアーサー王物語群(Arthurian Cycle)の前半を取り上げました(15世紀の完成版の解説は来期以降)。最終回では、のちに大きく性格を変えられたオリジナル・メンバーである魔法使いマーリンとガウェインら古参の騎士たちの「原像」を紹介します。魔法使いマーリンは、もとは森に住む心を病んだ野人であり、ランスロットに次ぐ二番手に甘んじるガウェインは本来アーサー王の正統なる後継者でした。ガウェインを讃える2つの物語と、ガウェインと英国国章の不思議な関係を紹介して講義を終えます。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆3/8(金) 11:30より本講座の無料体験会を早稲田校で実施します。
◆体験会お申し込みはこちらから。
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/63073/

講師紹介

倉嶋 雅人
翻訳家
1955年長野県生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。主な訳書にヘイウッド『ケルト歴史地図』 、ギフォード『ケルトの木の知恵』、オルドハウス=グリーン『ケルト神話』、ハースト『超約ヨーロッパの歴史』(増補版も含む)、ペスケ『手の中の地球 国際宇宙ステーションから見た私たちの星』、共訳書にスミソニアン協会編『地球博物学大図鑑』、コルナバス『地政学世界地図』など。
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