ジャンル 人間の探求
中野校
スピノザ/ライプニッツ問題―西洋近代哲学の系譜 「汎神論」、「必然主義」、「非人間主義」
鈴木 泉(東京大学教授)
曜日 | 土曜日 |
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時間 | 13:10~14:40 |
日程 |
全6回
・07月12日 ~
08月30日 (日程詳細) 07/12, 07/19, 07/26, 08/02, 08/23, 08/30 |
コード | 320503 |
定員 | 24名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 17,820 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 20,493 |
目標
・スピノザ・ライプニッツを中心に西洋近代哲学の問いを学ぶ。
・西洋近代哲学の大きな流れを身につける。
・「非人間主義」という考えの意義を理解する。
講義概要
オランダの哲学者スピノザ(1632-1677)は、西洋哲学において常に異物のような存在でした。死後暫くは「死せる犬」として遇され、18世紀の後半においてその思索の評価を巡って論争がドイツにおいて生じ、この論争(スピノザ論争=汎神論論争)はカントなども巻き込みながらドイツ観念論成立の一つの契機となるものの、非人間主義を核心とする思索の意義は、同時代のライプニッツの思索によって覆い隠されてきました。これを「スピノザ/ライプニッツ問題」と呼びましょう。本講義では、「スピノザ/ライプニッツ問題」の諸相を検討することを通して、スピノザ哲学の可能性を追求し、また、西洋近代哲学への導入を目指します。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 07/12 | 近代哲学の複数の見取り図 | 西洋近代哲学は、一般にデカルトに始まると説明されることが多いのですが、それは本当でしょうか。そして、それがある意味では本当だとして、その内実はどのようなものでしょう。さらに、それ以降の哲学は、カントを一つの峰としてドイツ観念論へと流れ込んでいくと説明されることもまた多いのですが、このような語り方にはどのような意味があるのでしょう。西洋近代哲学の大きな流れを複数の仕方で描きます。 |
2 | 07/19 | スピノザの異例性 | 第1回で見たような西洋近代哲学の大きな流れを背景にした場合に、スピノザの思索の意義はどのように位置づけることが出来るでしょう。スピノザの生涯とその思索の受容の歴史をごく簡単に辿った上で、スピノザの思索の意義を西洋近代哲学の中に位置づけ、その異例性がどこにあるのかということを論じます。 |
3 | 07/26 | スピノザ/ライプニッツ問題 | スピノザとライプニッツの思索は、双子のように似ていると言われることがあります。世界を一つの機械のようなものとして考えたデカルトとの対抗関係において二人の思索を捉えた場合、このような評価は間違ってはいないのですが、ライプニッツ自身が或る時期までスピノザの思索に近づきながらも、そこから大きく離反していったことを考え合わせると話しはそう単純ではありません。ライプニッツの思索によってスピノザの思索の意義が覆い隠されたきた経緯を「スピノザ/ライプニッツ問題」と呼び、その内実を考えます。 |
4 | 08/02 | スピノザの汎神論 | スピノザの思索は汎神論として紹介されることが多いのですが、その意義はどこにあるのでしょう。世界全体に神が宿っているということだとしたら、私たちにお馴染みの八百万の神という考え方と違いがなくなります。「内在性」や「存在の一義性」という哲学用語を導入しながら、この現実の世界しか存在しないと論じるスピノザの汎神論の意義を考えます。 |
5 | 08/23 | スピノザの必然主義 | ライプニッツがスピノザの思索から離反していった一番の問題は、スピノザの哲学においては、世界が盲目的な必然性によって支配されてしまい、そうすると、神の自由も人間の自由も失われてしまうということにありました。それでは、スピノザの必然主義の積極的な意義はどこにあるのでしょう。「スピノザ/ライプニッツ問題」の核心とも言うことの出来るこの問いを考えます。 |
6 | 08/30 | スピノザにおける神学政治論 | スピノザは、哲学の領域においては『エチカ』(=倫理学)という著作を残し、最終的には、人間の至福について考察します。他方、これとは別に『神学政治論』という大部な著作を匿名で公刊し、そこにおいては真理の探究を目的とする哲学とユダヤ教やキリスト教を始めとする宗教とを分離します。そして、この点もまたスピノザの思索を異例にして受け入れがたいものとしました。そこには何がかけられていたのでしょうか。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆休講が発生した場合の補講日は、9月6日(土)を予定しています。
◆参考図書:多岐に亘るので講義中に指示し、また必要に応じてコピーを配布します。
講師紹介
- 鈴木 泉
- 東京大学教授
- 1963年生まれ。東京大学大学院博士課程中退。東京大学大学院人文社会系研究科教授。デカルト・スピノザ・ライプニッツなどを中心とした西洋近世哲学とドゥルーズやミシェル・アンリといった現代フランス哲学を主たる研究のフィールドとする。現在、岩波書店から刊行中の『スピノザ全集』(全六巻と別巻)の編集委員を務める。代表的な論文に以下がある。「「形而上学」の死と再生——近代形而上学の成立とその遺産——」『岩波講座哲学 02 形而上学の現在』岩波書店、2008年、pp. 49-73;「「私たちは自らが永遠であることを感得し、経験する」——スピノザにおける内在性の哲学の論理と倫理の一断面——」『哲学を享受する』東洋大学哲学講座4、知泉書館、2006年、pp.181-206;「大地の動揺可能性と身体の基礎的構造――問いの素描」『哲學』日本哲学会編、2012年、pp. 25-44.