ジャンル 芸術の世界
中野校
スペイン美術史入門―エル・グレコ、ベラスケス、ムリーリョ
豊田 唯(東京大学特任助教)
| 曜日 | 木曜日 |
|---|---|
| 時間 | 15:05~16:35 |
| 日程 |
全6回
・07月16日 ~
09月03日 (日程詳細) 07/16, 07/23, 07/30, 08/20, 08/27, 09/03 |
| コード | 320409 |
| 定員 | 24名 |
| 単位数 | 1 |
| 会員価格 | 受講料 ¥ 17,820 |
| ビジター価格 | 受講料 ¥ 20,493 |
目標
・スペイン美術史を代表する画家とその作品に関する知識を得る。
・アカデミックな「絵画の見方」の一端に触れ、今後の美術鑑賞に生かす。
講義概要
西洋美術史上、スペインはイタリアやフランスとは異なる独特な展開を見せてきました。とくに16世紀末から17世紀末にかけては「黄金世紀」と呼ばれ、国力自体は斜陽を迎えるなかで個性豊かな巨匠たちが活躍しました。本講座では①ギリシア生まれ・イタリア仕込みの哲人画家エル・グレコ②スペイン「らしさ」と「らしくなさ」を併せ呑んだ孤高の画家ベラスケス③甘美な聖母マリア像で国内外の人気を博した生粋のスペイン人画家ムリーリョをとりあげます。画家の生涯と代表作の紹介が中心になりますが、政治・社会・文化的な時代背景、さらにはミケランジェロ、カラヴァッジョ、ルーベンスといった国外の美術家からの影響にも言及します。
各回の講義予定
| 回 | 日程 | 講座内容 | |
|---|---|---|---|
| 1 | 07/16 | エル・グレコ――ギリシア、イタリア、スペイン | エル・グレコはクレタ島でポスト・ビザンティンのイコン画家として出発しますが、活路を求めてヴェネツィアとローマに渡り、あらためて西ヨーロッパ型の絵画を学びました。そののち、ふたたび画家人生を賭けて単身、スペインへと旅立ちます。第1回では、スペイン到着直後に描かれた《聖母被昇天》や《聖三位一体》をとり上げ、エル・グレコがいかに長きにわたる修業の成果をカンヴァス上で発揮していったのかを分析します。 |
| 2 | 07/23 | エル・グレコ――未来はだれも彼を真似しないだろう | エル・グレコはスペインでは宗教都市トレドに定住しました。フェリペ2世の宮廷画家の座をつかむことには失敗しますが、トレドでは聖俗の教養人から根強い支持を受け、到着直後から死没まで旺盛な制作を展開します。第2回では、《聖マウリティウスの殉教》、《オルガス伯爵の埋葬》、《ラオコーン》などをとり上げ、さまざまな地域・時代の美術が化学反応を起こしたかのようなエル・グレコ芸術の特質に迫ります。 |
| 3 | 07/30 | ベラスケス――港の喧騒から美の宮殿へ | ベラスケスはスペイン南部の港町セビーリャで生まれ、はじめは重厚な構図と厳格なリアリズムを特徴とする宗教画や風俗画を制作しました。一方でフェリペ4世に宮廷画家として登用されてからは、王室コレクションとの接触やイタリアへの遊学を経て、その画風が洗練され、構図は柔らかく、色彩は豊かになっていきます。第3回では、《卵を料理する老女と少年》、《バッカスの勝利》、《ウルカヌスの鍛冶場》などをとり上げ、ベラスケスが「セビーリャの画家」から「ヨーロッパの巨匠」へと進化した過程を跡づけます。 |
| 4 | 08/20 | ベラスケス――バロックの神髄 | ベラスケスはイタリアからマドリードに戻ると、しばらくはフェリペ4世の美術への情熱に応えるべく前線に立って精力的に絵画を制作しました。一方で、その能力が評価されるにつれ、しだいに王宮の営繕や装飾全体を監督する官吏として振る舞うことも多くなっていきます。第5回では、《王太子バルタサール・カルロス騎馬像》、《鏡を見るヴィーナス》、《ラス・メニーナス(フェリペ4世の家族)》などをとり上げ、ベラスケスが限られた時間のなかで、みずからの知識・経験と創意を駆使してバロックの神髄を究めようとした足跡をたどります。 |
| 5 | 08/27 | ムリーリョ――聖なるものを親しみやすく | ムリーリョもベラスケスとおなじくセビーリャに生まれますが、急速に衰退、荒廃していくこの港町を生涯離れることなく、同地の聖堂や修道院のために絵画を制作しました。それらの作品の多くは重要な聖書のエピソードや聖人伝を表すにとどまらず、ひろく民衆の目に触れる場所に飾られ、ペスト禍や天災に苦しむ人びとに精神の慰めをもたらす役割も帯びていました。第5回では、《さいころ遊びをする少年たち》や《小鳥のいる聖家族》をとり上げ、ムリーリョが絵筆をとおして落日のセビーリャに希望を見出そうとしていたことを読みとります。 |
| 6 | 09/03 | ムリーリョ――未来はだれも彼を真似するだろう | ムリーリョは、愛らしく清らかな聖母マリアの姿を生涯にわたって描きつづけたことでも知られます。とくに「マリアが生まれながらに原罪を免れていた」とする教義を視覚化した「無原罪のお宿り」というテーマの作品は、キリスト伝から切り離された可憐なマリアの単身像として国内外でながく人気を博しました。第6回では、ムリーリョが生前に制作した「無原罪のお宿り」の代表作を追いながらその構図や様式の特徴をつかみ、そうして確立されたプロトタイプが現代日本のマリア像にも影響を及ぼしていることを最後に紹介します。 |
講師紹介
- 豊田 唯
- 東京大学特任助教
- 博士(文学、早稲田大学)。専門分野はスペイン美術史。長崎県美術館学芸員を経て現職。ほかに早稲田大学、東京外国語大学非常勤講師。主な著作に『スペイン美術史入門――積層する美と歴史の物語』(2018年、共著)、『くろねこと一緒にスペイン語文法』(2024年、共著)など。




