ジャンル 文学の心

早稲田校

魯迅vs村上春樹

  • 春講座

藤井 省三(東京大学名誉教授、名古屋外国語大学教授)

曜日 土曜日
時間 15:05~16:35
日程 全5回 ・04月05日 ~ 05月24日
(日程詳細)
04/05, 04/12, 04/19, 05/17, 05/24
コード 110154
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 14,850
ビジター価格 受講料 ¥ 17,077

目標

・魯迅作品と村上作品を対照しながら読み込みましょう。
・魯迅と中国に対する村上春樹の深い思いを解読しましょう。
・中国における魯迅の神格化と村上批判を考えましょう。

講義概要

魯迅は第一作「狂人日記」(1918年)で語り手に食人の罪(妹の肉を食べた)を自覚させた後、贖罪(しょくざい)をテーマとする作品群を書きました。キリストを侮辱した罪により永遠に歩み続ける「さまよえるユダヤ人」伝説への共感を語ってもいます。贖罪のために書き続ける、という思想が魯迅文学の原点だったのです。
村上文学の原点は、エッセー『猫を棄てる』(2020年)で語られた歴史の記憶、すなわち彼の父の日中戦争従軍体験でした。村上が作家となり父の罪を贖(あがな)うに至る過程では、魯迅から大きな影響を受けています。本講座では魯迅文学と村上文学との系譜的関係を解読します。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 04/05 魯迅「故郷」と村上『風の歌を聴け』 両作を比較しながら中国・香港・台湾における村上受容および村上の魯迅の対するリスペクトについてもお話します。(テキスト第1章村上春樹と魯迅、第2章 男子学生の帰省と中年男の帰郷)
2 04/12 村上春樹の魯迅に対するリスペクトと中国コンプレックス 魯迅「藤野先生」と村上の最初の短篇小説「中国行きのスロウ・ボート」を比較しながら、村上の中国コンプレックスを考察します。(テキスト第3章裏切りと再会、遠い中国と懐かしの日本)
3 04/19 村上春樹の「満州国」 魯迅による日中戦争の予見と村上文学における「満洲国」の意味をめぐり、『羊をめぐる冒険』と長篇『ねじまき鳥クロニクル』を読み解きます。(テキスト第5章「トニー滝谷」と『ねじまき鳥クロニクル』)
4 05/17 中国における魯迅の神格化と村上批判  中国人の国民性を徹底的に批判した魯迅は、人民共和国においてなぜ神格化されたのでしょう?中国の“反村上派”研究者が批判するように、果たして村上は日中戦争をめぐる歴史認識が不足し、中国人に対する侮蔑意識を抱いているのでしょうか?その政治的背景を考察します。(テキスト第6章中国における村上批判)
5 05/24 魯迅と村上における戦争の記憶 魯迅の仙台医専における幻灯事件体験を考察し、村上短篇小説「レキシントンの幽霊」から『騎士団長殺し』『猫を棄てる』までをたどりながら、両者における戦争の記憶を解読します。(テキスト第7章村上文学の中の戦争の記憶)

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合の補講は5月31日(土),6月7日(土)を予定しています。

◆3/7(金) 10:00より本講座の無料体験講座を早稲田校で実施します。
◆無料体験講座お申し込みはこちらから。https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/65467/

テキスト

テキスト
藤井省三『『村上春樹と魯迅そして中国』(早稲田新書、2021年)』(早稲田大学出版部)(ISBN:978-4657210197)

講師紹介

藤井 省三
東京大学名誉教授、名古屋外国語大学教授
東京大学名誉教授、名古屋外国語大学教授、早稲田大学講師(2004―2022年度)、海外では南京大学海外人文資深教授等を務めた。専門分野は現代中国大陸・香港・台湾の文学と映画。著書に『村上春樹と魯迅そして中国』(早稲田新書)、『魯迅と日本文学』(東大出版会)、『魯迅と世界文学』、『21世紀の中国映画』(共に東方書店)、などがある。

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