ジャンル 芸術の世界

中野校

イギリス芸術の本性を探る―建築・絵画・デザインと時代精神

  • 春講座

近藤 存志(東洋大学教授)

曜日 木曜日
時間 10:40~12:10
日程 全5回 ・04月17日 ~ 05月29日
(日程詳細)
04/17, 04/24, 05/15, 05/22, 05/29
コード 310410
定員 24名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 14,850
ビジター価格 受講料 ¥ 17,077

講義概要

イギリスの高名な建築・美術史家ニコラウス・ペヴスナーは、「建築は変化を続ける時代の、変化を続ける精神の産物である」ということばを残しています。このことは、建築芸術の世界に限った話ではありません。絵画であれ、デザインであれ、時代精神(Zeitgeist)との結びつきにこそ、イギリス芸術の本性を見出すことができます。この講座では、中世ゴシックの装飾から18世紀の版画作品、貴族たちのカントリーハウス、イギリス国会議事堂、そして20世紀のブリティッシュ・デザインまで、「変化を続ける時代の、変化を続ける精神」が生み出してきた建築・絵画・デザインの実例を取り上げ、イギリス芸術の本性に迫ります。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 04/17 サゾル大聖堂の葉飾りと中世の神律社会 サゾル大聖堂(Southwell Minster)の内部に施された植物を象った精巧な装飾たち。それらを生み出した中世の石工たちの名前を知る術を、わたしたち持ち合わせていません。中世の職人たちは無名に徹しながら傑作を生み出しました。彼らには名声欲や承認欲求がなかったのです。そうした芸術創作を可能にした時代精神に注目します。
2 04/24 画家ウィリアム・ホガースの挑戦と新しい市民芸術の萌芽 画家ウィリアム・ホガースは、王侯貴族の庇護の下、命じられるままに作品を生み出す画家としての生きかたを嫌いました。自分の意思で画題を選んで描きたい。そう願ったホガースは、庶民の日常生活に画題を探し、新しい大衆向けの芸術創作活動を展開することになりました。イギリス芸術界に革命をもたらすことになったホガースの芸術活動の背後に作用した時代精神とはどのようなものだったのか考えます。
3 05/15 建築家ロバート・アダムの知識人としての自覚と啓蒙主義運動 スコットランド啓蒙主義の最盛期に芸術的創造行為は知的行為と強く結びつき、芸術家たちの間には「知識人としての自覚」が芽生えることになりました。イギリス18世紀最大の建築家ロバート・アダムとその弟のジェームズは、こうした自覚を強めた代表的な芸術家でした。スコットランド啓蒙主義の知識人たちと親交を深めた彼ら兄弟の建築作品と、アダム・スミス、デイヴィッド・ヒュームらの知識人を生み出した時代精神として啓蒙主義思想の結びつきに迫ります。
4 05/22 ウエストミンスター宮殿の再建と大英帝国の精神性の回復 1834年に焼失したイギリス国会議事堂ウエストミンスター宮殿。その再建案を募る設計競技では、ゴシック様式ないしはエリザベス朝様式を用いることが条件とされました。とりわけゴシック様式は、ヴィクトリア朝期のイギリスにおいて「国民的様式」として重視されました。中世のイギリス社会で営まれていた信仰深い生活と芸術創造の営みを想起させるゴシック建築の造形が、なぜ大英帝国イギリスにおいて一大流行することになったのか。19世紀イギリスの時代精神と建築芸術の分かち難い結びつきに注目します。
5 05/29 2つの世界大戦とブリティッシュ・デザインがめざした福祉社会の理想 社会改良活動家ウェッブ夫妻が、賃金、労働時間、教育、公衆衛生、そして住宅などについて国民に最低限の生活水準を保証する「ナショナル・ミニマム」の原則を提唱したのは、1897年のことでした。それからおよそ半世紀、1941年7月には、チャーチル率いる挙国一致戦時内閣によって戦後の社会保障制度を検討する特別委員会が設置され、「福祉国家」の実現に向けた取り組みがスタートしました。2つの世界大戦が続いた時代、ブリティッシュ・デザインは「ナショナル・ミニマム」の実践、そして福祉社会(幸福な社会)の実現のために重要な役割を果たすことになりました。デザインは市民生活の質向上のために、どのような役割を担ったのか、具体的なデザイン作品とデザイン理論の両面から考えます。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆3/7(金) 11:30より本講座の無料体験講座を早稲田校で実施します。
◆無料体験講座お申し込みはこちらから。
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/65500/

講師紹介

近藤 存志
東洋大学教授
日本学術会議連携会員。連合王国エディンバラ大学大学院建築史学・建築学専攻博士後期課程修了。PhD (Edin)。専門分野はイギリス芸術文化史・イギリス建築史・デザイン史。主な著作に『時代精神と建築―近・現代イギリスにおける様式思想の展開』(知泉書館、2007年)、Robert and James Adam, Architects of the Age of Enlightenment (London: Routledge, 2011, 2016)、『キリストの肖像―ラファエル前派と19世紀イギリスの画家たち』(教文館、2013年)、『光と影で見る近代建築』(KADOKAWA、2015年)、『ゴシック芸術に学ぶ現代の生きかた』(教文館、2021年)ほか。

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