ジャンル 世界を知る

早稲田校

【対面+オンラインのハイブリッド】「倭寇」からみる中国史

  • 冬講座

岡本 隆司(早稲田大学教授、京都府立大学名誉教授)

曜日 金曜日
時間 13:10~14:40
日程 全8回 ・01月09日 ~ 02月27日
(日程詳細)
01/09, 01/16, 01/23, 01/30, 02/06, 02/13, 02/20, 02/27
コード 140363
定員 41名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 23,760
ビジター価格 受講料 ¥ 27,324

目標

・中国史・日本史を世界史・アジア史という広い文脈からみなおす。

講義概要

ユーラシア大陸の遊牧と農耕の境界で、交易と文明が発祥した。その東方・東アジアで早くから文明を発達させ、国家を形成したのが中国であり、独自の国家体制と社会構成を構築していった。14世紀と17世紀の「危機」を経て世界史的転換に際会し、中国の体制も変化を余儀なくされた。それを典型的に示す歴史事象が「倭寇」である。そしてそれは近現代の日本の出発とも重なる。中国史・日本史はアジア史・世界史抜きでは成り立たない。「倭寇」を基軸に、現代におよぶその歴史を一望していきたい。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 01/09 アジア史と中国文明―生態環境と中国史― ユーラシアの生態環境は乾燥vs湿潤=草原遊牧vs農耕定住から成り立っており、これがアジア史の主要舞台となる。その地域構造が二元世界のダイナミズムを形づくり、とりわけ境界地帯が重要である。その典型として東アジア=中国が位置づけられる。遊牧と農耕の境界地帯=シルクロードでは都市国家が発展し、東端の黄河文明もやはり同じであった。そこから秦漢帝国への発展、寒冷化の衝撃・波動、遊牧民の移動・南下による帝国の解体と分立をへて、三国六朝・隋唐時期の統治体系・社会構造の再編、そして唐宋変革へ至る歴史を論じる。
2 01/16 モンゴル時代―アジア史の集大成へ― まず唐宋変革の歴史を論じ、中国・アジアが新しい時代に入ったことを確認したうえで、アジアの多元化の加速に転じる。ついで唐宋変革以後、気候が温暖化に転じたユーラシア全域での経済発展と政体の変化を論じ、分業と共存の趨勢を指摘する。多国共存体制に着眼し、また草原世界の隆替にも論及して、ユーラシア全域を陸海に覆ったモンゴル帝国の建設と全盛にまで説き及ぶ。
3 01/23 アジア史から世界史へ―シルクロードとポストモンゴル― 「14世紀の危機」・寒冷化と疫病蔓延にともなうモンゴル帝国の崩潰からシルクロード・内陸アジアの地盤沈下と海洋世界の発展を概論する。東西ユーラシアが分離して、東アジア内部も解体し、モンゴルから独立した明朝が成立する。中央アジアにモンゴル帝国を継承したティムール朝が興起したものの短命におわる。
4 01/30 世界システムの形成―ポストモンゴルと大航海時代― ティムール朝を後継したオスマン・サファヴィー・ムガルはすべて海に向いた帝国で、シルクロード・中央アジアの地盤沈下と海洋の勢威増大を物語る。地中海の繁栄を奪った西欧の興起によるもので、大航海時代を通じた環大西洋経済圏の成立と世界システム=世界経済の構築がはじまる。
5 02/06 明代の転換―ポストモンゴルの東アジア― 東アジアで14世紀後半、モンゴルから独立して成立した明朝の興亡を中心に、大転換する東アジア世界の16世紀までの様相を描き出す。明朝の貿易統制・反商業=現物主義・農本主義という寒冷化に対応する体制は、以後の中国に甚大な影響をあたえた。経済が回復する15世紀には、その矛盾が明らかになり、中国内地、とくに南方の経済が発展すると、政府権力と民間社会の矛盾と乖離が拡がっていき、地域間分業と商業化の趨勢のなかで、政府の制度・体制は形骸化し、内外の治安の悪化を招くようになる。
6 02/13 海外貿易と対外危機―「倭寇」の生成へ― 16世紀以降の東アジアの推移を論じる。長城と海禁によって貿易統制を布いていた明朝の体制は、16世紀半ばまでに破綻が露呈した。こうした経済政治動向のなかで、日本との関係で重要なのが「倭寇」である。社会の多元化を深めた東アジアのなかで各勢力はいかに共存するのか。明朝の体制で不可避的に生成した「倭寇」をみることで、全体的な歴史の理解を深める。
7 02/20 「倭寇的状況」 日本史に目を転じ、15世紀・16世紀の大航海時代にいたる世界と戦国にいたる列島の様相を中心に、そこで中国との関係がいかに作用していたかに着眼する。「倭寇」は日本史だけでは理解できない。中国で当時呼び慣わした「北虜南倭」(北のモンゴル・南の倭寇)という歴史事象は、世界史の政治経済の動向から生じていたので、中国史、世界史の枠組みで「倭寇」をみなおす必要がある。
8 02/27 「倭寇」とは何か ―明清史・近現代史と「倭寇」― ポスト倭寇の東アジアを概観する。「倭寇」は収束しても「倭寇的状況」は消滅しなかったし、倭寇的構造はずっと存続転化していった。中国の清朝の統治はその後継であり、日本近世の展開はいわばそのアンチテーゼでもあった。そうした18世紀以降の歴史を手がかりに、近現代の日本・中国・東アジアにも一定の視座を獲得したい。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合の補講は、3/6(金)を予定しております。
◆本講座は対面でもオンラインでも受講できるハイブリッド形式の講座です。対面・オンラインのご都合のよい形式でご受講いただけます。
◆講師は早稲田校の教室で講義し、その講義がオンラインで同時配信されます。
◆対面で受講するときは、「受講証兼教室案内」に記載された教室へお越しください。「受講証兼教室案内」は通常の対面講座と同様に開講が確定してから送付されます。
◆オンラインで受講するときは、マイページからご受講ください。
◆オンラインでの受講を予定している方は、お申し込みの前に必ず「オンラインでのご受講にあたって」をご確認ください。
◆本講座の動画は、当該講座実施の翌々日(休業日を除く)17:30までに公開します。インターネット上で1週間のご視聴が可能です。視聴方法は、以下をご確認ください。
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テキスト

テキスト
岡本 隆司『倭寇とは何か―中華を揺さぶる「海賊」の正体』(新潮社)(ISBN:978-4106039225)

講師紹介

岡本 隆司
早稲田大学教授、京都府立大学名誉教授
京都市生まれ。博士(文学、京都大学)。専門分野は東洋史学、近代アジア史。宮崎大学教育学部講師、同大学教育文化学部助教授、京都府立大学文学部教授を経て現職。中国を中心としたアジア史を西洋近代の関係から、政治外交・社会経済とひろい視野で解き明かす。主著に『近代中国と海関』(大平正芳記念賞受賞)、『属国と自主のあいだ』(サントリー学芸賞受賞)、『中国の誕生』(樫山純三賞、アジア太平洋賞受賞)、『世界史序説』、『中国史とつなげて学ぶ日本全史』、『「中国」の形成』、『明代とは何か』、『悪党たちの中華帝国』、『物語 江南の歴史』、『倭寇とは何か』などがある。

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