ジャンル 現代社会と科学
早稲田校
太古の時代につながる現代の地球環境
川幡 穂高(早稲田大学客員教授、東京大学名誉教授)
| 曜日 | 水曜日 |
|---|---|
| 時間 | 10:40~12:10 |
| 日程 |
全8回
・04月01日 ~
06月10日 (日程詳細) 04/01, 04/08, 04/15, 04/22, 05/13, 05/20, 06/03, 06/10 |
| コード | 110733 |
| 定員 | 30名 |
| 単位数 | 1 |
| 会員価格 | 受講料 ¥ 23,760 |
| ビジター価格 | 受講料 ¥ 27,324 |
目標
・古気候・古環境だけでなく現代に通じる地球システムを総合的に理解する。
・気候・環境が社会に与えた影響を理解し、気候・環境要素の現代社会への示唆を考える。
・気候システムの基礎を系統的に理解する。
講義概要
地球惑星科学に関する重要なトピックスを、地球史の初期から現代に至る時間の経過にそって講義する。私たちは「青い地球」を当然のことと思っているが、実は「白い地球」の時期が存在した。酸素と生物にあふれる現代の地球の営みは、太古の地球以来、さまざまなイベントを経験した結果である。1950年代以降、人間の経済活動や社会の変動は劇的に増加し、現在は、地球環境や生態系への負荷が急激に高まっている。地球史のイベントの理解を通じて、現代と未来の環境を見つめ直す機会になればと考える。「白亜紀の石油生成と恐竜の興隆」「海洋酸性化とパリの石灰岩」「地中海の底に眠る巨大岩塩層」「地下流体と地震」などのトピックスも扱う。
各回の講義予定
| 回 | 日程 | 講座内容 | |
|---|---|---|---|
| 1 | 04/01 | 「真っ青」でなく「真っ白」の全球凍結を経験した太古の地球 | 「京都賞」は、稲盛和夫京セラ名誉会長が私財を投じて設立した稲盛財団が1985年に創設した日本の国際賞である。2024年の【基礎科学部門】の受賞はハーバード大学の地質学者であったホフマン教授であった。受賞のタイトルは「生命進化の加速につながった全球凍結と地球史前半までさかのぼるプレートテクトニクスの実証」であった。特に、「全球凍結」に関し、ホフマン教授はアフリカのナミビアの地層を精力的に調査し、地球表面がほとんどすべて凍りついてしまうという、それまで学界で否定的であった「真っ白な地球」が、約7.2億〜6.4億年前に続けて2回出現したことを、地質学的証拠にもとづいて初めて明らかにした。 |
| 2 | 04/08 | 「真っ白」から「真っ青」への変化がもたらした酸素と生命にあふれる地球 | これまでの研究で、全球凍結は、今から22億年前頃、7億年前頃、6億年前頃の少なくとも3回生じたと考えられている。地球は、「全球凍結した白い地球」から「青い地球」へと自力で復帰した。地球の温度が元に戻ったという復元力に注目が集まる以上に、全球凍結のイベントは、その後の生物圏に不可逆的な大きな影響を与えた。3回の全球凍結を通じて、大気中の酸素濃度は、凍結後には凍結以前の10万倍程度に増加した。「全球凍結とその後の超温暖化気候は、大気中の酸素濃度の劇的な変化のトリガーとなった可能性が高く、全球凍結は、その後の生命があふれる地球への重要なイベントとなったと今では考えられている。 |
| 3 | 04/15 | 白亜紀の地球が結びつけた恐竜の興隆と石油の生成 | 現在人類が利用している石油の半分程度の生成は、約1億前を中心とした前後2000万年間の期間に集中していた。この時代は白亜紀と呼ばれ、過去2億年間の中で最暖期となり、恐竜が活躍した。高温多雨の環境の下、草食恐竜の餌となった植物も繁茂した。これらの環境は2億年毎に活動する地球深部のマントルでのスーパープルームによりもたらされたと考えられている。地球表層では火山活動が頻発し、大量の二酸化炭素が大気に供給され、温暖化が進行し、海洋プランクトンが光合成で大量の有機物を作りだし、最終的に石油となった。恐竜の活躍と白亜紀の石油の大規模生成は、「太陽の恵み」と「地底の恵み」の二つの共作の産物だといえる。 |
| 4 | 04/22 | パリやローマの白亜の建物のもととなった白亜紀の石灰岩の形成 | 2024年のオリンピックはパリで開催された。パリの市街地には凱旋門、シャンゼリゼ通り、ルーブル美術館など白亜の建物が多い。これらは白色の炭酸カルシウム(CaCO3)の殻をもつ微小なプランクトンを構成物とした石灰岩で建造されているので、明灰色となっている。この岩石で未固結のものはチョークと呼ばれ、これは黒板に文字や絵などを描いたチョークの語源となった。これらの石灰岩が形成された白亜紀の頃のフランスやローマは、陸地でなく海の底で、気候は温暖であった。二酸化炭素は水に溶けると弱酸性となる。大気中の二酸化炭素濃度も高かったものの、当時の海水の組成は多少異なっていたので、大量の石灰が堆積した。 |
| 5 | 05/13 | 5600万年前の海洋酸性化が招いた海洋の石灰化生物の絶滅 | 今から5600年万前に、メタンハイドレート(メタン分子が氷のカゴの中に取り込まれたもの)の大規模な崩壊で、星砂の仲間である海底に生活する有孔虫の半分程度が、殻の溶解により大量に死滅してしまった。メタンは酸素が存在すると数年以内に二酸化炭素に変わり、これは海水を急速に酸性化させ、炭酸塩の殻を溶解させる。崩壊は1万年間継続し、環境が元に戻るのに20万年間を要した。現在の人為活動による二酸化炭素の放出速度は当時の30倍なので、当時の1万年間は現在の300年間に相当する。この海洋酸性化は「カーボンニュートラル2050」が失敗した場合に起こる「地球の実証実験」だったと考えられている。 |
| 6 | 05/20 | 地中海の海底下に560万年前頃に形成した厚さ1500mの岩塩層 | 2024年のオリンピックのセーリング競技は、フランス南部のマルセイユ沖の地中海で開催された。地中海は「透き通った青い海」が特徴で、三大陸に囲まれた世界最大の内海であるものの「海洋の砂漠」と呼ばれるほど、海水中の栄養分が少ないためプランクトンが乏しい。地中海周辺の気候はとても乾燥しているので、もしジブラルタル海峡が大西洋から隔絶されたら、わずか千年間で地中海は完全に干上がり、砂漠になってしまう。560万年前頃にこのような隔離された環境が地中海に出現した。現在の地中海の海底下には、厚さに換算して最大で1,500〜3,000mに及ぶ膨大な量の岩塩を主体とした蒸発岩が存在している。 |
| 7 | 06/03 | 能登半島地震と関係した「地下流体」の重要性 | 2024年の元旦の夕方に「令和6年能登半島地震」が発生した。能登半島では中期更新世(約77万年前)以降、横から強く圧縮を受けた場合にできる逆断層の活動が活発である。そのため、地盤が長期間にわたり上昇してきた。この地震は、プレート内部の大陸側で起きる「内陸型」の地震に分類される。能登半島では2020年末から群発地震が続いており、地表面の隆起や震源の移動から、政府の地震調査委員会は「群発地震では、地下深くの水(流体)が関与している」との見解を示してきた。米国地質調査所(USGS)は、近年シェールガスなどの掘削や巨大ダムの建設などが原因で誘発地震が活発化していると地下流体に強い関心を示している。 |
| 8 | 06/10 | 21世紀後半に深刻化する海洋酸性化を救う「カーボンニュートラル」 | 温室効果ガスである二酸化炭素は「双子の悪魔」と呼ばれる二つの深刻な地球環境問題、一つは「地球温暖化」、もう一つは「海洋酸性化」をもたらす。「海洋酸性化」では、二酸化炭素が単純に海水に溶解するだけで引き起こされる現象なので、この危機は100%起こると考えられる。「海洋酸性化」では、炭酸カルシウムの貝殻が溶けたり、貝殻の形成も抑制され、カキ、ハマグリ、ウニなどの生産量が減り、食卓にも大きな影響がでるであろう。「海洋酸性化」の影響は全海洋に及ぶが、被害は高緯度で顕著となる。この影響の抑制のためには、パリ協定で採択されたように、先進国は「低炭素社会」から「脱炭素社会」を目指すことが必須となる。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆3/6(金) 10:00より本講座の無料体験講座を実施します。
◆無料体験講座お申し込みはこちらから。 https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/68382/
◆気候・環境について予備知識がなくても受講可能です。
◆休講が発生した場合の補講日は6月17日(水)を予定しています。
◆参考図書として、「地球表層環境の進化-先カンブリア時代から近未来まで」(東京大学出版会、ISBN:978-4130627207)の最後の章をお読みいただくとより理解が深まります。(購入は必須ではありません)
◆講師が執筆担当した「週刊ダイヤモンド(大人のための最先端理科-地球科学)2023年11月25日/425号72-73ページ、2024年1月27日号/432号74-75ページ、3月16日/439号64-65ページ、5月18日/446号72-73ページ、7月13日/453号78-79ページ、9月28日/460号62-63ページ、11月30日/467号68-69ページ、2025年2月8日/474号62-63ページ」を詳しく解説しますので、事前にお読みいただくとより理解が深まります。(必須ではありません)
◆講義は過去をメインとしますが、現代および将来の気候・環境問題への示唆についても解説します。
講師紹介
- 川幡 穂高
- 早稲田大学客員教授、東京大学名誉教授
- 横浜市生まれ。博士(理学、東京大学) 。専門分野は、現代の地球環境・気候学、古環境学・古気候学。日本地球化学会および日本地球惑星科学連合元会長およびフェロー、欧州・米国の地球化学連合フェロー、早稲田大学や東京大学等で地球惑星科学などの授業を担当。専門は、生物地球化学をベースとした現代と過去の物質循環研究、現代の炭素循環に関する知見を過去に応用して古気候・古環境学の解析を行う一方、これらを統合して過去から未来への環境変遷の解析を行う。古気候学、人類学、考古学、歴史学を駆使した「気候変動と日本人20万年史」(岩波書店)がある。




