ジャンル 人間の探求

早稲田校

空海を読む 天才の思想と行動

  • 夏講座

正木 晃(宗教学者)

曜日 水曜日
時間 13:10~14:40
日程 全8回 ・07月01日 ~ 08月26日
(日程詳細)
07/01, 07/08, 07/15, 07/22, 07/29, 08/05, 08/19, 08/26
コード 120506
定員 70名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 23,760
ビジター価格 受講料 ¥ 27,324

目標

・日本史上 最大最高の宗教的天才、空海の思想と行動を、信頼できる文献と彼が制作にかかわった図像(美術)から読み解きます。
・空海の創造性・独自性を指摘し、後世への絶大な影響を考察します。

講義概要

空海が日本史上、最大最高の宗教的天才であったことに異論はありません。たとえば中世のころ、「大師」といえば、それは聖徳太子と弘法大師空海を指していました。聖徳太子の事跡が半ば以上架空なのに対し、空海はあまたの文献と制作にかかわった美術作品から、「事実」として確認できます。本講座では空海の自著を中心に、信頼性の高い伝記類を読み、空海の実像を探求します。もし難点があるとすれば、空海が創造した真言密教の世界が、あまりに深遠で広大なため、理解がなかなか及ばないことです。この点は、最も重要な文献と造形を選び出し、丁寧に解説することで、空海の真髄に迫りたいと思います。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 07/01 三教指帰ーなぜ仏教を選んだのか 空海が活動した時代は奈良時代から平安時代への過渡期に当たり、皇統が天武系から天智系に転換するなど、日本社会は混迷を極めていました。最初の作品となった三教指帰は仏教と儒教と道教を比較し、仏教こそ自身がきわめるべき道であると論じています。このような比較宗教的な考察は空海以外、ほとんど見当たりません。
2 07/08 請来目録ーなぜ曼荼羅が必要なのか 空海は当時としては最高の文明国家だった唐に留学し、最新の仏教である真言密教の唯一絶対の後継者となって帰国しました。その際、朝廷に提出した帰国報告書が請来目録です。読むと、空海が修得した真言密教とは何か、理解できます。特に真理を伝達するのに、なぜ曼荼羅が必要なのか、極めて端的に述べられています。
3 07/15 風信帖ー最澄との交友と訣別 空海の生涯は順風満帆と思われがちですが、実は台頭するのにかなり時間がかかっています。その不遇の時期に、いわば助け船を出してくれたのが最澄です。そして最澄との交流を通して、空海は地歩を築いていきます。しかし密教に対する根本的な見解の相違から、二人は訣別せざるを得なくなります。何が問題だったのか。風信帖と呼ばれる書簡からその子細を読み解きます。
4 07/22 性霊集ー怨霊と向き合う 空海が台頭できた背景には、怨霊の跳梁跋扈がありました。皇統が天武系から天智系へと転換される過程で、非業の死を遂げる人々がいたのです。彼らは死後、怨霊と化して、日本社会全体に祟りました。その怨霊を真言密教の力で鎮魂し、社会を平安に導くことに成功したのが空海でした。その具体例を、書簡や詩を収める性霊集から読み解きます。
5 07/29 即身成仏義・吽字義ー密教の秘奥 真言密教の真言密教たるゆえんは、今生きている身体のままで仏に成れるという思想、つまり即身成仏です。それまでの仏教では、仏になるにはほとんど無限大の時間にわたる修行が不可欠とされていましたから、即身成仏はまさに革命的でした。またそれに伴い、世界観や真理観も従来の仏教とは大きく異なりました。これらのことを、空海の代表的な著作とされる即身成仏義と吽字儀から読み解きます。
6 08/05 秘蔵宝鑰(1)悟りへの階梯 仏教では悟りへと至る階梯がいろいろ論じられてきました。空海による階梯論は秘密曼荼羅十住心論と秘蔵宝鑰です。どちらが主著かをめぐっては論争がありますが、後世への影響の点では秘蔵宝鑰が圧倒的です。性欲と食欲しかない最低の次元から、完全無欠の仏に至る階梯を、秘蔵宝鑰ほど明確に論じた文献は他に見当たりません。特にインドで生まれた仏教以外の宗教を網羅した上で、中国の儒教からの仏教批判にこたえているのは、この秘蔵宝鑰しかありません。
7 08/19 秘蔵宝鑰(2)究極の悟りとは 秘蔵宝鑰では既存の仏教宗派が階梯論として展開されます。当時、全盛を誇っていた南都六宗はもとより、天台宗もまた空海によって厳しく批判されます。そして真言密教こそ、至高至上の教えであることが明かされます。さらに最終段階では、大日経(胎蔵曼荼羅)と金剛頂経(金剛界曼荼羅)の世界が比較され、金剛頂経こそが即身成仏を可能にする究極の教えと結論されます。
8 08/26 空海僧都伝ー入定への階梯 空海は複眼の人でした。拠点は平安京の東寺と山深い高野山の二カ所ありました。最晩年、空海は平安京を離れ、高野山に籠居します。間近に迫りつつある死を意識しつつ、真言密教による日本国の守護を実現すべく、さまさまな方策を指示し実現させていきました。それらをすべて成就し、空海は粛然として死を受け入れました。数ある空海伝のなかでも信頼度の高い、空海僧都伝にはそう書かれています。やがて空海は死んではいない、今もなお高野山の奥の院で入定、すなわち瞑想しているという信仰が生まれました。大師信仰の誕生です。

講師紹介

正木 晃
宗教学者
1953年、神奈川県小田原市生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。専門は宗教学(日本仏教・チベット仏教)。文献研究に留まらず、現地調査を実施しチベット・ヒマラヤ地域の調査は20回に及ぶ。高度でありながら誰でも理解できる仏教学を志向。著作は『「ほとけ」論』『現代日本語訳 法華経』など多数。

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