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鍵盤楽器の歴史から読み解くクラシック音楽の新たな魅力 J.S.バッハ生誕340周年バッハからショパンへ

  • 夏講座

山名 敏之(和歌山大学教授)

曜日 水曜日
時間 15:30~17:00
日程 全6回 ・07月16日 ~ 09月03日
(日程詳細)
07/16, 07/23, 07/30, 08/20, 08/27, 09/03
コード 720401
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 17,820
ビジター価格 受講料 ¥ 20,493

目標

・鍵盤楽器の歴史を知る。
・演奏法の歴史を知る。
・上記2点の関連性について理解する。

講義概要

鍵盤楽器の歴史と演奏法の歴史の関係について、講師の所蔵する楽器を用い、構造等と楽器の特性との関係を明らかにしつつ、楽曲の一部を楽譜と対照させ、実際に演奏しながら、楽器の特性に基づく演奏法について解説します。予め録画された映像等を使用することが多くなります。使用する楽器:A.ルッカース製チェンバロ(1640年)の複製楽器、J. ボーデヒテル製クラヴィコード(c.1790年)の複製楽器、A.ヴァルター製フォルテピアノ5oct.(1782年)の複製楽器、ローゼンベルガー製フォルテピアノ6oct.(c.1820年)、プレイエル製ピアノ80鍵(1841年)、ベヒシュタイン製ピアノ88鍵(1896年)

各回の講義予定

日程 講座内容
1 07/16 鍵盤楽器の歴史の交差点―3種の鍵盤楽器が併存していた18世紀後半 主要楽器がチェンバロおよびクラヴィコードからフォルテピアノへと変化していく18世紀後半の鍵盤楽器事情は大変複雑です。この歴史上の交差点に位置していた作曲家および演奏家たちがどのように演奏していたのかについて、ハイドンの作品をもとに解説します。また、本講義を把握するための鍵盤楽器の歴史全体も概観します。
2 07/23 音の静寂を聴く―クラヴィコードの深淵な世界 今日、私たちは電気によって増幅された音楽に囲まれています。スマートフォン、レストラン、スーパーマーケット、駅、学校とありとあらゆるところにその音楽は溢れています。ところが18世紀までの西洋には、蝋燭の炎のゆらぎを聴くかのようなとても繊細な音の鍵盤楽器が存在しました。それがクラヴィコードです。しかもこの楽器は私たちがよく知っている、J.S.バッハやモーツァルト、そしてハイドンといった作曲家に愛用され、彼らの管弦楽を用いた規模の大きな作品の作曲にも使用されたのです。コンスタンツェ・モーツァルトはヴォルフガング所持の製作者不詳の楽器に「魔笛」「レクイエム」「皇帝ティートの慈悲」「フリーメーソンのためのカンタータ」をこの楽器によって作曲したと楽器内に記しています。この逆説的事象について解説していきます。
3 07/30 チェンバロはピアノの前身ではない!―チェンバロの演奏法と現代のピアノの演奏法を徹底比較 チェンバロという楽器は、同じ鍵盤上で強弱の変化をつけられないとう特性があることはよく知られています。この特性を現代のピアノと比較して、本来は強弱のコントラストを利用して作曲・演奏をしたかったのにも関わらず、バロック期までの作曲家は原始的な鍵盤楽器による演奏に甘んじていたのだ、という認識が特に現代のピアニストにおいて顕著であると考えられます。本講義ではこういった偏見を払拭すべく、そもそも演奏法が異なること、これに伴って作曲法も異なっていたことに言及していきます。
4 08/20 5オクターヴ・フォルテピアノの多様性―モーツァルト時代のヴァルターとベートーヴェン時代のヴァルターの違いをめぐって モーツァルトの作品といえば、ブーシェの絵画のような甘美なロココの世界を思い浮かべる方も多いかと思います。一方でベートーヴェンの作品には深い思索、運命への抗いといった闘争的な側面を読み取る方が多いと思います。この2人はアントン・ヴァルター製のフォルテピアノを愛用していました。ところがこの同じ製作家によるフォルテピアノであるにもかかわらず、モーツァルト時代のヴァルターとベートーヴェン時代のヴァルターとではまるで性格が異なっていました。さらにいえば前者は質実剛健な音色を持ち、後者は非常に甘美にしてカンタービレな特性を持っていたと知れば、それは驚き以外の何ものでもないでしょう。構造・素材の相違を解説しつつ、演奏解釈の相違についても触れていきます。
5 08/27 6本のペダルを持つ6オクターヴ・フォルテピアノとシューベルト時代の連弾作品との蜜月 1820年代になるとウィーンのフォルテピアノの中に6本ものペダルを持つ楽器が盛んに製作されるようになります。これらの機能は4手連弾作品の隆盛と密接な関係にありました。つまり2本の足で6本のペダルを駆使するのは困難であるが、4本の足があれば6本のペダルを駆使することは可能です。ウィーンにおける4手連弾作品の出版の盛衰と6本のペダルを持つフォルテピアノの製作状況とが密接に関連していること、その状況においてシューベルトがソロ作品以上に4手連弾作品を作曲し、しかも名曲が沢山あることを紹介します。
6 09/03 ショパンのペダル指示と彼が愛用したプレイエル チェンバロやクラヴィコードにはなく、ピアノにおいて特徴的な装置といえば、ダンパーペダルが挙げられるでしょう。この装置が設置されることによって、ピアノの作品は交響楽的な音響を獲得し、超絶技巧を駆使するヴィルトゥオーゾピアニスト時代の幕開けとなったのでした。一方でこの19世紀中にペダル指示は実は明確に記されることは稀で、演奏者の好みに任されているという側面がありました。ところがショパンは非常に綿密にペダルの指示を書き込み、しかも踏むべきではないとする箇所を沢山明示していたのでした。この指示は現代の様々な出版譜にも反映されているにもかかわらず、この指示を守って演奏するピアニストはほとんどいません。ショパンのペダル指示の意味を1841年製プレイエルによって解き明かします。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合、補講日は9月10日(水)を予定しています。
◆Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。
◆お申込みの前に必ず
「オンラインでのご受講にあたって」
をご確認ください。
◆お申込みいただいた有料講座の動画は、当該講座実施の翌々日(休業日を除く)17:30 までに公開します。インターネット上で 1 週間のご視聴が可能です。視聴方法は、以下をご確認ください。
【会員・法人会員】授業動画の視聴方法(会員・法人会員向け)
【ビジター】授業動画の視聴方法(ビジター向け)

講師紹介

山名 敏之
和歌山大学教授
歴史的鍵盤楽器奏者。NHK「ぴあのピア」第11回―第14回にフォルテピアノで出演。 CD「ハイドンと18世紀を彩った鍵盤楽器たち」および「シューベルト:フォルテピアノによる4手連弾作品全集 第1巻 エキゾティシズムと対位法」は、レコード芸術(特選盤)、朝日新聞(推薦盤)等各紙で高く評価された。
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