ジャンル 文学の心

早稲田校

松本清張を読む

  • 冬講座

高橋 敏夫(早稲田大学名誉教授、文芸評論家)

曜日 火曜日
時間 13:10~14:40
日程 全4回 ・02月03日 ~ 02月24日
(日程詳細)
02/03, 02/10, 02/17, 02/24
コード 140152
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 11,880
ビジター価格 受講料 ¥ 13,662

目標

・松本清張が創出した社会派ミステリーの意義をたしかめる。
・各作品がどのように人と社会と時代にむきあったかを確認する。
・松本清張のように「何故だろう」という問いを日々の生活に向ける。

講義概要

松本清張がこの混乱と戦争の時代に大々的に復活しています。松本清張は、人と社会の暗い秘密をさぐりあて、それを暴露し、告発しつづけました。今回精読するのは次の4作品です。文壇デビュー作にして直木賞候補作ともなった短篇歴史小説『西郷札(さつ)』。中央からは認められなかった小倉在住の天才女性俳人がモデルの『菊枕』。普通の職業人それぞれの有する特殊な能力が悲劇をたぐりよせてしまう『声』。好きな女を囲った気の小さな男がたどる殺人者の暗い道のつづく『鬼畜』。なおテキスト指定はしませんが、新潮文庫版傑作短編集三(西郷札)、同一(菊枕)、同五(声、鬼畜)が入手しやすいでしょう。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 02/03 文壇デビュー作にして直木賞候補作ともなった短篇歴史小説――『西郷札(さつ)』を精読する 「週刊朝日」の百万人の小説に応募し入選した作品。何のために書いたかとの新聞社の同僚の問いに、「生活からの逃避」と答えている。この作品をもって、隠れ、隠されてしまった出来事が物語として暗くよみがえる清張世界は始まった――。
2 02/10 中央からは認められなかった小倉在住の天才女性俳人――『菊枕(きくまくら)』を精読する モデルは俳人杉田久女で、その夫は小倉中学の図画教師だった。「足袋つぐやノラともならず教師妻」。「白妙の菊の枕を縫ひ上げし」の菊枕は、師と仰ぐ高浜虚子に捧げられたが喜ばれなかった。作品には、とびぬけた才能ゆえに周囲から厭われ遠ざけられた久女への清張の共感が溢れる。
3 02/17 普通の職業人それぞれの有する特殊な能力が悲劇をたぐりよせる――『声』を精読する 特殊な能力は特別な人物にだけ属するのではなく、普通の職業人の日々の仕事から得られることもある。清張の勤務していた新聞社には、数百名の社員の声を憶えている電話交換手がいた。作品はこの体験から発想された。
4 02/24 好きな女を囲った気の小さな男がたどる殺人者の暗い道――『鬼畜』を精読する 本作品は、当時二つの大きな汚職事件を手がけて、名が広く知れわたっていた検事から聞いた話を素材にしている。その検事とは新宿の食べもの屋や中野の料理屋に度々同行して種々様々な話を聞いたという。清張物語の源のひとつにちがいない。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合の補講は3/3(火)を予定しています。

講師紹介

高橋 敏夫
早稲田大学名誉教授、文芸評論家
1952年香川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、同大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。早稲田大学文学部・大学院文学研究科教授を経て、現在、早稲田大学名誉教授。日本近現代文学研究。『松本清張 「隠蔽と暴露」の作家』(集英社新書)、『藤沢周平 負を生きる物語』(同)、『井上ひさし 希望としての笑い』(角川新書)、佐高信との長篇対談など多くの著作がある。

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