ジャンル 日本の歴史と文化

早稲田校

古代・中世の地震・火山災害 歴史学の新たな地平

  • 夏講座

榎原 雅治(東京大学名誉教授、公益財団法人地震予知総合研究振興会副首席主任研究員)

曜日 金曜日
時間 10:40~12:10
日程 全5回 ・07月25日 ~ 09月12日
(日程詳細)
07/25, 08/01, 08/29, 09/05, 09/12
コード 120203
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 14,850
ビジター価格 受講料 ¥ 17,077

目標

・過去に起きた地震・噴火の事実と、それが現在と無縁でないことを知る。
・過去の災害はさまざまな分野の学問の連携によって解明されてきたことを知る。
・災害研究は、歴史学の新たな方法論を提起していることを知る。

講義概要

地震・火山国の日本では、過去にどのような地震や噴火が起きたのかを知ることは、未来の災害への備えのために欠かせない。機器による全国的な地震観測が始まったのは1884(明治17)年のことであり、それ以前の地震については、歴史史料が主要な手がかりになる。古代・中世にはどのような大規模な地震・噴火が発生したのか、それは史料にどのように記されているのかを紹介したい。また近代以前の地震の解明のためには地震学のほかに、地質学や考古学との連携も不可欠である。地震史研究は文理融合研究の実践の場である。災害という重いテーマではあるが、研究方法の学問的な「おもしろさ」も伝えたい。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 07/25 歴史学と地震学の連携の歩み 歴史史料を地震予知研究に生かそうという試みは120年以上の蓄積をもっている。明治期の濃尾地震から始まる歴史地震学の歩みとともに、歴史学と地震学が連携して取り組んでいる地震研究の最前線を紹介する。
2 08/01 平安時代の巨大地震・火山噴火 2011年の東日本大震災のあと、9世紀にも東北地方太平洋側が貞観地震と呼ばれる巨大地震と津波に襲われたことが知られるようになった。同じ時代には、富士山と十和田で大規模な噴火が起きている。これらの災害について記した史料を読み込むとともに、歴史学、地震学、火山学、地質学、考古学、生物学の協業によって、貞観地震の実態が解明されてきた過程を紹介する。
3 08/29 古代・中世の南海トラフ巨大地震 南海トラフ地震は繰り返し起きていることが知られている。史料で確認できる最初は7世紀の白鳳地震である。以後、少なくとも7回発生している。それぞれが史料にどのように記述されているのか、地質学的にはどのように証明されているのかを紹介する。特に1498年の明応東海地震は浜名湖の形を変えるほどの威力をもった地震であるとされているが、この説の当否について検証する。
4 09/05 中世の関東地震と濃尾地震 大正型の関東地震も繰り返し発生する地震である。鎌倉時代と室町時代にも発生したと考えられているが、史料が乏しく、その実態はよくわかっていない。また1585年(天正13)には、濃尾から北陸にかけて大きな被害の出た地震が起きているが、この地震も不明なことが多い。史料には何が書き記されているのか、地震学や地質学では、現在どこまで明らかにされているのかについて解説する。
5 09/12 伏見城を崩壊させた大地震 1596年(文禄5)に畿内で起きた地震は伏見城を崩壊させた地震として知られるが、この地震の震源は大阪府北部・兵庫県南東部と推定され、1995年の兵庫県南部地震と似た内陸地震と考えられている。この地震の被害状況を史料で紹介する。また、この地震の3日前には豊後(大分県)でも大きな地震が起きているが、豊後地震の発生日をめぐっては90年にわたって混迷した論争が続いた。なぜこのようなことになったのか検証する。

講師紹介

榎原 雅治
東京大学名誉教授、公益財団法人地震予知総合研究振興会副首席主任研究員
東京大学史料編纂所で『大日本史料 第七編』『大日本古記録 薩戒記』『日本荘園絵図聚影』などの編纂を担当。専門は日本中世の地域社会史や交通史。中世・近世の地震史料についての調査も進めており、現在は公益財団法人地震予知総合研究振興会に所属している。
主な著書『日本中世地域社会の構造』(校倉書房、2000年)、『室町幕府と地方の社会』(岩波新書、2016年)、『中世の東海道をゆく』(吉川弘文館、2019年)、『地図で考える中世』(吉川弘文館、2021年)、『歴史のなかの地震・噴火-過去が示す未来-』(東京大学出版会、2021年、共著)
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