ジャンル 芸術の世界
早稲田校
サティとドビュッシーの先駆者論争
青柳 いづみこ(ピアニスト、文筆家)
曜日 | 火曜日 |
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時間 | 15:05~16:35 |
日程 |
全6回
・10月28日 ~
12月02日 (日程詳細) 10/28, 11/04, 11/11, 11/18, 11/25, 12/02 |
コード | 130456 |
定員 | 30名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 17,820 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 20,493 |
目標
・没後100年を迎えた奇才エリック・サティの生涯を、最新の情報を通して知る。
・4歳年上の天才クロード・ドビュッシーとの関わりについて理解を深める。
・2人の友情と確執を通して、19世紀末から20世紀初頭の文化の特徴を認識する。
講義概要
エリック・サティとクロード・ドビュッシーは、1890年代にモンマルトルの文学酒場で出会い、友情を結ぶ。先に世に出たドビュッシーは、『ジムノペディ』を管弦楽化するなど、サティを物心両面で庇護する。1910年代、ラヴェルやコクトーがサティを新芸術の旗手に押し上げると、両者は次第に疎遠になり、バレエ音楽『パラード』で決別する。本講座では、2人の作品を年代ごとに比較し、実演や録音や通してわかりやすく解説する。2人のスタンスを通して、19世紀末と20世紀初頭の文化の違いを浮き彫りにする。青柳いづみこ著『サティとドビュッシー 先駆者はどちらか』(春秋社)を参考図書としますが、購入は必須ではありません。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 10/28 | 2つのサラバンド | 1890年代初めにモンマルトルの酒場で出会って以来、サティとドビュッシーは親密な友情を育む。象徴派やデカダン詩人が集う『独立芸術書房』での活動や、オカルティズムとの関わりとそこから生まれた音楽について音源を聴きながら解説する。1887年に書かれたサティの『サラバンド』と、1894年作のドビュッシーの『サラバンド』を、演奏を通じて比較検討する。 |
2 | 11/04 | ワーグナーとパリ万博 | サティとドビュッシーは、ともに1889年のパリ万博で東欧やアジアの音楽や舞台芸術に接して強い影響を受けた。ここでは、ルーマニア館の民族音楽から生まれたサティの『グノシェンヌ』や、ジャワのガムラン音楽に影響を受け、ワーグナーからの影響を脱出したドビュッシーの作品について、音源を聴き、一部実演を交えて解説する。 |
3 | 11/11 | 『ペレアスとメリザンド』と『梨の形をした3つの小品』 | モンマルトルの酒場でピアノを弾きながら毎週ドビュッシーの家で昼食をとっていたサティは、二人の「共同事業」と捉えていたドビュッシーのオペラ『ペレアスとメリザンド』の成功で強いショックを受ける。ここでは、「君はもう少しフオルムの感覚を身につけるべきだ」というドビュッシーの忠告を受けて作曲された『梨の形をした3つの小品』を取り上げる。 |
4 | 11/18 | ラヴェルと独立音楽協会 | モンマルトルを離れ、パリ郊外のアルクイユで地域活動に従事していたサティをパリの楽壇に引き戻したのは、幼い頃からサティの音楽を愛したラヴェルだった。ラヴェルは、1911年1月に「独立音楽協会」でサティの初期作品を紹介し、その先駆者性を強調した。ここでは、その折りのプログラムを一部実演を交えて紹介し、次世代に与えた影響について解説する。 |
5 | 11/25 | 『パラード』初演と友情の終焉 | ラヴェルの後を継いでサティを支援したのは詩人のジャン・コクトーだった。1917年、コクトーの台本、ピカソの舞台装置、サティの音楽で上演されたバレエ音楽『パラード』はプーランクはじめのちに6人組となる若い世代に強烈な印象を与えた。しかし、ドビュッシーは初演の舞台について沈黙を守り、30年続いた友情に終止符が打たれた。ここでは一部実演を交えて『パラード』を解説する。 |
6 | 12/02 | ドビュッシー VS サティ | フランスの音楽学者アンヌ・レエによれば、「ドビュッシストとサティストは常にいがみあっていた」という。ドビュッシーの後期作品を高く評価したフランスの前衛作曲家ピエール・ブーレーズと、サティの作品を賞賛し、演奏したアメリカ実現音楽の先駆者ジョン・ケージも同様だった。ここでは、さまざまな意見を通して、二人の先駆者性について考える。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆青柳いづみこ著『サティとドビュッシー 先駆者はどちらか』(春秋社)はテキスト指定ではありません。
講師紹介
- 青柳 いづみこ
- ピアニスト、文筆家
- 1976年、マルセイユ音楽院首席卒業。1980年ピアニスト・デビュー。1989年、東京芸術大学大学院博士課程修了。『ドビュッシーと世紀末の美学』で学術博士号。1990年、文化庁芸術祭賞。演奏と文筆を両立させ、2024年までに著作は34作、CDは25点を数える。『翼のはえた指』で吉田秀和賞、『6本指のゴルトベルク』で講談社エッセイ賞、『ロマンティック・ドビッュシー』でミュージックペンクラブ音楽賞。近著に『サティとドビュッシー 先駆者はどちらか』(春秋社)、CDに『逃げ出させる歌』(ALM)。大阪音楽大学名誉教授。日本ショパン協会、日本演奏連盟理事。兵庫県養父市芸術監督。