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生誕100周年―三島由紀夫に会いに行こう

  • 夏講座

佐藤 秀明(近畿大学名誉教授、三島由紀夫文学館館長)

曜日 月曜日
時間 13:00~14:30
日程 全6回 ・07月07日 ~ 08月25日
(日程詳細)
07/07, 07/14, 07/28, 08/04, 08/18, 08/25
コード 720140
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 17,820
ビジター価格 受講料 ¥ 20,493

目標

・三島由紀夫の人と文学の概略を説明できるようになる。
・文学作品の読みの勘どころをつかむコツを会得する。
・作者や登場人物の人間性を理解し、人間認識の仕方が柔軟になる。

講義概要

三島由紀夫は、「身を挺して」「悲劇的なもの」になりたいという根源的な欲動をもつ人でした。その欲動は、死に向かうものでした。多方面でカラフルなパフォーマンスを演じた三島由紀夫の根底には、この欲動があります。
しかし、三島にも生きたいと欲求はありましたし、野心もあったはずです。死の欲動と生きる欲求、そのせめぎ合いが小説や戯曲には出ています。この講義では、三島の代表作を取り上げて、さまざまに変奏された三島の欲動を読み解きます。そこに三島作品の勘どころがあると思うからです。
三島作品は、今でも読むに足る名作ぞろいです。未読の人にも面白く聞いていただけるように、話の内容と話し方に工夫を凝らすつもりです。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 07/07 誕生から敗戦後の出発まで 分からなくなっていた三島由紀夫(本名・平岡公威)の生誕地探索の話から始めて、そこで出会った若者から得た、生涯にわたる強い印象を捉えます。学習院時代の詩を書く少年から文学青年までの文学遍歴、敗戦後の文壇に打って出る若き三島由紀夫の苦闘を見ていきます。
2 07/14 マイノリティの苦悩 1949年の『仮面の告白』で、やっと三島由紀夫は評価されますが、この作品に書かれた性的マイノリティがそのまま受けとめられたのではなかったようです。その後、『愛の渇き』『青の時代』を書き、長編『禁色』に着手します。『禁色』も男性同性愛の世界を描いた作品です。しかし、同性愛についての理解が当時の読者には乏しく、これも別の解釈がなされました。『禁色』執筆の途中で、三島は世界一周旅行に出ます。この旅行の意味を考え、『仮面の告白』から『禁色』までの長編小説に、三島は何を託したのかを追究します。
3 07/28 若き大作家への道 1954年の『潮騒』は、これまでの三島由紀夫の作品内容とガラリと変わったものになりました。その意図を追ってみます。次の『沈める滝』は、ダムの建設現場を描きました。『潮騒』の漁業の島と山奥のダム現場は、三島にとっては未知の場所ですが、それが作品の空間を広げ、作者の小説制作のスケールを大きくしました。そして『金閣寺』です。金閣の「美」とは何かを追究します。
4 08/04 失敗作と至福の表現 小説家としての自信と力量を傾けた力作『鏡子の家』は、「失敗作」という散々な評価に落ち着きました。何が「失敗」だったのかを詳しく見ていきます。この後、三島は映画に出演したり、東京都知事選を題材にした『宴のあと』を書いたりします。『鏡子の家』の失敗を三島はどう乗り越えようとしたのかを検討します。その乗り越えの1つが短編「憂国」でした。「憂国」には、幼年期から自覚された三島の欲動がストレートに出ています。その欲動について追究します。
5 08/18 演劇の魅力と「演技」論 三島由紀夫は戯曲作者としても一流でした。三島演劇の根底にあるものを『鹿鳴館』「弱法師」(『近代能楽集』)『サド侯爵夫人』から探り出します。また、三島の「演技」についての考え方を検討し、それが三島の天皇観を形成していることを論証します。そしてこの時期に書かれた『美しい星』『絹と明察』『午後の曳航』の持つ意味も追究します。
6 08/25 40代の豊饒なる生と死 40歳になると、三島由紀夫は大作『豊饒の海』に取り組みます。それと並行して自衛隊に体験入隊し、楯の会を組織します。『豊饒の海』第一巻『春の雪』の華麗な恋愛劇の底にある苛烈な欲動、第二巻『奔馬』の純粋な青年の錯誤、第三巻『暁の寺』の主人公の交替と転調を詳しく見ていきます。さらにそこにうごめく三島の欲動を捉え、その実行への過程も検討します。いよいよ『豊饒の海』も最終巻(第四巻)の『天人五衰』に着手し、楯の会の最終行動の準備にも取りかかります。大きな謎を持つ『豊饒の海』の最後の場面についてその読み方を示し、市ヶ谷での最期に三島の欲動の行方を見ます。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆6/6(金)13:30より本講座の無料体験講座を実施します。
◆無料体験講座お申込みはこちらから。https://www1.ex-waseda.jp/online/ 「無料体験講座」をクリックし、「絞り込み」をクリックしてください。

◆休講が発生した場合の補講は9月1日(月)を予定しています。
◆Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。
◆お申込みの前に必ず
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をご確認ください。
◆お申込みいただいた有料講座の動画は、当該講座実施の翌々日(休業日を除く)17:30までに公開します。インターネット上で1週間のご視聴が可能です。視聴方法は、以下をご確認ください。
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講師紹介

佐藤 秀明
近畿大学名誉教授、三島由紀夫文学館館長
専攻は日本近代文学で、三島由紀夫研究が中心的業績。博士(文学・大阪大学)。現在は、山梨県山中湖村の三島由紀夫文学館長。同志社大学嘱託講師として大学院生の指導もしている。『三島由紀夫 悲劇への欲動』(岩波新書)のほか、共編著に『決定版三島由紀夫全集42巻』がある。

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