ジャンル 文学の心
早稲田校
現代日本小説紀行―作家と風土 現代日本の「地方文学」の代表作を読む
酒井 信(明治大学准教授)

曜日 | 月曜日 |
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時間 | 15:05~16:35 |
日程 |
全10回
・04月07日 ~
06月16日 (日程詳細) 04/07, 04/14, 04/21, 04/28, 05/12, 05/19, 05/26, 06/02, 06/09, 06/16 |
コード | 110119 |
定員 | 30名 |
単位数 | 2 |
会員価格 | 受講料 ¥ 29,700 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 34,155 |
目標
・全国各地を舞台にした文学作品を通して現代日本の価値観と風土について理解を深める。
・日常生活の中で当たり前のものとして受容している社会慣習や価値観について、受講者と共に理解を深める。
講義概要
土地の固有性に着目した現代日本文学の中から、国内外で評価の高い作家の代表作を取り上げ、その作品が表象する価値観や社会慣習について、受講者との議論を通して考察する。近代国家として相対的に統一が遅かった日本は「地方」に豊かな文化を有し、観光的な価値だけではなく、文学的な価値にも恵まれている。教科書として使用する『現代文学風土記』(西日本新聞社、2022年)は、北海道から沖縄まで47都道府県を舞台にした180作の小説を取り上げ、批評した内容である。この授業では、この書籍から国内外の文学賞を獲得した作品や、映像化され人気を博した作品など9作品を取り上げ、受講者との議論を通して「現代文学の心」に迫る。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 04/07 | ガイダンス | 授業概要、授業の進め方についての説明。受講者の関心の聴取。 |
2 | 04/14 | 北海道(美深町)の現代日本文学 | 村上春樹『羊をめぐる冒険』(1982年、美深町)が表象する価値観や社会慣習について議論、考察する。無意識的な幻想と偽史が織りなす、村上春樹の長編デビュー作。野間文芸新人賞を受賞。 |
3 | 04/21 | 北海道(釧路)の現代日本文学 | 桜木紫乃『ラブレス』(2011年、釧路市)が表象する価値観や社会慣習について議論、考察する。開拓と北洋漁業の中心地の往時の活況。島清恋愛文学賞を受賞。 |
4 | 04/28 | 東北(宮城)の現代日本文学 | 伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』(2007年、仙台市)が表象する価値観や社会慣習について議論、考察する。ドローンを用いた首相暗殺事件を描いた先見性。山本周五郎賞を受賞。 |
5 | 05/12 | 東北(福島)の現代日本文学 | 柳美里『JR上野駅公園口』(2014年、南相馬市)が表象する価値観や社会慣習について議論、考察する。原発と天皇に関する戦後史を遠景に置き、出稼ぎ労働者の現実感を描く。全米図書賞(翻訳部門)を受賞。 |
6 | 05/19 | 北陸(富山)と関西(大阪)の現代日本文学 | 宮本輝『螢川・泥の河』(1978年、富山市・大阪市)が表象する価値観や社会慣習について議論、考察する。「日常の中で繰り返される生死」を描いた戦後文学の代表作の一つ。太宰治賞、芥川賞を受賞。 |
7 | 05/26 | 関西(和歌山)の現代日本文学 | 中上健次『枯木灘』(1977年、新宮市)が表象する価値観や社会慣習について議論、考察する。熊野の「路地」を舞台にした、同時代の世界文学に連なる「血縁文学」。毎日出版文化賞を受賞。 |
8 | 06/02 | 九州(長崎、佐賀、福岡)の現代日本文学 | 吉田修一『悪人』(2007年、長崎市・佐賀市・福岡市)が表象する価値観や社会慣習について議論、考察する。平成不況、就職氷河期を生きた非正規雇用の若者たちの現実感を読み解く。毎日出版文化賞、大佛次郎賞を受賞。 |
9 | 06/09 | 九州(宮崎)の現代日本文学 | 平野啓一郎『ある男』(2018年、西都市)が表象する価値観や社会慣習について議論、考察する。戸籍制度や死刑制度、「新しいアイデンティティ」のあり方をめぐる、現代日本を代表する社会派ミステリ。読売文学賞を受賞。 |
10 | 06/16 | 沖縄の現代日本文学 | 桐野夏生『メタボラ』(2007年、沖縄県)が表象する価値観や社会慣習について議論、考察する。現代日本に内在する「外国」を、格差を引き受けながら生きた若者たちの「戦争」とは何だったか。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆教科書として、酒井信著『現代文学風土記』(西日本新聞社、2022年)を使用します。
◆下記は参考図書としてお読みいただけると、より理解が深まります。(購入は必須ではありません)
『松本清張はよみがえる 国民作家の名作への旅』 (西日本新聞社、2024年)
テキスト
テキスト
『現代文学風土記』(西日本新聞社)(ISBN:978-4816710018)
講師紹介
- 酒井 信
- 明治大学准教授
- 長崎市生まれ。明治大学准教授。早稲田大学卒業後、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。博士(政策・メディア)。慶應義塾大学助教等を経て現職。専門は文芸批評・メディア文化論。著書に『松本清張はよみがえる』『現代文学風土記』『吉田修一論』など。新聞・雑誌への寄稿、BBCの番組や海外CMなど映像監修も多数。