ジャンル 現代社会と科学
中野校
ニュースの街を歩く
カベルナリア 吉田(紀行ライター)

曜日 | 土曜日 |
---|---|
時間 | 15:05~16:35 |
日程 |
全6回
・10月04日 ~
11月15日 (日程詳細) 10/04, 10/11, 10/18, 10/25, 11/08, 11/15 |
コード | 330718 |
定員 | 24名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 17,820 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 20,493 |
目標
・事件や事故を通じてその名を知られ、報道で頻繁に取り上げられた地方の街について、講師の実踏ルポを通じて正しく知る。
・地方都市の出来事や実態に理解を深め、中央の都市にいては気づきにくい「日本の側面、裏面」を知る。
・一部の報道の偏向を見抜き、印象操作されない習慣を身につける。
講義概要
テレビに新聞、週刊誌にインターネット、連日さまざまな事件が報道され、私たちの日常にはニュースがあふれています。その中には特定の意図を伴い、受け手に偏った印象を与えようとする、作為的な報道もあります。東京から遠く離れた地方都市や地域について、事実と異なるイメージを植えつける報道も少なくありません。ニュースは画面でも誌面でもなく、現場で起こっています。本講座では事件や話題の現場となった街を、講師が自身の足で歩き、見て感じたことをそのまま客観的に伝えます。講義を通じ「日本の今」「地方の現実」「報道の虚実」について、理解を深めていただければ幸いです。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
---|---|---|---|
1 | 10/04 | 「4630万円の街はその後どうなった?」山口県阿武町 | 萩市に隣り合う山陰の小さな町・阿武町で、新型コロナ流行下の特別給付金の誤送金が発生し、463世帯分4630万円がひとりの男性A氏の元に振り込まれた。巨額の給付金を、A氏がオンラインカジノに投資したことが発覚して騒動は拡大し、メディアは事件を面白おかしく報道。阿武町は「道の駅」発祥の地のひとつであり、保守王国・山口県にあって軍事施設イージス・アショアの設置に反対した骨太な一面もあったが、そうした事実は全く報道されなかった。新型コロナ、給付金、移住そしてユーチューバー。現代社会のキーワードを読み解きつつ、昨今の報道姿勢についても一石を投じたい。 |
2 | 10/11 | 「南海トラフと原発」静岡県旧浜岡町(現:御前崎市) | 発生すれば前代未聞の被害が予想される、南海トラフ地震の懸念が絶えない。その想定震源域内に、営業運転開始から50年を迎える「浜岡原発」がある。原発は海に面し住宅街にも近く、大地震と津波が発生したら、壊滅的被害は避けられない。一方で地元経済は原発に大きく依存している。震災の不安と隣り合わせで人々が暮らす原発の街を歩き、薄氷を踏む日本のエネルギー政策の現実を考察する。 |
3 | 10/18 | 「松川事件の現場を歩く」福島市松川町 | 戦後GHQ統治下の日本で、国鉄(当時)の列車にからむ事件が立て続けに起こった。下山事件と三鷹事件、そして列車往来妨害と脱線により3名が死亡した松川事件。当初は大量の人員整理に反対する労組構成員の犯行と目され、20名が逮捕され、一時は5名に死刑判決が下った。その後冤罪が発覚して20名は無罪になったが、一方で真犯人は判明せず、事件は未解決のままである。冤罪を生んだ警察の捜査と検察、そして有罪を印象づけた無責任な報道。警察とは、司法とは、報道とは? 日本の社会規範の根底を揺るがした事件の現場を歩き「正義とは何か」を改めて見つめ直す。 |
4 | 10/25 | 「華麗なる一族 栄華の軌跡」福岡県飯塚市 | 明治時代に炭鉱事業を始め、現在はさまざまな事業を展開する一大企業グループ。皇族と姻戚関係を結び、一族から総理大臣も輩出して「九州の帝王」とも呼ばれている。拠点の飯塚市を歩くと学校に病院そして高齢者介護施設、工場から遊戯場まで同グループの施設ばかりで、まさに「ゆりかごから墓場まで」企業城下町に来たことを実感する。そして同グループも関係する血族の「政治の私物化」が脳裏をかすめ、虚しさもこみ上げる。地元福岡の人が「帝国」と呼ぶ街を歩いて覚えた、閉塞感ほか現場の空気をお伝えする。 |
5 | 11/08 | 「ウトロで違和感を覚えた」京都府宇治市 | 朝鮮半島出身者の集住地区として知られる、宇治市伊勢田町の小字ウトロ。戦前の京都飛行場建設時に半島出身者が集まり、戦後も多くの人々がそのまま住んだが、居住は「不法占拠」とされて訴訟に発展、一時は住民側が退去を求められた。だが様々な変遷を経て一帯は再開発され、住民たちは同地区に建設された市営住宅に住むことで落着した。2022年には「ウトロ平和祈念館」が開館し、今やウトロは気軽に探訪できる雰囲気だが、一方で2021年にはヘイトクライム男による放火事件も発生している。そして現場を歩き「現状は解決の着地点なのか?」違和感も覚えた。祈念館と道を一本挟み、某施設が隣に立つ意味は? 実踏ルポを通じて、偏見や差別がもたらしたものを考えたい。 |
6 | 11/15 | 「白昼の駅前に響いた銃声」奈良市大和西大寺駅前 | 近鉄電車の大和西大寺駅は大阪、京都、橿原、奈良の4方面に向かう路線が交差する、奈良県屈指の交通の要衝だ。駅開業から100年超、特急をはじめ優等列車が停まり乗降客も多く、平城宮跡の最寄り駅でもある。だがそんな由緒正しい駅前で2022年7月8日午前11時31分、演説中の安倍晋三元総理が銃撃され死亡する大事件が発生した。事件は国葬の是非や統一教会問題へと波及。一方でモリカケ問題や「桜を見る会」問題の解明が、弔いムードに流されてしまった印象も残る。いにしえの都が近く「銃撃」とは程遠い駅前を歩き、事件が社会に遺したものを考察する。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆休講が発生した場合の補講日は11月22日(土)を予定しております。
講師紹介
- カベルナリア 吉田
- 紀行ライター
- 1965年北海道生まれ、早稲田大学卒、読売新聞社他を経て2002年からフリー。車を使わず自分の足で歩く「実踏の旅」を重ね、沖縄と島を中心に全国を歩き、紀行文を執筆。近年は出身地である北海道も歩き続けている。最新刊は『コリアンタウンでシメのライスにカルビを乗せた』(ユサブル)。近著は『秘境駅で途方に暮れた』(イカロス出版)、『アイヌのことを考えながら北海道を歩いてみた』(ユサブル)、『新日本エロい街紀行』(アルファベータブックス)。ほかに『沖縄戦546日を歩く』(彩流社)、『狙われた島』(アルファベータブックス)など旅に関する著書多数。趣味はレスリング、バイオリン、料理。