ジャンル 文学の心

早稲田校

名作への招待、近現代文学150年

  • 秋講座
  • オムニバス

中島 国彦(早稲田大学名誉教授)
宮内 淳子(立正大学講師)
山本 亮介(東洋大学教授)
藤井 淑禎(立教大学名誉教授)
石割 透(駒澤大学名誉教授)
庄司 達也(横浜市立大学教授)
小菅 健一(山梨英和大学教授)
篠崎 美生子(明治学院大学教授)
小堀 洋平(和洋女子大学准教授)

曜日 月曜日
時間 15:05~16:35
日程 全8回 ・09月22日 ~ 12月08日
(日程詳細)
09/22, 09/29, 10/06, 10/27, 11/10, 11/17, 12/01, 12/08
コード 130108
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 23,760
ビジター価格 受講料 ¥ 27,324

目標

・日本近代現代文学の名作・問題作に照明を当てていきます。
・よく知られた名作はもちろん、あまり注目されていない優れた作品を、積極的に紹介していきます。
・明治から現代まで、幅広く名作・問題作を扱っていきます。

講義概要

昨年の春学期からリニューアルしたこのオムニバス講座は、講師がぜひ皆さんに読んでいただきたい作品、新たにその面白さが発見された作品を、重点的に紹介していきます。宮内淳子(宇野千代)、小堀洋平(田山花袋)、山本亮介(太宰治)、藤井淑禎(水上勉)、石割透(芥川龍之介)、庄司達也(芥川龍之介)、小菅健一(宇野浩二)、中島国彦(萩原朔太郎)の8名が、明治の名作から戦後文学まで、さまざまな時代の個性豊かな作品を浮き彫りにしていきます。文庫本などで比較的簡単に入手できる作品を選んでみました。150年間の文学の世界の万華鏡を、お楽しみください。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 09/22 若き日の萩原朔太郎の作品から 萩原朔太郎は第一詩集『月に吠える』(大正6年)で、強烈なイメージの作品を発表し、デビューを果たしますが、そこに収められる作品の前に、抒情的な作品をいくつも書いています。「ふらんすに行きたしと思へども/ふらんすはあまりに遠し」(「旅上」)という有名な作品も、その一つです。若き日の朔太郎の姿を作品を通して探り、詩人の感性を探っていきたいと思います。文庫本で朔太郎の作品は比較的簡単に読むことができますので、親しんでいただけましたら幸いです。(中島国彦)
2 09/29 人生をふりかえるとき―宇野千代『雨の音』 明るく前向きに生きるイメージが強い宇野千代だが、それは『生きて行く私』(1983年)というベストセラーによって確立された。そのおよそ10年前、77歳のときに書かれた『雨の音』(1974年)は、内容的に重なる部分もありながら、事業の失敗、夫である北原武夫の浮気と離婚、その死といった出来事を、自省や悔恨を込めて綴っており、宇野千代の別の一面が見られる。その自在な筆は、新たに熱中した家作り、庭作りにも及ぶ。宇野千代の代表作のひとつであるこの小説を、自伝なども参照しながら読んでみたい。 (宮内淳子)
3 10/06 田山花袋『時は過ぎゆく』のなかの歴史・都市・日常生活 田山花袋の長編小説『時は過ぎゆく』(1916)を読み解きます。『時は過ぎゆく』は、明治初年から大正にかけての東京を舞台にした物語です。そのなかで、およそ半世紀にわたる期間の歴史的な出来事は、どのように語られているのでしょうか。また、主人公とその周囲の人々の日常生活の世界は、どのように描かれているのでしょうか。そして、これらの歴史的な出来事と日常生活の世界は、作品のなかでどのように結びつけられているのでしょうか。本講座では、ほぼ同じ時期を対象とする花袋の文学的回想記『東京の三十年』(1917)も参照しつつ、東京という都市空間との関係のなかで、これらの問題を考えます。なお、『時は過ぎゆく』は岩波文庫に入っています。(小堀洋平)
4 10/27 水上勉・心洗われるエッセイの世界 水上勉がエッセイの達人であることはよく知られている。ただ、その場合のエッセイとは主に作家としての前半生に書かれたもので、故郷との離別、京都の寺への修行、母を始めとする親族との別れ、下積み時代の苦難、女性たちとの愛と別れなど、恨みや悔いを内包したマイナス傾向のものがほとんどだった。しかし、ある時期から、水上勉のエッセイには読むと癒されるようなプラス思考のものが増えていく。『軽井沢日記』『若狭海辺だより』を始めとする後期のエッセイでは、自然のなかで地に足をつけて、見たり聞いたり他者と関わったりといったさまざまな体験が語られ、それが読者の心を洗い、和ませるような関係が生まれている。それだけでなく、水上勉はそこから、理想とする人間像や文学を超えるものへの手がかりをも手に入れることになる。そんな晩期水上文学の片鱗をご紹介できればと思っている。―参考『松本清張と水上勉』(ちくま選書、25年刊)
(両書は古書では高価ですが、多くの図書館は所蔵しています) (藤井淑禎)
5 11/10 宇野浩二『枯木のある風景』ー文学と絵画の結節点ー ことばによって紡ぎ出される言語芸術である小説。小説には他ジャンルの芸術を生み出す表現者を描いた様々な作品があります。今回の講座では、実在した画家たちを登場人物にした、宇野浩二の『枯木のある風景』(昭和8年1月)を比較芸術論的な視点から読み解いていきます。『枯木のある風景』というタイトルは、昭和5年に洋画家小出楢重によって最晩年に描かれた少し不思議な絵画の題名から取られました。小出は谷崎潤一郎の『蓼喰う虫』が新聞に連載された時の挿絵を担当したこともあり、文学とは縁のある画家です。絵画(美術)とことば(文学)の接点から、〈表現すること〉とは何かということを、時代状況も視野に入れながら考えてみます。(小菅健一)
比較的入手しやすいテキストとして『思い川 枯木のある風景 蔵の中』(講談社文芸文庫)がありますが、プリントを事前に配布します。(小菅健一)
6 11/17 太宰治「道化の華」を読む 太宰治が1935(昭10)年に発表した「道化の華」は、最初の創作集『晩年』に収められた初期作品のうち、その代表格となる小説と言えます。後年の『人間失格』(1948年)と同じ名前の「大庭葉蔵」を主人公としていることでも有名です。破滅型作家のイメージで見られがちな太宰治ですが、さまざまな実験を試みた現代小説の開拓者としても高く評価されるところです。心中事件をモチーフとして混乱に満ちた人物像を描く「道化の華」でも、多層的で複雑な形式を採り入れながら、「小説とは何か」といった根本的な問いが展開されています。作品の言葉と形式に正面から向き合い、小説家太宰が持つ別の一面を味わいたいと思います。(山本亮介)
*入手しやすいテキスト:新潮文庫『晩年』、岩波文庫『晩年』 (山本亮介)
7 12/01 芥川龍之介「芋粥」 芥川龍之介の文壇デビュー作である「芋粥」は、「羅生門」「鼻」と同じように「今昔物語集」の説話を典拠とし、また前半には、ゴーゴリの「外套」の翳が濃厚に落ちている名作ですが、この時間では、それらと比較しながら、〈食〉に焦点を当て、芥川の他の作品や同時代の作品を絡めて、話したく思います。(石割透)
8 12/08 110年目に読む芥川龍之介「羅生門」 芥川龍之介「羅生門」は、今年から数えてちょうど110年前の大正4(1915)年11月に、文科大学の雑誌『帝国文学』に発表されました。山梨県立文学館が所蔵する「羅生門」に関連するノートや草稿に綴られた本文と雑誌や書籍に発表された本文とを比較することや、2度にわたって改稿された末尾の一文に注目することで、読解の糸口を得ることが出来ると考えています。作中に綴られた「Sentimentalism」の1語の意味を探究することと合わせて、主人公の「下人」を、そして作品を読み解きます。(庄司達也)

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合の補講日は12月15日を予定しております。

講師紹介

中島 国彦
早稲田大学名誉教授
1946年東京都生まれ。早稲田大学大学院博士課程修了、博士(文学)。公益財団法人日本近代文学館理事長。日本近代文学専攻。著書『近代文学にみる感受性』(筑摩書房)、『夏目漱石の手紙』(共著、大修館書店)、『漱石の愛した絵はがき』(共編、岩波書店)、『漱石の地図帳―歩く・見る・読む』(大修館書店)、『森鷗外 学芸の散歩者』(岩波新書)等。

宮内 淳子
立正大学講師
東京生まれ。早稲田大学教育学部卒。博士(人文科学、お茶の水女子大学)。専門分野は日本近代文学。近代文学研究者。帝塚山学院大学教授、立正大学で非常勤講師を勤めた。著書に『谷崎潤一郎 異郷往還』(国書刊行会)、『岡本かの子論』『藤枝静男』(EDI)、共著に『上海の日本人社会とメディア』(岩波書店)など。
山本 亮介
東洋大学教授
1974年、神奈川県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。専門分野は、日本近現代文学。信州大学を経て現職に至る。著書に、『横光利一と小説の論理』(笠間書院)、『小説は環流する―漱石と鷗外、フィクションと音楽』(水声社)などがある。
藤井 淑禎
立教大学名誉教授
愛知県豊橋市生まれ。慶應義塾大学卒業。立教大学大学院博士課程満期退学。専門は日本近代文学・文化。著書に、『清張 闘う作家』(ミネルヴァ書房)、『名作がくれた勇気』(平凡社)などがある。
石割 透
駒澤大学名誉教授
1945年京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、同大学院文学研究科博士課程単位取得修了。専門分野は日本近代文学。『芥川龍之介全集』、『芥川龍之介資料集』共同編集の他、著書『芥川龍之介初期作品の展開』(有精堂)、編著書『芥川竜之介書簡集』『芥川竜之介随筆集』(岩波文庫)『ジャズ』(ゆまに書房)などがある。
庄司 達也
横浜市立大学教授
1961年東京生まれ。芥川龍之介の〈人〉と〈文学〉を主たる研究テーマとするが、出版メディアと作家、読者の関係などにも関心を強くしている。近年は、近代の作家たちが聴いた音楽を蓄音機とSPレコードで再現するレコード・コンサートなども企画している。編著書に『100年読み継がれる名作 芥川龍之介短編集』(監修、世界文化社)、『倉敷市蔵 薄田泣菫宛書簡集』全3巻(共編著、八木書店)、『芥川龍之介ハンドブック』(共編著、鼎書房)、『日本文学コレクション 芥川龍之介』(共編著、翰林書房)、ほか。
小菅 健一
山梨英和大学教授
文学修士(早稲田大学)。専門分野は、日本近現代文学および表現論。山梨英和大学において日本近現代文学、現代文化論、現代芸術論、日本語スキル(初年次教育)や公開講座の日本近現代文学の作品講読を担当。共著書に『日本文芸の系譜』『日本文芸の表現史』他、近著に『未来の学び 小学生のための生涯学習講座』。
篠崎 美生子
明治学院大学教授
日本近現代文学専攻。博士(文学、早稲田大学)。芥川龍之介の小説から研究を始め、その後、日本近代文学とナショナリズムの関係に関心を持つ。近年は、日本近代文学と中国との関わり、原爆と文学の関わりについて研究中。単著に『弱い「内面」の陥穽』(翰林書房)がある。
小堀 洋平
和洋女子大学准教授
1986年埼玉県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。日本近代文学専攻。和洋女子大学等で近代文学を教える。単著に『田山花袋 作品の形成』(翰林書房)、共著に『文豪たちの住宅事情』『文豪東京文学案内』(笠間書院)がある。
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