ジャンル 現代社会と科学
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わたしたちの世界の数理 社会物理学序論
全 卓樹(高知工科大学教授)

曜日 | 水曜日 |
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時間 | 19:00~20:30 |
日程 |
全8回
・04月09日 ~
06月04日 (日程詳細) 04/09, 04/16, 04/23, 05/07, 05/14, 05/21, 05/28, 06/04 |
コード | 710701 |
定員 | 30名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 23,760 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 27,324 |
目標
・社会科学に新しい形で数理的手法を導入する試みである「社会物理学」を学ぶ
・人間社会における権力、支配と従属の構造を数学で理解する
・人間社会における多数派の形成の数理を学ぶ
・部族集団や国家の成り立ちと興隆衰退についての数理を学ぶ
講義概要
社会科学に数理物理学的手法を導入しようという試みの新しい形である「社会物理学」を、数学的知識の前提が無くとも理解できるように解説したい。数理的な社会科学としては経済学が先輩格であるが、そこでは貨幣価値の交換過程に研究の重点が置かれ、権力、支配と従属、多数派の形成といった事項にあまり注意が払われることはない。社会物理学が目指すのは、そのような人間関係の基本的側面に「力学系理論」の光をあて、社会の構成を解明することである。「支配ピラミッド」「多数決の数理」「帝国力学」の三つの話題を取り上げる。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 04/09 | 支配ピラミッド1 | 人間社会において階級的権力構造が普遍的なのはなぜなのか、その答えを「力学系理論」に求める「支配ピラミッドの理論」を解説する。力学的安定性と進化的安定性について学び、3層の支配構造が最も安定であることを理解する。近現代の社会への応用をみる。 |
2 | 04/16 | 支配ピラミッド2 | 「支配ピラミッドの理論」の「パラメータ構造」を調べることによって、階層社会が時間的にどう発展するかを考える。エリート過剰生産と逆ピラミッド、そして社会騒乱について解説する。支配ピラミッドの構造理論と、エマニュエル・トッドによる現代西欧社会の批判的分析との関係を考える。 |
3 | 04/23 | 多数決の数理1 | 人間の集まりの意思決定は、民主的な多数決を通じて行うのが現代の通例であるが、多数決にどのような正義が宿っているのかを、数学的なモデルを作っての分析を通じて考える。単純多数決に変わって頻繁に採用される「間接投票型多数決」が、多数派のみでなく、少数派にも「統計的な」正義を与えることを解説する。 |
4 | 05/07 | 多数決の数理2 | 社会における多数意見は、公式の投票に至る前に、人々の間の「ミクロな合議の積み重ね」を通じて形成されることが多い。この過程をモデル化した「ガラム世論力学理論」を紹介する。民主主義の現場が往々にして「少数の確信を持ったエリート」対「一般民衆」になりがちなのは何故かを理解する。 |
5 | 05/14 | 多数決の数理3 | 多数意見の形成に関する「ガラム世論力学理論」の更なる解説を行う。漁夫の利の数理、既成利益集団の共謀による新規参入排除の力学、拮抗した議論の際の「物別れか決着か」の影響、逆張りと冷笑と世論の分極について調べる。 |
6 | 05/21 | 帝国力学1 | 社会集団の発展を記述する力学的理論として「高次非線形ロトカ=ヴォルテラ理論」、そしてピーター・ターチンの「帝国力学理論」について解説する。これらの理論が古代オリエントやローマ、そして中国の諸帝国の歴史の理解に与える示唆を考える。 |
7 | 05/28 | 帝国力学2 | 近代社会の数理的モデルを目指して作り上げられたゴールドストーンとターチンの「構造=人口動態理論」の解説を行う。理論の近現代のアメリカ史へ適用について詳しくみていき、「ポピュリズム」や「トランンプ現象」について考える。 |
8 | 06/04 | 数理社会学と社会物理学 | 統計的手法や因果推論といった数学を用いるこれまでの「数理社会学」に対して、「力学系理論」に依拠して社会の動力学を考える「社会物理学」がどのような位置を占めるのかを論じ、これから来るべき社会科学の新しい形について考える。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆休講が発生した場合の補講日は6月11日(水)を予定しております。
◆Zoomミーティングを使用したオンライン講座です。
◆お申込みの前に必ず
「オンラインでのご受講にあたって」をご確認ください。
◆お申込みいただいた有料講座の動画は、当該講座実施の翌々日(休業日を除く)17:30までに公開します。インターネット上で1週間のご視聴が可能です。視聴方法は、以下をご確認ください。
【会員・法人会員】授業動画の視聴方法(会員・法人会員向け)
【ビジター】授業動画の視聴方法(ビジター向け)
講師紹介
- 全 卓樹
- 高知工科大学教授
- 京都生まれの東京育ち、米国ワシントンが第三の故郷。東京大学理学部物理学科卒、東京大学理学系大学院物理学専攻博士課程修了、博士論文は原子核反応の微視的理論についての研究。専攻は量子力学、数理物理学、社会物理学。量子グラフ理論本舗/新奇量子ホロノミ理論本家。ジョージア大、メリランド大、法政大等を経て、現職。著書に『エキゾティックな量子』(東京大学出版会)、『銀河の片隅で科学夜話』、『渡り鳥たちが語る科学夜話』(共に朝日出版社)など。