ジャンル 人間の探求
早稲田校
アフリカ哲学への誘い
河野 哲也(立教大学教授)

曜日 | 月曜日 |
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時間 | 10:40~12:10 |
日程 |
全10回
・04月07日 ~
06月16日 (日程詳細) 04/07, 04/14, 04/21, 04/28, 05/12, 05/19, 05/26, 06/02, 06/09, 06/16 |
コード | 110510 |
定員 | 30名 |
単位数 | 2 |
会員価格 | 受講料 ¥ 29,700 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 34,155 |
目標
・アフリカの哲学の歴史と現状を紹介します。
・アフリカ哲学の視点から、西洋哲学、日本の哲学を相対化する視点を養います。
・比較哲学の立場から世界哲学の可能性について考察します。
講義概要
これまで日本でほとんど紹介されてこなかったアフリカの哲学の歴史と現状、とくに、近代以降のアフリカの哲学を中心にご紹介します。アフリカは、近世以降、西洋の植民地化に苦しめられ、奴隷制や差別と闘うための哲学を形成してきました。アフリカ人たちは、自分たちの哲学が、抑圧者である西洋人も救うものでなければならないと考えて、西洋に代わる普遍化可能な思考を展開してきました。とくに興味深いのは、むしろ現代的な真理観や認識論、独特の時間概念、相互依存的人間性を表す「ウブントゥ」の概念、「和解」による関係修復を目指す倫理観です。豊かで新しいアフリカの哲学にご案内します。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 04/07 | ガイダンス:アフリカ哲学への誘い、アフリカ哲学史(1)古代アフリカの哲学 | ・ガイダンス、講義の趣旨など ・「アフリカ哲学に哲学は存在するか?」という問い ・哲学概念の問い直しと世界哲学へ ・ギリシャ文明の起源としてのアフリカ ・古代エジプトの存在論と宇宙論、人間論、認識論 ・グレコ=ローマン期の哲学者たち:クレメンス、オリゲネス、テルトゥリアヌス、プロティノス、アウグスチヌス、ヒュパティア、アフリカにおけるアラビア哲学 |
2 | 04/14 | アフリカ哲学史(2)前植民地期から反植民地主義闘争へ | ・ゼラ・ヤコブとワルダ・ヘイワット、エチオピアの哲学 ・アントン・ヴィルヘルム・アモ ・帝国主義時代の西アフリカの哲学:ブライデンとエチオピア主義、クランメル、ホートン、サルバ、ヘイフォード |
3 | 04/21 | アフリカ哲学史(3)西洋の植民地主義と人種主義の哲学 | ・最大の哲学的テーマとしての植民地主義 ・西洋によるアフリカの植民地化と奴隷貿易、アフリカ分割 ・啓蒙主義と人種:人種の科学 ・ロックとヒュームにおける人種主義 ・カントの人種主義 ・近代哲学の人種主義 |
4 | 04/28 | アフリカ哲学史(4)汎アフリカ会議からハーレム・ルネサンスへ | ・汎アフリカ会議 ・音楽によって表明される政治哲学 ・デュボイス:汎アフリカ主義と二重意識 ・ハーレム・ルネサンスの哲学的意義 ・黒人音楽の特徴(リズムと即興性)とその政治性 ・哲学としての音楽 |
5 | 05/12 | アフリカ哲学史(5)ネグリチュード運動から脱植民地の哲学へ | ・エメ・セゼール、サンゴール、ダマスとナルダル姉妹 ・ファノンとカブラルの闘争 ・ファノン:植民地化されたメンタリティと精神医学、暴力論、民族解放戦線との連携 ・カブラル:ポルトガル植民地の独立と本国への逆影響、カブラルの生涯、カブラルの批判哲学 |
6 | 05/19 | 現代のアフリカ哲学(1)エスノフィロソフィーとその批判 | ・タンペルによる「バントゥ哲学」 ・エスノフィロソフィーの発展 ・エスノフィロソフィー批判と擁護 ・アフリカ的な哲学とは何か |
7 | 05/26 | 現代のアフリカ哲学(2)アパルトヘイトの超克 | ・哲学的問題としての南アフリカ ・ガンディーとファノンからビコとマンデラへ ・マンデラにおける和解と武力 ・ファノン的実践者としてのビコ ・南アフリカにおける真実和解委員会 ・和解とウブントゥ |
8 | 06/02 | 現代のアフリカ哲学(3)現代の哲学者たち | ・クワメ・ルクンマとアフリカ合衆国の夢 ・アレクシス・カガメ ・ヘンリー・オデラ・オルカと賢慮の哲学 ・クワシ・ウィルドゥの分析哲学 ・マルシアン・トワの自由の哲学 |
9 | 06/09 | 現代のアフリカ哲学(4)政治哲学と現代倫理 | ・現代のアフリカ政治哲学:ムベンベ、ディアニュ、アウトローの哲学 ・ウブントゥとイナクティビズム:伝統の現代性 ・アフリカ的思考の応用倫理への応用:環境問題、生命倫理、体育的倫理 |
10 | 06/16 | 現代のアフリカ哲学(5)比較哲学以外に哲学はない | ・比較哲学としてのアフリカ哲学 ・アフリカの時間概念:ムビティの時間論とその批判 ・ヨルバ的認識論 ・アカン語の真理概念 ・アカン民族とヨルバ民族の心身論 ・比較哲学以外、哲学はない |
テキスト
テキスト
河野哲也『アフリカ哲学全史』(筑摩書房)(ISBN:978-4480076366)
講師紹介
- 河野 哲也
- 立教大学教授
- 博士(哲学、慶応義塾大学)。立教大学文学部・教授。日本学術会議委員哲学委員長。専門は、現代哲学と倫理学、アフリカの哲学。
代表著作:『じぶんで考え じぶんで話せる:こどもを育てる哲学レッスン・増補版』(河出書房新社)、『間合い:生態学的現象学の探究』(東京大学出版会)、『アフリカ哲学全史』(ちくま新書)など。