ジャンル 人間の探求
中野校
ハイデガー『存在と時間』を読む
轟 孝夫(防衛大学校教授)

曜日 | 金曜日 |
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時間 | 15:05~16:35 |
日程 |
全5回
・07月04日 ~
08月01日 (日程詳細) 07/04, 07/11, 07/18, 07/25, 08/01 |
コード | 320502 |
定員 | 24名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 14,850 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 17,077 |
目標
・ハイデガーの主著『存在と時間』の成立ち、時代的背景などを知る。
・『存在と時間』の基本的内容を把握する。
・ハイデガーの「存在への問い」の意味を理解する。
講義概要
本講義はハイデガーの主著『存在と時間』の基本的内容を概観し、彼が同書で掲げた「存在への問い」の意義を明らかにすることを目標とします。彼は「存在への問い」において現代社会の根本問題を「存在忘却」のうちに見て取り、われわれの生をあらためて「存在」によって基礎づけ直すことを目指していました。実は『存在と時間』は未完の書物であり、「存在」が結局、何を意味するかについて同書では示されていません。本書が未完でありながらなぜ彼の「主著」に祭り上げられたのか、またなぜ同書は未完にとどまったのか、本講義ではこうした謎に取り組むことにより、ハイデガーの哲学的思索の固有性を明らかにしたいと思います。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 07/04 | 『存在と時間』の成立ちと時代背景 | 初回は『存在と時間』という著作がどのように成立したか、その時代的背景と具体的執筆のプロセスについて取り上げます。『存在と時間』執筆の背景には、著しく専門分化し人生に対する指針を与えない実証科学を乗り越える知が可能かどうかという当時の学問論的な論争がありました。ハイデガーが自分の思索を「著作」として表現することに何度も失敗した挙句、かろうじてつぎはぎのような形で刊行されたのが『存在と時間』です。講義では、このように難航した『存在と時間』の具体的な執筆過程についても見ていきたいと思います。 |
2 | 07/11 | 「存在」とは何を意味するのか | ハイデガーが自身の哲学において解明しようとしている「存在」とは、何を意味するのか、そしてこの「存在」が、西洋の伝統的哲学でそれまで問われてきた「存在」とどのように異なるのかについて説明します。『存在と時間』から後期の思索にまで通底する彼の思索の大枠についての見通しを得ることが、第2回の講義の目標です。 |
3 | 07/18 | 現存在の実存論的分析―「人間学」を超えて | 『存在と時間』では「存在」が直接、論じられると思いきや、そうではなく、既刊部分では「現存在」の存在の分析だけが行われています。「現存在」とはハイデガーが人間の存在を示すために導入した用語ですが、彼はなぜ「現存在」という用語を必要としたのでしょうか。そして『存在と時間』では、なぜ「現存在」の分析から出発しているのでしょうか。その理由を示したうえで、『存在と時間』における「現存在」の分析の具体的な内容を概観していきたいと思います。 |
4 | 07/25 | 現存在の本来性と非本来性 | ハイデガーが『存在と時間』で「本来性」と「非本来性」について語っていることについてはご存じの方も多いかと思います。「本来性」はしばしば「死と向き合い、生の一瞬一瞬を大切にするあり方だ」と説明され、「非本来性」は「世間に同調して自分を失ったあり方だ」と説明されます。こうした説明は間違いではないにせよ、この程度のことは別に『存在と時間』を読まなくても言えることだという気もします。こうしたありきたりの解釈は「本来性」と「非本来性」を個人のあり方としてしか捉えていませんが、そこでは実は他者との共同性のあり方が問題になっていること、この点を講義では明らかにしていきたいと思います。 |
5 | 08/01 | 『存在と時間』はなぜ未完に終わったのか | 『存在と時間』は未完の著作です。「存在への問い」を標榜しながら、実はそれに対する答えは『存在と時間』の既刊部分では示されていません。そのような不完全な書物をわれわれが彼の「主著」としてありがたがるのは、よく考えると不思議な気もします。しかしそのことには理由があります。その理由は、ハイデガーが『存在と時間』を失敗作だと見なす理由とも関係します。講義ではハイデガーが『存在と時間』のどのような点を問題と見なし、その完結を断念したのかを明らかにします。そのうえで、彼がそうした問題点をその後の思索においてどのように克服しようとしたのかについても見ていきたいと思います。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆本講座は、2024年度夏学期に中野校で実施した同名講座に、新たな知見を加えたものです。
◆休講が発生した場合の補講日は、8月22日(金)を予定しています。
◆参考図書:轟孝夫著『ハイデガーの哲学 『存在と時間』から後期の思索まで』
テキスト
テキスト
轟孝夫『ハイデガー『存在と時間』入門』(講談社現代新書)(ISBN:978-4062884372)
講師紹介
- 轟 孝夫
- 防衛大学校教授
- 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。専門はハイデガー哲学、現象学、近代日本哲学。著書に『存在と共同――ハイデガー哲学の構造と展開』(法政大学出版局)、『ハイデガーの超-政治――ナチズムとの対決/存在・技術・国家への問い』(明石書店)、『ハイデガー『存在と時間』入門』『ハイデガーの哲学――『存在と時間』から後期の思索まで』(講談社現代新書)などがある。