ジャンル 現代社会と科学

早稲田校

思考と執筆を支える技術 数式を使わずにモデル分析の本質を学び、書く技術を身につける

  • 夏講座

栗田 治(慶應義塾大学教授)

曜日 木曜日
時間 15:05~16:35
日程 全8回 ・07月03日 ~ 09月04日
(日程詳細)
07/03, 07/10, 07/17, 07/24, 07/31, 08/21, 08/28, 09/04
コード 120780
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 23,760
ビジター価格 受講料 ¥ 27,324

目標

・目的合理的思考を支える社会学的・工学的知識を身につける。
・モデル分析と、それを発展させる螺旋的展開を理解する。
・モデル思考の結果を正しく伝える作文技術の要諦を身につける。

講義概要

ビジネスや学問の場で、様々な問題に上手く対処するためには、①目的の正しい設定→②現実観察による重要な事柄(部品)の抽出→③モデル作成→④モデル操作による結論→⑤説明文の執筆、というプロセスを辿るのが有効です。本講座は、このプロセスを実行するために必要不可欠な概念を、社会学、経済性工学、オペレーションズ・リサーチ、一般意味論といった分野から横断的に厳選し、豊富な実例を織り交ぜて解説します。教材を工夫することによって、数式は用いずに正しく理解していただきます。文系・理系の垣根を跳び越えるモデル思考の世界を覗いてみてください。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 07/03 モデル思考とは何か/モデルの類型(1) 本講座で焦点を当てるのは「目的合理的な思考」です。それを支えるモデルとは何か、モデル思考とはどのようなものかを、実例とともに解説します。モデルの有り様を規定する重要な類型に「定量的モデルと定性的モデル」、「普遍性を追求するモデルと個性的な個体を把握するモデル」、「マクロモデルとミクロモデル」、「静的モデルと動的モデル」があります。まずは「定量的モデルと定性的モデル」を紹介し、実例を通して深い理解に至ることを目指します。
2 07/10 モデルの類型(2) 「定量的モデルと定性的モデル」双方に大切なことは、それが科学的であることです。そこで少し寄り道をして、科学的アプローチとは何かについて、哲学者カール・ポパーの考え方を紹介します。そして引き続き大切なモデルの類型である「普遍性を追求するモデルと個性的な個体を把握するモデル」ならびに「マクロモデルとミクロモデル」を解説します。ものごとを大きな枠組みで捉える/細部に目を配って本質に迫る、という2つの見方は思考を支えるための車の両輪なのです。
3 07/17 モデルの類型(3)/モデル分類の活用法 前回に続きモデルの有り様を規定する重要な類型として、「静的モデルと動的モデル」を実例とともに解説します。時間の流れを考慮するかどうかで異なるモデルがこしらえられるのです。ひき続き、モデル分類の活用法を学びましょう。紹介した対概念としての分類によって、私たちはモデルの有り様に関する地図を手にすることができます。この地図を片手に、自分が学んでいる学問の特性を理解したり、自分のモデル分析の位置づけを的確に行うことができるのです。この営みは、自らが進むべき方向を探るためにも機能します。ここではそうした理解に至るように、実例を用いて解説する予定です。
4 07/24 モデル思考のための学問「オペレーションズ・リサーチ」と計画数学 モデル思考を旨とする重要な学問であるオペレーションズ・リサーチを紹介します。これは第2次世界大戦を通じて英米で誕生した、現実問題への接近法です。元来は国防のための学問でありましたが、現在では科学技術に立脚した社会・経済をモデル分析によって支えるためのすこぶる重要な学問となっており、縁の下の力持ちとして私たちの都市生活や経済活動を支えています。ここではその興味深い誕生の歴史を紹介するとともに、それを支える計画数学とは何かを解説します。オペレーションズ・リサーチは主として数学モデルに立脚した学術分野ですが、その本質を数学を用いないで紹介する予定です(図表現や模型を用いた説明に努めます)。
5 07/31 モデル分析の螺旋的展開/モデル分析を支えるキー概念 オペレーションズ・リサーチの数理モデルに見られるようなモデル分析の営みの本質は、螺旋的展開を辿って記述力を上げ、モデルによる問題解決の質を高めてゆく点にあります。この方法論は問題解決を支えるだけでなく、科学そのものの発展を支えるものです。そして、この考え方は文系/理系の別を問わず有効なものです。これを理解しましょう。
さらに今回は、人間や組織に関係する目的合理的な意思決定を支えるために不可欠なキー概念を紹介します:①正味現在価値法、②埋没費用、③パレート最適、④伝統主義、⑤フェティシズム。①と②は経済性工学の、③はオペレーションズ・リサーチの、④と⑤は社会学の基礎的で重要なツールです。是非これらを理解し、活用して下さい。
6 08/21 文系と理系の垣根を越える営みとは/書く技術のインフラストラクチャー(1) モデル思考は人間を幸せにする(あるいは人間が幸せになる)ことを目指す営みだから、方法論として文系/理系のどちらかを選ぶ必要はありません。ここでは、文理の境界を跨ぐための努力の方向性について解説します。
引き続き、モデル思考を支えてくれる「書く技術」の解説に入ります。モデル分析の入り口では、考察対象となる現実を観察し、論理的な国語表現を与えることが不可欠です。また、その出口においては、モデルによって与えられた結果を正しく伝えるために、やはり国語表現が要件となります。すなわち説明文を上手く執筆せねばならないのです。説明文とは何か、その善きあり方を支えるものは何かを学びましょう。
7 08/28 書く技術のインフラストラクチャー(2) 前回に引き続き、説明文を支えるための要件を紹介します。そして良き説明文を書くためのコツ、といった内容をお伝えする予定です。少し寄り道をして、発想のための技術であるKJ法も紹介しておきましょう。これは、ブレインストーミングを通じて発想のための種を取り出し、自分がもっている知の地図をつくるための技術です。グループによるプロジェクトを進める上でも有効なツールなので、知っておいて損のないものです。
8 09/04 書く技術のインフラストラクチャー(3) 私たちは自らが操る言語のレベルを超えた思考を営むことなどできません。加えて、人にものごとを伝える際には、言語表現に相手がどのように反応するかを熟慮することが必要です。それを追求する学問は「一般意味論」と呼ばれます。この分野の重要な概念をお伝えしましょう。報告・推論・断定の区別、情報的内包と感化的内包、定義と操作的定義、といった内容です。これらへの理解を深めることによって、過たず、そして読者をミスリードしない説明文を書くことができます。続いて、読者のレベルに応じた説明文を書くための重要な概念として、顕教的説明と密教的説明に関して解説します。
最後に「モデル思考の営み」とそれを支える「説明文を書く技術」を振り返り、講座をしめくくることにいたします。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆上記の各回詳細については、多少前後する場合があります。
◆本講座は2024年度夏学期開講の「思考を支える技術―数式を使わずにモデル分析の本質を学ぶ」に沿って、内容を拡張させたものであり、基本的内容が重複しています。

テキスト

テキスト
栗田 治『思考の方法学』(講談社現代新書)(ISBN:978-4065335253)

講師紹介

栗田 治
慶應義塾大学教授
筑波大学社会工学類卒業、筑波大学大学院博士課程社会工学研究科修了、学術博士。専門は都市のオペレーションズ・リサーチ。都市と地域の数理モデル分析を専らとする一方、思考と執筆の技術を如何に伸ばし、如何に上手く伝えるかを模索し続けている。近著は『思考の方法学』(2023、講談社現代新書)。
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