ジャンル 日本の歴史と文化
オンデマンド
【オンデマンド】王墓の謎―なぜ人は王のために墓を築いたのか?
河野 一隆(東京国立博物館学芸研究部長)
コード | 910203 |
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定員 | 20名 |
単位数 | − |
会員価格 | 受講料 ¥ 5,940 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 5,940 |
目標
・比較文明論について理解を深め多様な歴史を学ぶ面白さに触れる。
・新たな視角から「見せる埋葬」を捉え、人類史の中に位置付ける。
・定説を疑うことを通して、現代にも通じる歴史の見方を身につける。
講義概要
王のために築かれた王墓は自らの権力を誇示するために築かれた象徴で、墓室を飾る装飾墓も文明周辺で見られるローカルな風習だと長らく考えられてきた。本講座では、これらの定説にとらわれずに、王墓・装飾墓などの「見せる埋葬」を新たな視点から問い直す。王とはどんな人物なのか?王墓とはいかなる要素で構成され、時代や地域を越えて登場するのはなぜか?巨大化した王墓が衰退するのはなぜか?人類史の中で王墓を築いた時代の意義とは何か?などのさまざまな謎を解明する。あわせて、現代の私たちにとっても重要な、多様な歴史観との向き合い方についても理解を深め、歴史を考えることの面白さを共有したい。
各回の講義予定
回 | 講座内容 | |
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1 | 王墓・装飾墓と向き合う | 王のために築かれた巨大な墓や墓室を華麗に飾り立てた墓は、時期や地域に限定されることなく歴史の中に登場し消滅する。本講座の初回は、王墓とは専制的な王が自らの権力を誇示するために築いたものである、という定説にメスを入れ、世界各地に築かれる王墓や装飾墓が人類史にとってどのような意味を持つのかを問い直す。まず、このような定説がなぜ生まれたのかを振り返り、王とは何か、王墓とは何かに触れながら、王墓の謎を提起する。これを解明する手掛かりとして、「神聖王権」と「威信財経済」という2つのキーワードを提示し、王墓や装飾墓を捉えるための新しい枠組みを提案する。 |
2 | 王墓の比較考古学 | 王墓はエジプトのピラミッドや日本の古墳だけではない。また、文明のある場所に必ず王墓が築かれた訳でもない。人類史に登場した王墓の主人公である王とは、戦争や災害など存続の危機に立つ社会の中で、さまざまな副葬品を携えて神に捧げるために選ばれた人物という理解に立つ。ところが、王墓が巨大化すると、王の性格もがらりと変わる。第2回目は、なぜ時代や地域を越えて王墓が築かれるのかから説き起こし、王の権力の拡大と反比例してなぜ王墓が衰退するのか、王墓と古代都市との関係などにも触れながら、王墓の出現から消滅までをたどる。最後に、王墓が現代の私たちにのこしたメッセージとは何だったのか?を明らかにする。 |
3 | 装飾墓の比較考古学 | 第3回目は、王墓と並ぶもう一つの見せる埋葬である装飾墓に焦点を当てる。日本の装飾古墳は、近畿地方中央部に少なく九州北・中部や南関東から南東北にかけての地域に集中し、「ローカルな古墳文化」と捉えられてきた。ところが、世界各地の装飾墓を振り返るとそのような見方が誤っていることに気付く。ここでは、旧石器時代にホモ・サピエンスが遺した洞窟壁画も視野に入れて、芸術を創造した頃の壁画のルールを見出し、彩色壁画を持つ最古の装飾墓が北西ヨーロッパで誕生したことを示す。続いて、人物表現に着目して彩色壁画を持つ装飾墓を4つの系統に整理し、人類遺産としての先史壁画の意義を確認する。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆視聴期間は一般申込開始(2025/3/4)から学期終了翌月末(2025/7/31)までになります。一般申込開始(2025/3/4)以降はお申し込みいただけましたら視聴可能になります。
◆この講座は
2024年度 秋期 「王墓の謎―なぜ人は王のために墓を築いたのか?」 (10/26〜12/07 土曜日、全3回)
で開講した講座のアーカイブ講座になります。
◆途中映像音声の乱れるところがありますがご了承ください。
◆オンデマンド講座のため講義内容に関する質疑は受付けいたしかねます。あらかじめご了承お願いいたします。
講師紹介
- 河野 一隆
- 東京国立博物館学芸研究部長
- 1966年福岡県柳川市出身、京都大学大学院文学研究科修士課程修了後、(財)京都府埋蔵文化財調査研究センター、九州国立博物館を経て現職。専門分野は日本考古学。主要著作に、『王墓の謎』講談社現代新書(2024年)、『王墓と装飾墓の比較考古学』同成社(2022年)、『装飾古墳の謎』文藝春秋新書(2023年)、「装飾古墳とはなにか?」『最新技術でよみがえる 九州装飾古墳のすべて』東京書籍(2015年、共著)などがある。