ジャンル 文学の心
早稲田校
遠藤周作の文学と神学
古橋 昌尚(清泉大学教授)
曜日 | 土曜日 |
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時間 | 15:05~16:35 |
日程 |
全6回
・09月27日 ~
12月06日 (日程詳細) 09/27, 10/11, 10/25, 11/08, 11/22, 12/06 |
コード | 130159 |
定員 | 30名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 17,820 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 20,493 |
目標
・遠藤周作の生涯、文学と神学の関係について概要を学びます。
・遠藤周作の代表作をキリスト教神学の観点から読み直します。
・遠藤が日本人にもわかるキリスト教を目ざして創作した次第を学びます。
講義概要
マーティン・スコセッシ監督が遠藤周作の『沈黙』につづいて、『イエスの生涯』を映画化する計画です。物語を「現代」に設定したアダプテーションになり、時を超えたメッセージを伝えたいようです。昨年度は遠藤の生誕百年記念を終えるにあたって、遠藤の代表作、『沈黙』『深い河』『わたしが・棄てた・女』『死海のほとり』をキリスト教の観点から読みました。今年は、信仰、神概念、罪と救いの神秘、啓示、信仰と理性、文化的受肉という六つの神学的テーマを設けてそこから遠藤の諸作品を読み直し、作品に込められた意図をより鮮明にまた深く理解してゆきます。神学について不慣れな方でもわかるように学んでいけたらと考えています。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 09/27 | 信仰――「究極的かかわり」と疑いを評価する信仰論 | 信仰に疑いや迷いはつきもので、遠藤も信仰とは悩みながらも、問い直しては進んでゆくものと考えました。作品でも「究極的にかかわっている」登場人物を描くことで、神との格闘、魂の物語を紡いでいます。遠藤の信仰の経緯、信仰と創作、作家活動がどう関係しているかも学びます。 |
2 | 10/11 | 神概念――超越、内在、パーソナル、母なるもの、働き | 遠藤の神についての考えとイメージについて扱います。母なるもの、人生に働きとして現われる神、超越、内在、パーソナルというかかわりから神を捉えます。遠藤は物語において登場人物と神とのかかわりの進展を、遠く隔たった神が近しいもの、人に寄り添うものとなる過程を描きます。 |
3 | 10/25 | 罪と救い――「幸いなる罪」の神秘 罪にみる救い | 遠藤は罪において救いの可能性がある、そこに向かう萌芽があると考え、それにそって物語を創りあげました。人間の罪や過ちの物語を設定して、それと対峙することで登場人物がいかに救いに至るかを描きます。「幸いなる罪」の神秘が見いだされ、物語は救いを仄めかして終わります。 |
4 | 11/08 | 啓示――出来事をとおして自らを顕わにする神 | 神は歴史において自らを顕わにします。人々の人生、出来事、かかわりを通してその姿を現わします。人は人生をふりかえることで、そこに神が「働いていた」ことを、後になって悟ります。痕跡を通して神の現存を感じ、信仰において「知る」という要素のあることが仄めかされます。 |
5 | 11/22 | 信仰と理性――信における学び 神を知り自己を知る | 遠藤の小説は信仰の物語で、人が神の片鱗に触れ、神を知ってゆくという過程が描かれます。主人公が信において神に気づき、神の存在への信、神について言われていることへの信、そして神という人格との一致という信へと進展してゆきます。作品でこの主人公の信の道行きを辿ります。 |
6 | 12/06 | 文化的受肉――日本人にわかるキリスト教を考える | 遠藤はキリスト教を日本人にもわかり、受け入れやすく、親和性のあるものにしようと試みました。作品でも登場人物が「私のイエス」を探る信仰の旅が描かれます。文化に福音を実らせるためには、文化に意味のある物語、シンボル、表現を用いて福音を再解釈してゆく必要があります。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆小説作品は文庫で入手できますので、各自で読んでおいてください。
◆毎回の講座では講義資料を配布し、大切なテキスト個所を引いて示します。
◆『遠藤周作の文化的受肉』に関する著書の出版を現在準備中です。必要に応じて参考にして下さい。
講師紹介
- 古橋 昌尚
- 清泉大学教授
- 専門はキリスト教神学、文学、宗教です。これまで主に文化的受肉と遠藤周作の文学と神学について研究してきました。『遠藤周作の文化的受肉――文学の営みにおける神学の実践』(仮題)2025年出版予定。『今日のアジアの教会におけるインカルチュレーション』編著。論文:「遠藤周作の啓示神学」、「ロドリゴの「土の違い、水の違い」との出会い」、「遠藤周作『深い河』における美津子の人生の意義の探求」、「『死海のほとり』、救いの物語」、「インカルチュレーションの諸モデル」、「グローバル化時代の宗教」、「解釈の循環が断ち切られるとき―神学方法論の行方」、「アジア特別シノドスとインカルチュレーション」、他。