ジャンル 現代社会と科学

オンデマンド

【オンデマンド】国際報道から読み解く世界 ポスト・ウクライナ戦争と命を守るジャーナリズム

  • 春講座

横村 出(ジャーナリスト、作家)

コード 910701
定員 20名
単位数
会員価格 受講料 ¥ 19,800
ビジター価格 受講料 ¥ 19,800

目標

・戦争の真実とは何か。国際社会で起きている現実を教材に考察する。
・背景まで掘りさげ、ジャーナリズムの役割や世界との関わり方を学ぶ。
・"新しい戦前"をどう生き抜くか、その知恵と自らの立ち位置を確かめる。

講義概要

ウクライナやパレスチナへの侵攻など、歴史的パンデミックを経験してなお国際社会をむしばむ病巣が浮かびあがった。国家の独善と保身、覇権国のおごり高ぶり、そして人間の命の格差だ。多元主義や国際協調の呼び声はむなしく響き、ポピュリズムの闇が広がっている。繰り返される愚行を眼前に、ジャーナリズムは「人間の命を守る」役割を果たしているか。ロシアによるウクライナ侵攻を主題に、戦争の原因と構図、国際社会の駆け引き、メディアの影響等を総括する。この戦争が世界と日本をどう変えたか、平和構築よりも〝戦争への備え〟に転換した深層に迫る。

各回の講義予定

講座内容
1 ウクライナ戦争をふり返って〜視点を相対化し複眼で見る 2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻から3年半、ひとたび戦争になれば終結がいかに困難か、侵略される側はもちろん侵略者にも多大な犠牲をもたらした。こうした極限状況下では、ジャーナリズムにとっても中立や客観はありえない。重要なのは、それぞれの立場を相対化して内実まで理解する複眼の思考だ。
2 なぜロシアがウクライナを侵略したのか①〜ロシアの立ち位置 ソ連崩壊後のロシアとは、ひと言で表すなら「泥沼に立つ巨人」である。自らの足もとの政治的液状化を防ごうとたえまなく周辺地域に干渉し、利権で絡め取り、造反の動きは力で制圧した。帝政から社会主義、権威主義へと看板を掛け替えても、一貫して大国の覇権に拘泥し、その泥沼の中でせめぎ合いを続けている。
3 なぜロシアがウクライナを侵略したのか②〜プーチンの力学 1990年代に停滞したロシアを、再び積極的な侵略国家に変貌させたのがプーチンの政治だった。ここでいう侵略とは軍事的な意味のみならず、利権や外交的な駆け引き、国際政治における混沌の醸成、覇権軸の再編成などの揺さぶりも含む。米中と表裏一体の覇権を隠れ蓑にし、より強固な属域(=同盟)支配を目論んできた。
4 なぜウクライナが侵略を受けたのか〜ウクライナの失政と呪縛 ソ連崩壊後もウクライナがロシアと蜜月だったのは、政治支配層がロシアと欧州の間にあって社会経済的な利権の蜜を吸っていたためだ。2004年以降、この矛盾に気づいた市民層の数度にわたる蜂起によっても、ウクライナは汚職政治を一掃できず、経済の混乱に揺さぶりを掛けられ、ロシアの呪縛から逃れられなかった。
5 国際社会はこの戦争をどう支えたか①〜ウクライナへの支援と裏切り ロシアによるウクライナへの軍事侵攻までに、米国を中軸とするNATO(北大西洋条約機構)は、なぜ平和構築の努力を怠ったのか。そして、開戦後はウクライナに武器弾薬の支援を与えながら、その総額を上回るロシア産原油と天然ガスを輸入しつづけたのか。〝正義のプロパガンダ〟の裏にこそ、戦争の真実が隠されている。
6 国際社会はこの戦争をどう支えたか②〜ロシアの侵略を支えた国々の思惑 他方で、米国の覇権とは対立関係にある中国、北朝鮮といった第3の国々は、間接的・直接的にロシアを支援してきた。その思惑は米国と同盟国がウクライナを支えたロジックと同様、中国や北朝鮮は「ロシアを利するほうが国益になる」と判断したにすぎない。覇権の旨みとは、対決と挑発の渦中にあってこそ生じる。
7 この戦争が国際社会にどう影響したのか〜自国主義とポピュリズム再来 ウクライナ戦争は、世界に戦争の惨禍を知らせ平和構築の機運を高めるどころか、軍事力強化と核軍拡・核拡散の危機を招いている。ポピュリズムが再び息を吹き返し、覇権対立が加速する〝新たな戦前〟をもたらしかねない状況だ。大国の独善的ご都合主義によって、覇権の縁辺でさらに戦争が飛び火するおそれがある。
8 世界観の混沌を制する相対化の視座 新しい時代の始まりが混沌とした雲に覆われ、人類の歴史上誤った選択をすることがあった。ポスト・コロナ、ポスト・ウクライナ戦争の現在、安全保障の枠組が流動化し、民主主義の輪郭が揺らいでいる。疑心暗鬼に陥らないために、新たな戦争を呼びこむような声高な主張や駆け引きを相対化する理性が必要な時代を迎えている。
9 あふれる情報に惑わされないために 大国が平和構築の責務を放棄し、国際的な枠組がしだいに効力を失えば、権威なき世界がいっそう加速する。多くの情報が裏打ちのないまま拡散し、新たなテクノロジーによって操作され、人類の暴力的な情動を突き動かしかねない。波間に漂うかに見えて海底にしっかり繋がれたブイのように、信頼に足る情報をつかむ条件とは何か。
10 ジャーナリズムで「命を守る」とは あらゆる戦争状況において、ジャーナリズムは、侵略や軍事支援の正当性を論争するよりも「どれだけの人の命を守ったか」が最も重要だ。戦争のみならず、パンデミックや地球環境危機をどう伝えるかの教訓になろう。情報を精査して判断材料としての事実を伝えるだけでなく、ジャーナリスト各人の価値観・世界観こそが問われる。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆視聴期間は一般申込開始(2026/03/04)から学期終了翌月末(2026/07/31)までになります。一般申込開始(2026/03/04)以降はお申し込みいただけましたら視聴可能になります。
◆この講座は
2025年度 秋期 「【対面+オンラインのハイブリッド】国際報道から読み解く世界」 (09/27〜12/06 土曜日、全10回)
で開講した講座のアーカイブ講座になります。
◆途中映像音声の乱れるところがありますがご了承ください。
◆オンデマンド講座のため講義内容に関する質疑は受付けいたしかねます。あらかじめご了承お願いいたします。

講師紹介

横村 出
ジャーナリスト、作家
1962年生まれ。早稲田大学政経学部政治学科卒・大学院政治学研究科博士前期課程修了(政治学修士)。朝日新聞社入社後、ロシアのサンクトペテルブルク国立大学へ留学し、モスクワ特派員になる。ロシア東欧・中東アフリカなどで戦争や革命を取材した。現在、米ロと関わる国際紛争や安全保障をテーマにするほか、小説を執筆している。著書に、プーチン政権の政治と戦争の闇を記録したルポ『チェチェンの呪縛 — 紛争の淵源を読み解く』(岩波書店)、現代世界を点描した小説『漆黒のピラミッド — 世界をめぐる十の短編』(新潟日報メディアネット)などがある。詳しくは、公式サイト(izuruyokomura.com)をご覧ください。
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