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スキャンダルのイギリス史―19世紀末芸術事件簿
齊藤 貴子(早稲田大学非常勤講師、上智大学大学院講師)
| 曜日 | 水曜日 |
|---|---|
| 時間 | 13:00~14:30 |
| 日程 |
全5回
・04月08日 ~
05月20日 (日程詳細) 04/08, 04/15, 04/22, 05/13, 05/20 |
| コード | 710304 |
| 定員 | 30名 |
| 単位数 | 1 |
| 会員価格 | 受講料 ¥ 14,850 |
| ビジター価格 | 受講料 ¥ 17,077 |
目標
・当時の世間を騒がせ、後世まで語り継がれてきた歴史的スキャンダル (事件、事故、情事etc.)をつうじてイギリスを知る。
・イギリス(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)の歴史を芸術的観点から考察する。
・イギリスを例にスキャンダリズムのありようについても可能な限り理解と考察を深める。
講義概要
古の昔から21世紀の今日に至るまで、イギリスという国はスキャンダルに事欠きません。政治・経済の分野はいうに及ばず、宗教や芸術といった文化方面でも、歴史上のエポック・メイキングとなるような重大な不祥事がいくつも起こってきました。そしてまた、たとえ王室だろうと官邸だろうと、対象を常に同じまな板の上にのせ、実際に起こった出来事を正しく伝えることで、良くも悪くもスキャンダリズムを貫いてきたのがイギリスという国でもあります。本講座では、中世から現代までの各種歴史的なスキャンダルをつうじて、イギリスという国そのものへの理解と関心を深めていきます。今期は19世紀末イギリス美術界のスキャンダルを取りあげます。
各回の講義予定
| 回 | 日程 | 講座内容 | |
|---|---|---|---|
| 1 | 04/08 | ≪オフィーリア≫の画家ジョン・エヴァレット・ミレイ一世一代の略奪婚 | シェイクスピアの悲劇『ハムレット』のヒロインの有名な死の場面を、力なく川面に浮かび流れてゆく前代未聞の姿で描いた名画《オフィーリア》の作者として知られる19世紀イギリスの画家ジョン・エヴァレット・ミレイ。そんな彼が、今日でいう「略奪婚」の稀にみる成功者でもあることは、案外知られていないかもしれません。ただし、彼が恩人ともいえる美術批評家ジョン・ラスキンの妻エフィーと恋に落ち、彼女とラスキンの離婚成立を辛抱強く待った後に結婚した事実は、夫と家庭をことさら愛したことで知られるヴィクトリア女王の治世、ために「家庭の幸福」が(表向き)国是に近かったことで知られる19世紀当時にあって、とんでもない大スキャンダルでした。世間を敵にまわしても二人で生きる道を選び、結果的に成功した「一世一代の略奪婚」の知られざる舞台裏を、許されぬ恋の只中で描かれたミレイの数々の絵画を通じて解き明かします。 |
| 2 | 04/15 | 詩人画家ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの名作をうんだ三角関係 | 第1回でとりあげた画家ミレイはいわゆる美大生だった頃、前衛的な芸術制作を標榜する「ラファエル前派兄弟団」を友人・知人たちと結成していましたが、後世の目から見れば、彼以上にスキャンダラスに映るのが同グループの盟友だった画家にして詩人のダンテ・ゲイブリエル・ロセッティです。というのも、ロセッティは自身に憧れて芸術の道に踏み入った年下の友人ウィリアム・モリス(俗に「モダン・デザイン」の父とも呼ばれる19世紀末の有名デザイナーにして詩人)の妻ジェインとの長年にわたる関係を、世間にも夫であるモリス本人にも隠そうともせず、公然と続けていました。そのような複雑かつ爛れた関係が、よくある破滅ではなく類まれな数々の傑作を生みだすにいたった経緯を、ロセッティの詩と絵画および関係者の言説、そして縁ある場所を通じて詳細にご紹介します。 |
| 3 | 04/22 | 絵は嘘をつかない?19世紀末の大画家エドワード・バーン=ジョーンズの恋の後始末 | 「類は友を呼ぶ」といってしまえばそれまでですが、第2回で扱うロセッティをはじめとするラファエル前派の関係者で、世間が眉を顰めるような恋愛スキャンダルを起こさなかった人間はほとんど皆無といっていいでしょう。ロセッティを師とも友とも慕い、苦労の末に19世紀末を代表する画家として成功し、最終的に準男爵にまで叙せられたエドワード・バーン=ジョーンズも然り。彼も一時期、深い仲にあったロンドン・ギリシャ人社会の有名モデルに自殺未遂されるなど社交界に大いにゴシップを提供していました。事実、19世紀当時に「問題作」として糾弾され描き直しを余儀なくされた1枚の絵は、件の彼女をモデルとして描いたものなのです……バーン=ジョーンズの描き直し以前と以後の当該絵画2枚を実際に解釈しながら、この不思議な符合の理由を様々な角度から読み解いていきます。 |
| 4 | 05/13 | 未来の大女優エレン・テリーの《選択》のゆくえ | これまで数えきれない名優を輩出してきた「シェイクスピアの国」イギリス。そのなかでも傑出した知名度を誇るひとりが、シェイクスピアの悲劇『マクベス』の真の主役ともいうべきマクベス夫人を当たり役とした19世紀末の大女優エレン・テリーです。いわゆる旅役者の一座にいた10代の彼女を見初め、妻に迎えた30歳年上の画家ジョージ・フレデリック・ワッツの描いた彼女の肖像画《選択(choosing)》は、肖像画の粋ぐみを超えた名画として知られています。その真の理由は、わずか10か月で画家の元を去り、結果的に未来の大女優へ大きく飛躍することになった幼な妻エレン・テリーの「選択」の如何が、夫であった画家の側から世にも美しく歪められ、哀しい皮肉として描かれているからでしょう。伝記的事実を踏まえながら、一枚の絵に見え隠れする年の離れた夫と妻のすれ違う思惑を明らかにします。 |
| 5 | 05/20 | 裁判に勝って負けた人気画家ジェームズ・マクニール・ホイッスラー | 第1回に登場する批評家ジョン・ラスキンは後年、同時代の人気画家ジェームズ・マクニール・ホイッスラーの名画《黒と金の夜想曲:落下する花火》を「絵の具の入った壺を公衆の面前に投げつけただけ」の絵と非難した結果、画家から名誉棄損で訴えられます。今でこそ日本でも珍しくなくなった名誉棄損訴訟ですが、19世紀の昔に、自身の芸術の名誉のため友人知人の芸術家らを証人として巻き込んでまで行われたホイッスラーの訴訟は、いわゆる正気の沙汰ではないと受け取られました。その結果、ラスキンはスズメの涙ほどの賠償金を払うにとどまり、裁判に勝ったホイッスラーのほうが莫大な裁判費用を抱えて破産するという皮肉な結末を迎えます。事実上、裁判に負けたに等しいホイッスラーの何がそんなに問題だったのか……彼の作品はもちろん言説、そして実際の裁判の経緯からつぶさに事実を拾い上げ、探っていきたいと思います。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆休講が発生した場合の補講は5月27日(水)を予定しています。
◆Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。
◆お申込みの前に必ず「オンラインでのご受講にあたって」をご確認ください。
◆本講座の動画は、当該講座実施の翌々日(休業日を除く)17:30までに公開します。インターネット上で1週間のご視聴が可能です。視聴方法は、以下をご確認ください。【会員】授業動画の視聴方法(会員向け) 【ビジター・法人会員】授業動画の視聴方法(ビジター・法人会員向け)
講師紹介
- 齊藤 貴子
- 早稲田大学非常勤講師、上智大学大学院講師
- 早稲田大学教育学部英語英文学科卒、同大学院教育学研究科博士課程修了後、助手を経て現職。専門は近代イギリス文学・文化。主として詩と美術の相関を研究。『ラファエル前派の世界』(東京書籍)、『英国ロマン派女性詩選』(国文社)、『肖像画で読み解くイギリス史』(PHP研究所)、『イギリス恋愛詞華集―この瞬間を永遠に―』(研究社)など著訳書多数。




