ジャンル 人間の探求

早稲田校

神か仏か 信じ崇めるのは、どちら?

  • 秋講座

正木 晃(宗教学者)

曜日 水曜日
時間 15:05~16:35
日程 全10回 ・09月24日 ~ 11月26日
(日程詳細)
09/24, 10/01, 10/08, 10/15, 10/22, 10/29, 11/05, 11/12, 11/19, 11/26
コード 130516
定員 30名
単位数 2
会員価格 受講料 ¥ 29,700
ビジター価格 受講料 ¥ 34,155

目標

・神と仏の違いと相互の関係を多方向から考察します。
・神も仏も、時代や地域によって多様に変化し、そう簡単には把握できない事実を学びます。
・神と仏の関係から、日本人の精神世界を解明します。

講義概要

神とは何か。仏とは何か。両者はどこがどう異なるのか。共通する要素はあるのか。これらの問いに答えるのは、実はかなり難しいのです。そもそも神も仏も、歴史をたどるとすぐ明らかになるとおり、多種多様で、こうだ!と断言できないのです。たとえばキリスト教やイスラム教のような、セム型一神教が崇める唯一絶対にして全知全能、この世の全存在の創造主としての神と、日本のような多神教的な世界観によって育まれてきた神とは、大きく異なります。仏も、原始仏教の段階と後発の大乗仏教の段階とでは、同列に論じられません。この講座ではできる限り多くの方向から神と仏を考察します。宗教が秘める複雑さを理解いただければ、と思います。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 09/24 神とは/仏とは 神も仏も、その歴史をたどるとまさに多種多様です。言い換えれば、簡単には「神はこうで、仏はこうだ」と定義できません。実は両者の関係はかなり曖昧なのです。この真実を知ることが、まず大事です。
2 10/01 仏陀と神々/悪魔 仏教の開祖となった仏陀(ゴータマ・ブッダ)は生涯にわたり、神々のみならず、悪魔と付き合い続けました。ちなみに、仏陀(ブッダ)という称号は「目覚めた者」という意味で、仏教の開祖だけでなく、仏教以外のインド宗教でも使われていました。つまり仏陀はたくさんいたのです。
3 10/08 神になる仏陀 原始仏教の段階では仏陀は先達とか指導者と認識されていましたが、やがて人でありながら人以上の存在と認識されるようになりました。そして後発の大乗仏教の段階になると、「神格化」が進み、ほとんど神になりました。さらにゴータマ・ブッダ以外に、阿弥陀仏や大日如来という永遠不滅の存在が登場してきます。
4 10/15 一神教の神vs.日本の神 戦国時代の後期に、キリスト教信仰がもたらされたとき、日本人は初めて「一神教の神」と出会いました。日本人にとっての神は文字どおり「神々」、つまり多神教の神たちだったので、唯一絶対にして全知全能、しかも人間を含む全世界の創造主という存在はまったく未知だったのです。
5 10/22 日本の神vs.中国の神vs.チベットの神 日本、中国、チベットは仏教が伝来した地域であり、しかもその仏教が大乗仏教という点では共通しています。しかし神についてはかなり異なります。日本には在来の神々、中国には道教的な神々、チベットにはすでにポン教という宗教の神々が存在していたからです。
6 10/29 崇仏か排仏か―仏教伝来の真相 日本に仏教が伝来したとき、崇仏派と排仏派が激しく対立し、戦闘状態になったと教えられてきました。ところが最近の研究によれば、崇仏派と排仏派の対立という構図は、明治維新以降に提唱されたことがわかってきました。その一方で、蘇我氏と物部氏が対立したことは事実です。では、なにが両氏族の対立した原因だったのでしょうか。
7 11/05 空海―神と仏の媒酌人 明治維新まで、日本の宗教界では神と仏が仲良くしてきました。そこには空海が果たした大きな役割があったのです。それはたとえるならば、媒酌人のようなものでした。空海は真言密教の理論をもちいて、神を仏教の世界観にたくみに取り込んだのです。鎌倉仏教の親鸞や日蓮も、その路線上にありました。
8 11/12 日本在来の神か外来の神か 日本には名前の末尾に「天」がつく神がたくさんいます。これらの神はほとんどインドのヒンドゥー教から仏教に鞍替えした神たちです。また七福神のうち六神は外来の神です。つまり日本人の多くは、その神が在来の神なのか、外来の神なのか、あまり拘らず、同じように信仰の対象としてきたのです。
9 11/19 仏教か神道か 日本の宗教界において、いわゆる神道が演じた役割は、明治維新まであまり大きくなかったのです。中世中期まで、神道の理論はほとんどの場合、仏教僧が構築してきたからです。密教僧が多かったのですが、浄土真宗本願寺派の僧侶も、日本の神々はインド由来の仏菩薩に起源があると論じています。
10 11/26 キリシタンの神vs.仏教/日本の神 キリシタンたちは日本仏教や日本の神々に、どのように対応したのでしょうか。一言でいうなら、暴力まですすんで行使する、徹底的な抹殺でした。それはまさに一神教と多神教の、絶対に相容れないところだったのです。日本では現在でもキリスト教徒の割合が総人口の1%を決して超えない原因なのかもしれません。

講師紹介

正木 晃
宗教学者
1953年、神奈川県小田原市生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。専門は宗教学(日本仏教・チベット仏教)。文献研究に留まらず、現地調査を実施しチベット・ヒマラヤ地域の調査は20回に及ぶ。高度でありながら誰でも理解できる仏教学を志向。著作は『「ほとけ」論』『現代日本語訳 法華経』など多数。

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