ジャンル 日本の歴史と文化

中野校

占領期のベースボール―GHQスポーツ政策を映像で読み解く

  • 春講座

谷川 建司(映画ジャーナリスト)

曜日 金曜日
時間 10:40~12:10
日程 全4回 ・05月09日 ~ 05月30日
(日程詳細)
05/09, 05/16, 05/23, 05/30
コード 310229
定員 24名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 11,880
ビジター価格 受講料 ¥ 13,662

目標

・現在のプロ野球界の基本的枠組みが形成された時期としての占領期の野球界の実情を知る。
・現在のメジャーリーグ・ベースボール人気の源泉としての占領期の状況への理解を深める。

講義概要

戦後占領期にアメリカが日本人との間のコミュニケーションを円滑に運ぶための重要なツールと位置付けていたものの一つにベースボールがあった。なぜなら、日本人は戦前期にベーブ・ルースらメジャーリーグ選抜チームを熱烈歓迎した野球愛好国だったことをGHQが重視していたからである。占領下の日本では、教育啓蒙目的のナトコ映画、ラジオ放送、野球雑誌の記事、子供向けの漫画など、あらゆるメディアを駆使してベースボールの復興と進展を後押しする政策が行われた。本講座では、四回にわたり占領期のGHQの野球政策と日本人の間でのその受容を様々な実例で紹介し、今日のメジャーリーグ人気の源泉期としての占領期の実情を紐解いていく。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 05/09 ベーブ・ルースの死とナトコ映画を通じての少年野球振興 占領期間中の1948年、戦前のメジャーリーグを代表するホームラン王、ベーブ・ルースが亡くなった。その追悼のメッセージは、全米におけるリトル・リーグの活動を紹介するナトコ映画『少年野球リーグ』の冒頭に示され、ほかの多くの少年少女・青年への野球振興を目的としたナトコ映画(CIE映画)の数々とともに日本全国で上映され、圧倒的な人気を誇った。常設の映画館のない山間漁村部などへも供給されたナトコ映画配給を通じてのベースボール振興の実態を当時の映像も交えて検証する。
2 05/16 サンフランシスコ・シールズ来日のインパクトと日米野球再開 敗戦からわずか100日後に実施された東西対抗戦を皮切りとしたプロ野球の再興、それに続くリーグ戦の再開、東京六大学野球、全国中等学校優勝野球大会、都市対抗野球大会など様々なレベルでの野球の再開へのアシストという、GHQの野球政策の総仕上げの意味を持っていたのが、1949年のサンフランシスコ・シールズの来日による日米野球の再開である。戦後初めて日の丸と星条旗とが並べて掲揚されたこの日米野球の持った意味とそのインパクトの大きさを、当時の映像を紐解きながら検証する。
3 05/23 ワールドシリーズの中継とプロ野球界への2リーグ制導入 占領下日本で、VOA(ボイス・オブ・アメリカ)による日本語放送で最も人気を博したコンテンツもまたベースボールであり、1951年ワールドシリーズ(ヤンキースVSジャイアンツ)、1952年ワールドシリーズ(ヤンキースVSドジャーズ)は特別放送枠で放送された。日本でもメジャーリーグに倣った2リーグ制の導入がGHQによって推進された結果、1950年から日本ワールドシリーズ戦(現在の日本シリーズ)が開催されるようになり、将来のテレビ放送への期待が膨らんだ状況を映像を交えて検証する。
4 05/30 ジャッキー・ロビンソンのイメージ強調と文化外交政策 占領期間中の1947年のシーズンからブルックリン・ドジャーズの一員となった黒人メジャーリーガー=ジャッキー・ロビンソンは、アメリカという国がかつては黒人差別があったもののそれを克服し、人種の差を越えてよりよき国へと進化し続けている国であるというイメージを体現する完璧な存在だった。それゆえ、彼の物語は様々なメディアを駆使して世界中の人々に宣伝されたが、日本でも放送、野球雑誌、そして少年向けの学年誌付録として漫画が利用された。その状況を映像を交えて検証する。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合の補講日は、6月6日(金)を予定しています。
◆ご著書『ベースボールと日本占領』(京都大学学術出版会)をお読みいただきますと、より理解が深まります。

講師紹介

谷川 建司
映画ジャーナリスト
1962年東京都生まれ。日本ヘラルド映画(株)勤務を経て、1992年にフリーランスの映画ジャーナリストとして独立。その後、一橋大学大学院社会学で博士号を取得。2003年より茨城大学人文学部助教授、2005年に早稲田大学政治経済学術院に移籍、2023年3月まで客員教授を務めた。
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