ジャンル 文学の心

中野校

英国小説と人間―異邦人、動物、人造人間、クローン デフォーからイシグロまで

  • 秋講座

武田 将明(東京大学教授)

曜日 水曜日
時間 10:40~12:10
日程 全10回 ・09月30日 ~ 12月09日
(日程詳細)
09/30, 10/07, 10/14, 10/21, 10/28, 11/04, 11/11, 11/18, 12/02, 12/09
コード 330132
定員 24名
単位数 2
会員価格 受講料 ¥ 29,700
ビジター価格 受講料 ¥ 34,155

目標

・英国小説を愉しく読むコツをつかむ
・小説を通じて人間とは何か考える
・文学作品について自分の意見を明確に述べる

講義概要

最近、「ポスト・ヒューマン」や「人新世」という言葉をよく耳にしますが、地球温暖化など人間を原因とする環境問題が鮮明になるにつれて、人間中心・利便性中心の価値観から、環境に優しいサステナブルな価値観への移行が唱えられています。本講座では、こうした現状を踏まえながら、代表的な英国小説を読み直してみたいと思います。扱う作品は、デフォー『ロビンソン・クルーソー』からシェリー『フランケンシュタイン』、イシグロ『わたしを離さないで』など8作品。これらの名作は、人間をどう描いてきたのか。講義を元にじっくり考えましょう。※基本的に講義形式ですが、取り上げた小説について受講生同志で語り合う「読書会」の回も予定しています。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 09/30 『オルーノーコ』と奴隷制 謎多き女性作家アフラ・ベーンの『オルーノーコ』(1688)は、アフリカと南アメリカを舞台に、黒人の王子が奴隷にされ、叛乱を起こすも鎮圧される様子を描いています。様々な意味で先駆的なこの作品を、今回は人間性の描かれ方に注目して読んでみます。
2 10/07 『ロビンソン・クルーソー』と異邦人 最初の英国近代小説とも言われるダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』(1719)では、主人公のロビンソンがいわゆる未開人と遭遇するなかで、人間とは何かが問われています。あまりに有名なこの作品を、現代の視点からどのように再読できるでしょうか。授業では、講師の翻訳した『ロビンソン・クルーソー』(河出文庫)を用います。このために入手する必要はありませんが、お持ちの方は読んでおくと参考になるでしょう。なお、この作品は5回目の読書会でも扱います。上記翻訳から主要な箇所を抜粋して資料として配付します。
3 10/14 『ガリヴァー旅行記』と異邦人・動物 『ロビンソン・クルーソー』の7年後に出版されたジョナサン・スウィフトの『ガリヴァー旅行記』(1726)では、架空の国々への荒唐無稽な旅を通じて、主人公であるガリヴァーの西洋中心の人間観が批判されます。諷刺文学の古典の射程の長さに、驚かされるに違いありません。
4 10/21 『フランケンシュタイン』と人造人間 20世紀に入ってから何度も映像化されているメアリー・シェリーの作品『フランケンシュタイン』(1818)は、言うまでもなく人造人間を扱ったSFの先駆ですが、映画と原作での怪物のイメージの違いに驚かされるでしょう。
5 10/28 『ロビンソン・クルーソー』読書会 配付した資料に書かれた内容を元に、受講生の皆さんと『ロビンソン・クルーソー』における人間・人種の描かれ方を中心にお話しをしたいと思います。遠慮なくどんどん発言してください。講師による翻訳『ロビンソン・クルーソー』(河出文庫)を入手できる方はお持ちください。お持ちでない方には配付資料を用意します。
6 11/04 『モロー博士の島』と動物人間 SFというジャンルの確立者といえるH. G. ウェルズの中篇『モロー博士の島』(1896)は、ダーウィンの進化論の影響のもと、動物人間を登場させています。1回で作品を精読します。受講生のみなさんの意見を聞きながら講義をします。できれば、『モロー博士の島 他九篇』(橋本槇矩、鈴木万里訳、岩波文庫)から『モロー博士の島』のみを読んできてください。
7 11/11 『バスカヴィル家の犬』とポストコロニアリズム 『モロー博士の島』の6年後に出版された、A. C. ドイルの『バスカヴィル家の犬』(1902)は、シャーロック・ホームズの活躍する探偵小説の名作ですが、本講義を踏まえて読み直すと様々な発見があるはずです。1回で作品を精読します。受講生のみなさんの意見を聞きながら講義をします。できれば、『バスカヴィル家の犬』(駒月雅子訳、角川文庫)を読んできてください。
8 11/18 『恥辱』と動物のいのち ここから現代作品を扱います。J. M. クッツェーの『恥辱』(1999年)と『エリザベス・コステロ』(2003)を取り上げます。アパルトヘイト(人種隔離政策)終結後の南アフリカを舞台に、人間と動物の尊厳について冷徹に探究した前者と、人間と動物のあいだに働く共感を説いた後者を読みながら、人間と動物との境界を一緒に考えましょう。
9 12/02 『わたしを離さないで』とクローン人間 カズオ・イシグロによる、クローン人間たちを主要人物とする問題作『わたしを離さないで』(2005)を読みながら、人新世(人類が地球環境と生態系に影響を与えるようになった時代を指す地質学上の表記)に小説を読むとはどういうことなのか、地球と人間の関係はこれからどうなって行くのか、受講生の皆さんと考えたいと思います。『わたしを離さないで』を入手できる方はお持ちください。お持ちでない方には配付資料を用意します。
10 12/09 『わたしを離さないで』 読書会 前回取り上げた『わたしを離さないで』を皆さんと一緒に読みます。この作品における人間・クローンの描かれ方を中心にお話しをしたいと思います。遠慮なくどんどん発言してください。『わたしを離さないで』を入手できる方はお持ちください。お持ちでない方には配付資料を用意します。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆本講座では作品を紹介しながら解説を行います。事前に作品をお読みいただくと理解が深まりますが、未読でも受講いただけます。
◆基本的に講義形式ですが、5回⽬と10回⽬は講義で取り上げた⼩説の読書会を⾏います。この2回は事前に読んでいただくテキスト(小説の一部)があります。テキストは開講時に配付します。
◆第2回以降は、事前に配付する資料(A4で4枚程度)を読んで、授業に臨んでください。
◆読書会では『ロビンソン・クルーソー』と『わたしを離さないで』を扱います。講師による翻訳『ロビンソン・クルーソー』(河出文庫)、また『わたしを離さないで』(ハヤカワepi文庫)がお手元にあれば、お持ちください。お持ちでない方には上記のとおり配付資料を用意いたします。
◆イギリス文学について基本的な知識を得たい方は、石塚久郎編『イギリス文学入門』(三修社)をお読みください。

備考

・パンフレットにはテキスト指定ありと記載されていますが、変更され、指定なしとなりました。

講師紹介

武田 将明
東京大学教授
ケンブリッジ大学英文科博士課程修了。2006年から法政大学文学部、2010年から東京大学大学院総合文化研究科にて、英語と英文学を教える。専門は18世紀英文学。著書に『「ガリヴァー旅行記」徹底注釈』(共著、岩波書店)、『吉田健一に就て』(共著、国書刊行会)など。訳書にダニエル・デフォー『ロビンソン・クルーソー』(河出文庫)、同『ペストの記憶』(研究社)など。18世紀英国で始まったと言われる近代小説の面白さを、アカデミズムの内外に伝えるにはどうするか、日々考えています。
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