ジャンル 芸術の世界

早稲田校

宮崎駿の世界―〈視覚的文学〉としてのアニメーション映画

  • 秋講座

米村 みゆき(専修大学教授)

曜日 金曜日
時間 10:40~12:10
日程 全10回 ・10月03日 ~ 12月19日
(日程詳細)
10/03, 10/10, 10/17, 10/24, 11/07, 11/14, 11/28, 12/05, 12/12, 12/19
コード 130476
定員 30名
単位数 2
会員価格 受講料 ¥ 29,700
ビジター価格 受講料 ¥ 34,155

目標

・宮崎駿監督のアニメーション映画についての理解を深める。
・映像作品と文学作品の違いについて考える力を身につける。

講義概要

宮崎駿監督は『本へのとびら 岩波少年文庫を語る』という著作を持つなど、文学作品に対する深い理解と関心を有しています。本講座では、宮崎監督のアニメーション作品が、国内外の文学作品から受けた影響を主な手がかりとして、その独自の映像世界の魅力をひもといていきます。スタジオジブリ設立以前の「世界名作劇場」シリーズなどの作品も取り上げ、高畑勲監督の演出手法やその影響についても探ります。また、宮崎作品に影響を与えた海外文学や映像作品も参照しながら、宮崎監督の文学的、芸術的な側面を多角的に検討していきます。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 10/03 『アルプスの少女ハイジ』と高畑勲の手法 1974年に放送されたテレビアニメ『アルプスの少女ハイジ』は、高畑勲による演出と宮崎駿による場面設計という優れた制作陣のもと、海外でのロケーションハンティングによる綿密な取材が作品に反映されています。自然描写のみならず、登場人物の心の機微が丁寧に描かれており「世界名作劇場」シリーズの先駆けとなりました。文学作品がアニメーションとして成功を収めた一例としてその魅力を探ります。
2 10/10 『母をたずねて三千里』とネオレアリズモ 1976年に放映されたテレビアニメ『母をたずねて三千里』は、エドモンド・デ・アミーチスの『クオレ』に収められた短編をもとに、深沢一夫の脚本と高畑勲の演出によって、一年間の放映にふさわしい長編作品へと再構成されたものです。イタリア文学や映画に見られるネオレアリズモ的な表現手法が色濃く反映されており、ペッピーノ一座など、主人公を取り巻く人物たちの描写を通して、高畑監督の手腕を見てゆきます。
3 10/17 『未来少年コナン』と『赤毛のアン』 『未来少年コナン』(1978年)は、宮崎駿が初めて監督を務めた作品であり、「漫画映画」としての特色が際立っています。一方で、高畑勲が演出を担当した1979年の『赤毛のアン』は、日常を丹念に描く演出手法によって高い評価を得ている作品です。両者を比較しながら、宮崎監督の演出手法について考えてゆきます。
4 10/24 『天空の城ラピュタ』と児童文学作品 1986年に公開された『天空の城ラピュタ』は、原作を持たず、宮崎駿監督による「オリジナル作品」と謳われています。しかし、スウィフトの『ガリヴァー旅行記』やスティーブンソンによる『宝島』など複数の児童文学作品から着想を得たと考えられます。なかでも宮沢賢治の童話「貝の火」に着目することで、『天空の城ラピュタ』が内包する興味深いテーマが見えてきます。
5 11/07 『となりのトトロ』と宮沢賢治の童話 『となりのトトロ』(1988年)の制作において、宮崎駿監督は宮沢賢治の童話『どんぐりと山猫』がもとの発想だったと発言しています。結核で早逝した賢治の妹や、サツキとメイの姉妹が引越してきた家との関連などをお話しします。
6 11/14 『魔女の宅急便』と角野栄子の童話 『魔女の宅急便』(1989年)の原作は、児童文学作家の角野栄子さんの同名童話です。この講義では、宮崎駿監督が、いかに原作童話を深く読解した上でアニメーション映画化を行ったのか探ってゆきます。
7 11/28 『耳をすませば』と宮崎駿映画 1995年に公開された『耳をすませば』は、近藤喜文が監督を務めたアニメーション映画ですが、脚色や絵コンテは宮崎駿によるものであり、作品には宮崎作品ならではテーマが色濃く表れています。同じく多摩ニュータウンを舞台とした高畑勲監督の『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994年)との関係にも目を向けながら、作品世界を探ってゆきます。
8 12/05 『もののけ姫』が目指したもの 1997年に公開された『もののけ姫』は、宮崎駿監督による「時代劇」と位置づけられ、室町時代の日本が舞台となっています。なぜこの時代が選ばれたのか、また、タタラ場と呼ばれる製鉄の村で女性たちが労働者として描かれているのはなぜか。ほかの宮崎作品とも比較しながら、この作品が何を目指しているのかを探ります。
9 12/12 『ハウルの動く城』と〈視覚的叙述〉 宮崎駿監督の映画の中には、文学作品を読むときの「行間」が表現されています。『ハウルの動く城』(2004年)の原作者のダイアナ・ウィン・ジョーンズさんのインタビューを交えながら、宮崎監督の映像世界の魅力について考えてゆきます。
10 12/19 『崖の上のポニョ』と夏目漱石の小説 『崖の上のポニョ』(2008年)の制作時、宮崎駿監督は夏目漱石全集を読んでいました。映画の主人公の少年の名前は、夏目漱石の初期三部作の『門』の主人公から引用されています。映画は、いかに漱石を引用したのか、また映画の背景となった舞台(広島県福山市鞆の浦)についてもお話します。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆2024年度秋学期の「宮崎駿と文学の世界」と一部重複しますが、新たな内容を加え再構成したものです。
◆『映像作家 宮崎駿 〈視覚的文学〉としてのアニメーション映画』をお読みいただくと講義の理解に役立ちます。

備考

※講師都合により9/26は休講となります。補講は12/19に行います。

講師紹介

米村 みゆき
専修大学教授
専修大学文学部日本文学文化学科教授。日本近現代文学、アニメーション文化論。博士(文学)。名古屋大学大学院博士課程を経て日本学術振興会特別研究員(PD)。2009年より専修大学に在籍。ブリテッシュコロンビア大学アジア研究センター客員教授(2019年)。主要著書に『映像作家 宮崎駿 〈視覚的文学〉としてのアニメーション映画』(2023年)、『ジブリ・アニメーションの文化学 高畑勲・宮崎駿の表現を探る』(共編著、2022年)、『アニメーション文化 55のキーワード』(共編著、2019年)、『宮沢賢治を創った男たち』(2003年)で第28回日本児童文学学会奨励賞、『映像作家 宮崎駿〈視覚的文学〉としてのアニメーション映画』で日本アニメーション学会学会賞2024を受賞。
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