ジャンル 現代社会と科学
早稲田校
国際法ゼミナール ルールに基づく国際秩序の将来について考える
須網 隆夫(早稲田大学名誉教授、弁護士)
| 曜日 | 金曜日 |
|---|---|
| 時間 | 13:10~14:40 |
| 日程 |
全12回
・09月26日 ~
02月06日 (日程詳細) 09/26, 10/03, 10/17, 10/24, 11/07, 11/14, 11/28, 12/05, 01/09, 01/16, 01/30, 02/06 |
| コード | 130791 |
| 定員 | 20名 |
| 単位数 | 2 |
| 会員価格 | 受講料 ¥ 47,520 |
| ビジター価格 | 受講料 ¥ 54,648 |
目標
・現在の国際秩序について理解する。
・国際秩序を支える国際法の意味を考える。
・これからの国際秩序はどうあるべきかを構想する。
講義概要
現在の国際社会は転換点にあると指摘される。ロシア・ウクライナ戦争、イスラエルの軍事侵攻によるガザ危機、第二次トランプ政権の通商政策により、第二次世界大戦後に成立した、ルールに基づく国際秩序は動揺を余儀なくされているからである。現在の国際秩序は、国際法により作られ、そして支えられてきた。国際秩序の動揺は、国際法が踏みにじられている結果でもある。本ゼミでは、主に国際法の観点から、今後の国際秩序の在り方を考える。本ゼミのテーマは、明確な答えのない、難しい課題ばかりである。しかし国際法学は、市民一人一人が国際社会のアクターであると論じてきた。参加者には国際社会のこれからの在り方を考えて頂きたい。
※秋・冬学期を通して学びます。日程にご注意下さい。
各回の講義予定
| 回 | 日程 | 講座内容 | |
|---|---|---|---|
| 1 | 09/26 | オリエンテーション | 国際法とは何か、国際法はどのように作られるのか、国際裁判所の役割は何か、国際法は実効的か、国際法違反にはどのような意味があるか、ルールに基づく国際秩序と日本などにつき、概括的に説明するとともに、本ゼミの進め方につき、講師のイメージをお話しし、受講者の皆さんからご意見を頂きます。 |
| 2 | 10/03 | 戦争と平和―「国家が戦争することは認められているのか?」 | 戦争を禁止する努力は、第一次大戦後の戦間期に始まり、現在は、国連憲章により武力行使は原則的に禁止され、自衛権の発動としてのみ認められている。しかし、実際には、ウクライナでの戦争は続いており、ロシアは核兵器の使用すらほのめかしている。戦争と平和、戦争をめぐる国際法の枠組み、国連の役割、安保理常任理事国の拒否権の意味、戦争はそもそも禁止されるべきなのかをもう一度考える。 |
| 3 | 10/17 | ウクライナ戦争と国際法―「NATOの東方拡大がウクライナ戦争の原因なのか?」 | 前回に続き、戦争の問題を、ロシア・ウクライナ戦争について考える。NATOの東方拡大が、ロシアのウクライナ侵略の原因なら、ロシアの行為は正当であるのだろうか、ロシアのミサイル攻撃は正当なのか、ウクライナのロシア空軍基地攻撃はどうか、ロシアが併合したクリミアはどう扱われるのか等の問いを考える。 |
| 4 | 10/24 | ガザ危機と国際法―「イスラエルのガザ侵攻は、自衛権の行使として正当化されるのか?」 | ウクライナ戦争と並ぶ問題は、ガザ地区の人道危機である。イスラエルは、ハマスの攻撃に対する自衛権の行使を主張するが、自衛権の行使には限界があるのか、イスラエルの軍事行動により多くの民間人に死者が出ていることをどう考えるべきか、パレスチナの国家承認にはどのような意味があるのかを含めて考える。 |
| 5 | 11/07 | 戦争犯罪と国際刑事裁判所―「戦争犯罪を処罰しなくてよいのか?」 | 日本人の赤根智子氏が所長を務める国際刑事裁判所(オランダ・ハーグ)は、戦争犯罪・侵略犯罪などの犯人を処罰するために作られ、ウクライナ戦争・ガザ危機について、ロシア・イスラエルの高官に対して逮捕状を発給している。国際刑事裁判所は、なぜ設立され、どのような役割を担っているのか、戦争は個人の責任であるのかを考える。 |
| 6 | 11/14 | 国際人権と死刑―「人権が普遍的であるとはどういうことか?」 | 基本的人権は、今日、各国の憲法で保障されるだけでなく、国際人権法によって保障され、その保障は戦争中にも奪われない。人権は全ての人が人として得る権利であり、その普遍性が強調される。しかし、他方で国ごとに人権の理解は異なる。人権は本当に普遍的な権利であるのか、そもそも人権の普遍性とは何なのか、改めて考える。 |
| 7 | 11/28 | トランプ関税と国際通商法秩序―「WTOは死んだのか?」 | トランプ政権による一方的な関税の引き上げは、世界経済を混乱させている。一方的な関税引き上げ、二国間での交渉は、WTO協定に違反していると考えられる。なぜWTO違反のトランプ関税がまかり通るのか、アメリカの行動を抑制することはできるのか、法の支配を強化するために、日本はどう対応すべきであるのかを考える。 |
| 8 | 12/05 | EUを支えるEU法―「EUはなぜ崩壊しないのか?」 | EU法は、通常の国際法よりも高い実効性を誇り、様々な危機に直面してきたEUを支えている。しかし、EU自体には物理的強制力はなく、強制力はすべて加盟国が保持している。その意味では、EU法は国際法の一種である。EU法は、なぜ加盟国に遵守されるのだろうか、そこには国際法の実効性を高めるヒントがあるかを考える。 |
| 9 | 01/09 | EU法のブリュッセル効果―「日本企業の行動がEU法によって規律されても良いのか?」 | EUは、企業の活動に影響する多くの立法を制定しており、EU内で活動する日本企業はもちろん、日本国内の事業者も、様々な場面でEU立法を無視して活動することが困難になっている。そのような効果は「ブリュッセル効果」と呼ばれている。なぜそのような効果が生じるのか、そのことは日本にとってどのような意味があるのかを考える。 |
| 10 | 01/16 | 国際法とグローバル・サウスー「途上国から国際法はどのように見えるか?」 | 19世紀から20世紀前半の国際法は、欧米列強による植民地支配を正当化してきた。そのため西洋諸国に植民地とされた歴史を持つ途上国は、現在の国際法に批判的な目を向けている。今の国際法、其れに支えられた国際秩序のどこにどのような問題があるのだろうか、途上国も納得できる国際秩序・国際法は、どうしたら形成されるかを考える。 |
| 11 | 01/30 | グローバル立憲主義とグローバル法秩序の形成―「国際法と国内法は異なる原則に基づくのか?」 | 冷戦終結後のリベラルな価値(人権・法の支配・民主主義)を基本とする国際秩序は、危機に直面していると論じられるが、これらの価値は、国際法だけでなく、民主主義国家の依拠する価値でもある。リベラルな国際秩序は危機に瀕しているのか、権威主義国家の台頭により、これからの世界は権力均衡だけに支配される世界になるのだろうか、我々はそれを受け入れざるを得ないのかを考える。 |
| 12 | 02/06 | 「ルールに基づく国際秩序」の将来 | 本ゼミの最終回として、参加者の報告・話題提供を基に、今後の国際秩序・国際法のあり方を全員で議論する。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆休講が発生した場合の補講日は2月13日(金)、2月27日(金)を予定しています。
◆本ゼミナール講座は、各回、講義(30分)・グループ討議(30分)・全体討論(30分)を組み合わせて進行する予定です。
◆ゼミナール講座には、学びをより良いものにするための「グランドルール」があります。相互に円滑に学びあうコミュニティづくりにご協力ください。
・議論の際には、他者の意見を否定するのではなく、建設的な意見を述べて議論を深めるようにする。
・対等な立場で参加し、他者の意見や背景を理解する努力をする。
・ゼミというコミュニティの中で、自分のできることを見出し、コミュニティへの貢献を意識して活動する。
・ゼミに参加する全員で、ゼミ全体の「思考の質」、「成果の質」をあげることをめざす。
講師紹介
- 須網 隆夫
- 早稲田大学名誉教授、弁護士
- 1954年生まれ。東京大学法学部、コーネル大学ロースクール、カトリックルーヴァン大学大学院卒。EU法、国際経済法専攻。日本EU学会元理事長、日本国際経済法学会前理事長、日欧産業協力センター理事。主な著訳書等:『ヨーロッパ経済法』(新世社、1997年)、共編著『英国のEU離脱とEUの未来』(日本評論社、2018年)、共編著『EUと新しい国際秩序』(日本評論社、2021年)など。




