ジャンル 現代社会と科学

オンデマンド

【オンデマンド】戦場から読み解く世界―戦争とノンフィクション

  • 夏講座

横村 出(ジャーナリスト、作家)

コード 920703
定員 20名
単位数
会員価格 受講料 ¥ 15,840
ビジター価格 受講料 ¥ 15,840

目標

・20世紀からつづく現代の戦争を支える政治と社会の構造を知る。
・ノンフィクション作品を通じて戦争がもたらす惨禍の真実に迫る。

講義概要

第2次世界大戦の独ソ戦から最近のロシアによるウクライナ侵攻まで、やむことのない戦争の構図と真相を解き明かす。ロシア・東欧のみならず、大国が関与した中央ユーラシアから中東での戦争を解説する一方で、それぞれの地域の戦争を題材とした作家やジャーナリストによるノンフィクションの名著を読み解く。全8回の講座では4地域の戦争を取り上げ、各2回ずつ戦争概説とノンフィクション作品の紹介をセットにする。なお、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ、ティモシー・スナイダー、アンナ・ポリトコフスカヤ、エドワード・サイードの4人の著作を必ずしも読まなくても受講できますが、図書館等で1冊でも作品に触れることをお勧めします。

各回の講義予定

講座内容
1 中央ユーラシアの戦争を読み解く 冷戦期のソ連による「アフガン侵攻」と、冷戦後の米国と同盟国による「テロとの戦い」という2つのアフガニスタン戦争を取り上げる。現地の社会主義政権を支えるために侵攻したソ連は10年後に敗退し、民主政権の後ろ盾になろうとした米国も20年間の戦争を経てアフガニスタンを放棄した。歴史的に中央ユーラシアで繰り返された大国間の〝グレート・ゲーム〟は、この地球上で場所を変えながら継続している。
2 スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの著作から ソ連を構成したベラルーシ出身のノーベル賞作家、アレクシエーヴィチが世界に知られたのは、アフガン侵攻から帰還した兵士やその家族を取材して書いた『亜鉛の少年たち〜アフガン帰還兵の証言』による。戦争を体験した市井の証言を積み重ねて真実をあぶり出す手法を確立した。その後も、社会弱者の視点から戦争や原発事故がもたらす惨劇を浮かび上がらせ、国際的に高い評価を受けてきた。
3 東欧の戦争を読み解く 第2次世界大戦の激戦地のうちでも、ポーランドやウクライナ、ベラルーシ、バルト諸国といった東欧では、ナチス・ドイツとソ連の両軍によって踏みにじられ多大な犠牲を強いられた。戦後、東西に分割されてソ連支配下に置かれた国々では、長く戦争の真実が封印されてきた。欧州に分断をもたらした社会構造と力学を解明すれば、現代のウクライナ侵攻にまでつながる戦争の構図も見えてくる。
4 ティモシー・スナイダーの著作から ナチスによる〝ホロコースト〟に象徴される集団殺戮は、アウシュヴィッツに限られた悲劇ではないことを明らかにしたのが、スナイダーの著作『ブラッドランド〜ヒトラーとスターリン・大虐殺の真実』である。歴史ノンフィクションの手法によって、東欧での意図的な飢餓、強制労働、放火、処刑にいたるまで詳細な史実をもとにジェノサイドの真相を明らかにし、世界の読者に衝撃を与えた。
5 ロシアの戦争を読み解く ソ連崩壊後のロシアによる侵略戦争は、プーチン政権に始まる特異な現象ではない。その淵源は、1990年代のエリツィン政権のもとで起きた第1次チェチェン戦争にたどることができる。このエリツィンの敗北を教訓としたプーチンの権威主義政治は、瓦解したイデオロギーなき〝帝国〟が死守しようとしてきた地政的な圏域と覇権、国益と利権のため、軍拡と際限なき国家統制へと突き進んだ。
6 アンナ・ポリトコフスカヤの著作から チェチェン戦争の実態を白日のもとにさらしたのが、ジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤの著作『チェチェン〜やめられない戦争』である。エリツィン時代にもまして残虐な第2次チェチェン戦争をもたらしたプーチン政権によって発禁にされても、権力を監視する不屈の活動を諦めなかった。その警告が真実であったことは、ポリトコフスカヤ暗殺後のウクライナ侵攻によっても証明された。
7 中東の戦争を読み解く 世界のエネルギー資源を牛耳ることこそが、超大国のパワーの源泉であった1980〜90年代。ソ連崩壊で中東への影響力を失いつつあったロシアにとどめを刺す試みが、米国とイラクとの湾岸戦争だった。不十分な結果しか得られなかった米国は、2003年に再びイラク侵攻に踏み切る。だが、この覇権的行動が、新たなエネルギー危機、テロリズムの拡散、米一極集中の凋落といった現象を招いた。
8 エドワード・サイードの著作から 中東紛争の根底にある対立とは、アラブとイスラエルをめぐる歴史的・民族的・宗教的な混乱とされる。だが、思想家のサイードは『オスロからイラクへ〜戦争とプロパガンダ』等の著作を通じ、パレスチナ紛争の本質を「パレスチナ人が人間として扱われない問題にある」と見抜いていた。〝イスラム対西欧〟といった政治誘導や分断に警鐘を鳴らし、〝大義〟の犠牲こそパレスチナ人であると訴えた。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆視聴期間は一般申込開始(2025/6/3)から学期終了翌月末(2025/10/31)までになります。一般申込開始(2025/6/3)以降はお申し込みいただけましたら視聴可能になります。
◆この講座は
 2024年度 冬期 「戦場から読み解く世界―戦争とノンフィクション」 (01/11〜03/01 土曜日、全8回)
 で開講した講座のアーカイブ講座になります。
◆途中映像音声の乱れるところがありますがご了承ください。
◆オンデマンド講座のため講義内容に関する質疑は受付けいたしかねます。あらかじめご了承お願いいたします。

講師紹介

横村 出
ジャーナリスト、作家
1962年生まれ。早稲田大学政経学部政治学科卒・大学院政治学研究科博士前期課程修了。朝日新聞社入社後、ロシアのサンクトペテルブルク国立大学へ留学し、モスクワ特派員になる。ロシア東欧・中東アフリカなどで戦争や革命を取材した。現在、米ロと関わる国際紛争や安全保障をテーマにするほか、小説を執筆している。著書に、プーチン政権の政治と戦争の闇を記録したルポ『チェチェンの呪縛 — 紛争の淵源を読み解く』(岩波書店)、現代世界を点描した小説『漆黒のピラミッド — 世界をめぐる十の短編』(新潟日報メディアネット)などがある。詳しくは、公式サイト(izuruyokomura.com)をご覧ください。
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