ジャンル 文学の心

早稲田校

「彼女」たちの三島由紀夫文学 戦後女性誌からみえる多面性

  • 春講座

武内 佳代(青山学院大学教授)

曜日 月曜日
時間 13:10~14:40
日程 全6回 ・04月20日 ~ 06月01日
(日程詳細)
04/20, 04/27, 05/11, 05/18, 05/25, 06/01
コード 110115
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 17,820
ビジター価格 受講料 ¥ 20,493

目標

・三島由紀夫と女性誌の関わりの深さについて知識を得る。
・雑誌メディアの特質を踏まえた小説の読解力を身につける。
・三島文学の新しい側面を知り、三島の多面性について理解を深める。

講義概要

2025年に生誕100年を迎えた三島由紀夫は、戦後日本を代表する作家としてこれまでその作品や生涯がたびたび衆目を集めてきました。そのため三島とその文学については、もはや言い尽くされた感すらあるかもしれません。しかし、いまだに注目されていない側面があります。それは女性読者向けの仕事です。じつは三島は戦後の出発から晩年近くに至るまで、継続的にさまざまな女性誌に小説を掲載していきました。当時は女性読者たちが三島の人気を強く支え、三島自身も彼女たちの存在に意識的だったのです。本講座では、戦後から1960年代初頭までの女性誌に掲載された作品を取り上げ、三島由紀夫の知られざる側面についてお話しします。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 04/20 三島由紀夫と女性誌―短篇「白鳥」を中心に 最初に三島由紀夫と女性誌のかかわりについて、戦後の雑誌メディア状況を踏まえて解説します。その上で、1948年にスタア社『マドモアゼル』誌に掲載した短篇「白鳥」を取り上げ、当時23歳の三島が施した、女性読者向けの工夫を読み解いていきます。「白鳥」は新潮文庫『女神』に収録されていますので、事前に読んでご参加ください。
2 04/27 三島由紀夫と『婦人公論』―『純白の夜』を読む 三島の初めての女性誌連載小説にあたる『純白の夜』(1950年)を取り上げます。姦通を描いた本作は連載中も、のちに映画化されたときも、ほとんど話題にならなかったことで知られています。当時の日本社会はちょうど姦通小説ブームを迎えたころ。にもかかわらず、『純白の夜』はなぜ話題にならなかったのでしょうか。連載誌『婦人公論』の傾向性や、当時人気を博した大岡昇平『武蔵野夫人』との違いなどを捉えながら、考えてみたいと思います。
3 05/11 三島由紀夫と『主婦の友』―『恋の都』を読む 当時女性誌の中でもっとも売れていた『主婦の友』に連載された『恋の都』(1953-54年)を取り上げます。働く若い女性主人公の都会での恋愛模様を描き出した『恋の都』は一見コメディー風の小説ですが、しかし本作には『主婦の友』の女性読者を意識した性規範の問題が前景化されつつ、それに絡めて三島の戦後天皇制への屈託した思想が描きこまれてもいます。『恋の都』を、三島の思想的変遷を知る上で重要な作品として位置付けてみたいと思います。
4 05/18 三島由紀夫と『婦人朝日』―『女神』を読む 『婦人朝日』に連載された『女神』(1954-55年)を取り上げます。『女神』はブルジョワ家庭の父親と娘の親密な関係が描かれた小説ですが、彼らの関係に映し出される当時の高級ファッションと『婦人朝日』誌面との関わりを捉えていきます。また、じつはこの『女神』の結末部分は、連載時のものと現在全集や文庫で読めるものとでは顕著な違いがあります。初出と初版の違いを解説しながら、『恋の都』から通底するテーマを探ってみたいと思います。
5 05/25 三島由紀夫と『婦人倶楽部』『若い女性』―『永すぎた春』から『お嬢さん』へ 講談社系の女性誌『婦人倶楽部』と『若い女性』にそれぞれ連載された『永すぎた春』(1956年)と『お嬢さん』(1960年)を取り上げます。三島にとって女性読者向けの連載小説として初めての成功ともいえるのが『永すぎた春』です。本作は映画化もされてベストセラーとなり、そのタイトルが当時の流行語になったことでも知られています。本講座の第4回までに見てきた作品群との違いから、この成功の鍵と三島が凝らした工夫について読み解いてみます。さらに続編ともいえる『お嬢さん』についても連載誌『若い女性』との関わりからとらえ直し、三島の工夫を考察してみたいと思います。
6 06/01 三島由紀夫と『婦人画報』―戯曲「黒蜥蜴」を読む 『婦人画報』に掲載された戯曲「黒蜥蜴」を扱います。丸山(美輪)明宏が主演して以降、人気を博して三島の代表作となったこの「黒蜥蜴」は、江戸川乱歩の同名の小説を翻案した戯曲ですが、じつは三島版は掲載誌『婦人画報』の特質を踏まえ、それを皮肉るような主題を持っています。そのことを解説しつつ、三島版「黒蜥蜴」の探偵明智と女賊黒蜥蜴との恋愛物語に潜む、日本の高度経済成長期に対する三島のスタンスを探り当てたいと思います。ちょうど2026年5月から宝塚歌劇団・宙組が、演出家の生田大和氏のもとでこの三島版「黒蜥蜴」を下敷きとした舞台を公演します。三島版「黒蜥蜴」の特徴を知っておかれると、そうした公演をより楽しんで観られるかもしれません。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合の補講は6月8日(月)を予定しています。
◆本講座では三島の新側面を扱いますので、必ずしも有名ではない作品を取り上げていきます。各回で取り上げる作品を事前に読んでくることが望ましいですが、なるべく未読の方でもわかるようにお話しします。

講師紹介

武内 佳代
青山学院大学教授
文教大学、日本大学を経て現職。博士(人文科学、お茶の水女子大学)。専門分野は、近現代日本文学とジェンダー研究、クィア・フェミニズム研究。おもに三島由紀夫文学や村上春樹をはじめとした現代文学を研究対象にしている。著書に『クィアする現代日本文学―ケア・動物・語り』(青弓社)、共著に『中央公論特別編集 彼女たちの三島由紀夫』(中央公論新社)などがある。

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