ジャンル 文学の心
早稲田校
名作への招待、近現代文学150年
中島 国彦(早稲田大学名誉教授)
宮内 淳子(近代文学研究者)
小堀 洋平(和洋女子大学准教授)
藤井 淑禎(立教大学名誉教授)
小菅 健一(山梨英和大学元教授)
山本 亮介(東洋大学教授)
石割 透(駒澤大学名誉教授)
篠崎 美生子(明治学院大学教授)
| 曜日 | 月曜日 |
|---|---|
| 時間 | 15:05~16:35 |
| 日程 |
全8回
・04月20日 ~
06月15日 (日程詳細) 04/20, 04/27, 05/11, 05/18, 05/25, 06/01, 06/08, 06/15 |
| コード | 110186 |
| 定員 | 30名 |
| 単位数 | 1 |
| 会員価格 | 受講料 ¥ 23,760 |
| ビジター価格 | 受講料 ¥ 27,324 |
目標
・日本の近現代文学の名作、問題作に親しむ。
・作品を読む新しいアプローチを確かめる。
・名作だけでなく、これまで光の当たらなかった作品も取り上げていく。
講義概要
かつて開講されていた「近代文藝百年」(早稲田校・土曜午後)と「東京―街・人・文学」(八丁堀校・月曜午後)の2講座を、発展的に合併し、新たな構想で計画した新講座を、今年も継続します。明治の名作から現代文学の問題作まで、8名の講師の薦める作品が登場します。中島国彦(徳冨健次郎)、宮内淳子(吉屋信子)、小堀洋平(国木田独歩)、藤井淑禎(水上勉)、小菅健一(夏目漱石)、山本亮介(奥泉光)、石割透(芥川龍之介)、篠崎美生子(林京子)が語る作品の魅力を、ぜひ味わってください。(企画・早稲田大学名誉教授 中島国彦)
各回の講義予定
| 回 | 日程 | 講座内容 | |
|---|---|---|---|
| 1 | 04/20 | 徳冨健次郎『みみずのたはこと』の描く東京郊外 | 『不如帰』で知られる徳冨蘆花は、最晩年のトルストイをロシアに訪問した後、明治末から東京の西の郊外に愛子夫人と住み着きます。現在の世田谷区、京王線「芦花公園駅」から徒歩20分程の場所でした。以後徳冨健次郎の名で活動しますが、折に触れて書き溜めた自然スケッチが『みみずのたはこと』です。以前は、岩波文庫(上下二冊)で読めましたが、品切れ中です。代表的な部分をコピーで紹介しながら、その面白さを紹介していきたいと思います。(中島国彦) |
| 2 | 04/27 | 吉屋信子「鬼火」を読む | 「鬼火」(1951年)は、戦後の困窮した世相のなかで、瓦斯の集金にやってきた男が支払いのできない女性に誘いをかけ、彼女の自死を招く顛末を、怪談めいた雰囲気で描く短篇である。泉鏡花の影響もあり、また、貧窮のまま見捨てられた女性の苦しみを描き出すところに、吉屋の社会派の一面も読み取れる。文壇からは距離を置かれていた吉屋だが、「鬼火」は珍しく厚遇を受けた。第四回女流文学者賞も受賞した。吉屋は少女小説で知られるが、それ以外にも、家庭小説、歴史小説、評伝など多彩かつ旺盛な活動をしていた。幻想味のある短篇は、「鬼火」のほかにも多く書かれている。講談社文芸文庫『鬼火・底の抜けた柄杓』所収。(宮内淳子) |
| 3 | 05/11 | 国木田独歩「武蔵野」の織りなす世界 | 国木田独歩は作品「武蔵野」において、「武蔵野」という場所の「詩趣」を語るにあたり、その本文に多くの文献を織りこんでいます。冒頭、「文政年間に出来た地図」への書きこみの引用から始まった本文は、かつての「自分の日記」の筆写へと展開してゆきます。ロシアの作家ツルゲーネフの短篇を二葉亭四迷が訳した「あひびき」や、イギリスの詩人ワーズワースの詩とともに、熊谷直好の歌や与謝蕪村の句といった江戸時代の作品も参照されています。本講座では、これらのさまざまな文献によって織りなされた「武蔵野」の世界を読み解きます。なお、「武蔵野」は独歩の他の短篇とともに、岩波文庫、新潮文庫等に収められています。(小堀洋平) |
| 4 | 05/18 | 水上勉・エッセイの深化と作家的成熟 | 水上勉がエッセイの達人であることはよく知られている。ただ、その場合のエッセイとは主に作家としての前半生に書かれたもので、故郷との離別、京都の寺への修行、母を始めとする親族との別れ、下積み時代の苦難、女性たちとの愛と別れなど、恨みや悔いを内包したマイナス傾向のものがほとんどだった。しかし、軽井沢、若狭、小諸と三度の移住を経て、水上勉のエッセイは読者の心を洗うようなプラス思考のものが増えていく。特に若狭移住以降の『閑話一滴』『若狭海辺だより』においては、自然のなかで地に足をつけ、見たり聞いたり他者と関わったりといったさまざまな体験が語られ、それが読者を癒し、生きる勇気を与えることとなる。そればかりでなく、水上はそこから、理想とする人間像や文学を超えるものへの手がかりをも手に入れることになる。そんな晩期水上文学の片鱗をご紹介できればと思っている。―参考『松本清張と水上勉』(ちくま選書、25年刊) (両エッセイは多くの図書館で所蔵しています)(藤井淑禎) |
| 5 | 05/25 | 夏目漱石「草枕」における芸術性―表現論的視座から見えてくるもの― | 夏目漱石の初期作品の中で、冒頭部分が「吾輩は猫である」の次に有名であるにも関わらず、他の代表作と比較した時に扱いがいささか小さい作品が「草枕」(明治39年)です。主人公の職業が西洋画家として設定されているので、「草枕」において、主人公の内的独白として繰り広げられる様々な発言や、彼と他の登場人物との間で交わされる会話で、小説や美術、詩や漢詩文など広範なジャンルに及ぶ漱石の芸術論が、堂々と披瀝されています。今回の講座では、表現論的な視座から芸術家小説としての「草枕」を読み解きながら、その存在意義と位置づけについて論じていきたいと思っています。(夏目漱石の「草枕」は新潮文庫、岩波文庫、集英社文庫などで手に入ります)(小菅健一) |
| 6 | 06/01 | 音楽を書く小説:奥泉光『シューマンの指』 | 流れゆく無形の音楽は、言葉で表現することがもっとも難しい対象です。言い表せない何かを経験できる音楽に、文学は憧れを抱いてきました。音楽を主題とする小説は、作品世界に流れる音楽とその魅力を文章で描く、挑戦的な取り組みとなります。現代の小説家奥泉光は、音楽小説の可能性を一連の作品で追求しています。その中から、音楽とミステリの融合で注目を集めた『シューマンの指』を取り上げます。作品中の音楽と文学をめぐる深淵な思索に触れつつ、至高の音楽(経験)を小説で表現しようとするとき、なぜミステリの形式が必要になるのかを考えてみたいと思います。入手しやすいテキストに、講談社文庫『シューマンの指』があります。(山本亮介) |
| 7 | 06/08 | 芥川龍之介「雛」「庭」ほか | 「鼠小僧治郎吉」、「報恩記」、「お富の貞操」などは、無意識のうちに、のびやかに芥川の物語作家としての才能が花開いた作品であり、また、没落、衰滅を扱えば、自然のうちに、芥川の作品は佳作として完成に導かれるのであり、その代表作が「雛」であり、「庭」であるように思います。この時間では、そのような「雛」、「庭」といった、芥川龍之介の作品としてはあまり知られていない作品をめぐって話してみたく思っています。(石割透) |
| 8 | 06/15 | かくされた〈大人の目〉―林京子『ミッシェルの口紅』― | 上海から引き揚げた直後の14歳の時に長崎で被爆した林京子は、上海時代を、生きることに疑問を持たなかった明るい時代としてしばしば回想しています。また『ミッシェルの口紅』は、その時代を「子供の目で、ありのまま書い」(『上海 ミッシェルの口紅』講談社文芸文庫版「著者から読者へ」)たものだとも述べています。しかし、この小説には、日本の敗戦はもちろん、日中戦争からアジア・太平洋戦争の展開を事後的に把握した〈大人の目〉が隠れているようです。今回は〈大人の目〉の働きによって見えてくる複雑な国際関係、人間関係を小説の中に確認してみたいと思います。魯迅「私は人をだましたい」も参照する予定です。(篠崎美生子) |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆各回担当講師・担当回・各回講義内容は変更となる場合があります。
講師紹介
- 中島 国彦
- 早稲田大学名誉教授
- 1946年東京都生まれ。早稲田大学大学院博士課程修了、博士(文学)。公益財団法人日本近代文学館前理事長。日本近代文学専攻。著書『近代文学にみる感受性』(筑摩書房)、『夏目漱石の手紙』(共著、大修館書店)、『漱石の愛した絵はがき』(共編、岩波書店)、『漱石の地図帳―歩く・見る・読む』(大修館書店)、『森鷗外 学芸の散歩者』(岩波新書)等。
- 宮内 淳子
- 近代文学研究者
- 東京生まれ。早稲田大学教育学部卒。博士(人文科学、お茶の水女子大学)。専門分野は日本近代文学。近代文学研究者。帝塚山学院大学教授、立正大学で非常勤講師を勤めた。著書に『谷崎潤一郎 異郷往還』(国書刊行会)、『岡本かの子論』『藤枝静男』(EDI)、共著に『上海の日本人社会とメディア』(岩波書店)など。
- 小堀 洋平
- 和洋女子大学准教授
- 1986年埼玉県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。日本近代文学専攻。和洋女子大学等で近代文学を教える。単著に『田山花袋 作品の形成』(翰林書房)、共著に『文豪たちの住宅事情』『文豪東京文学案内』(笠間書院)がある。
- 藤井 淑禎
- 立教大学名誉教授
- 愛知県豊橋市生まれ。慶應義塾大学卒業。立教大学大学院博士課程満期退学。専門は日本近代文学・文化。著書に、『清張 闘う作家』(ミネルヴァ書房)、『名作がくれた勇気』(平凡社)などがある。
- 小菅 健一
- 山梨英和大学元教授
- 文学修士(早稲田大学)。専門分野は、日本近現代文学および表現論。山梨英和大学において日本近現代文学、現代文化論、現代芸術論、日本語スキル(初年次教育)や公開講座の日本近現代文学の作品講読を担当。共著書に『日本文芸の系譜』『日本文芸の表現史』他、近著に『未来の学び 小学生のための生涯学習講座』。
- 山本 亮介
- 東洋大学教授
- 1974年、神奈川県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。専門分野は、日本近現代文学。信州大学を経て現職に至る。著書に、『横光利一と小説の論理』(笠間書院)、『小説は環流する―漱石と鷗外、フィクションと音楽』(水声社)などがある。
- 石割 透
- 駒澤大学名誉教授
- 1945年京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、同大学院文学研究科博士課程単位取得修了。専門分野は日本近代文学。『芥川龍之介全集』、『芥川龍之介資料集』共同編集の他、著書『芥川龍之介初期作品の展開』(有精堂)、編著書『芥川竜之介書簡集』『芥川竜之介随筆集』(岩波文庫)『ジャズ』(ゆまに書房)などがある。
- 篠崎 美生子
- 明治学院大学教授
- 日本近現代文学専攻。博士(文学、早稲田大学)。芥川龍之介の小説から研究を始め、その後、日本近代文学とナショナリズムの関係に関心を持つ。近年は、日本近代文学と中国との関わり、原爆と文学の関わりについて研究中。単著に『弱い「内面」の陥穽』(翰林書房)がある。





